何者
ぐちゃぐちゃの布団。
散らばる、錠剤が入っていた包装シート。
狭苦しい四畳半の中、僕は……
どうしようもなく渇いている。
あの感覚を、渇望している。
毒々しいピンクの光はもう暗い部屋を照らしてくれない。
それでも、僕はあのネオンサインを求めて這いずり回る。
ああ、これじゃあまるで……幸福中毒じゃないか。
錠剤がなくなって、動く気すら失せてしまった僕は、この無様な姿を誰にも晒すことなく怠惰を貪る。
◇
これじゃあ駄目だ。
そう思って、僕が向かったのは『幸福屋』。
……やっぱり駄目じゃないか。
いつもの行き止まりにやって来た僕は違和感を覚える。
ネオンの輝きが、ない。
不安になって店まで駆ける。
閉まったシャッター、張り紙。
『閉店のお知らせ』
続きを読みたくない。
そんな思いで、家に戻ろうとした時……窓口のカウンターに置いてある何かに気付く。
これは……手鏡?
気になって、手に取り……そして、鏡を覗き込む。
映り込んだ僕に、顔はなかった。
幸福中毒 文字を打つ軟体動物 @Nantaianimal5170
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