第24話 バンドリーダーの熱情
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
あの日と同じ、セーラー服にくるぶし丈のスカートで入室してきた
「おぅ。ここじゃ、
「
驚きを発した
立ち止まったのは、ぴあ
「あら、あなたは……」
「ま、また会えましたね~。いや~、気晴らしにドライブしてたら、この近くでオーディションがあったな~と思い出しまして……ちょっと
(おいおい……いくら何でも無理があんだろ!)
「一応聞くけどよ……オレのことは憶えてるよな?」
「おや、アナタは
「気色悪ッ! すんません、コイツ一旦借ります!」
「おい、テメェどういう了見だ!? オレは何も聞いてねーぞ!」
「アタシだってキサマが参加してるとは聞いてない! アタシはただ、お嬢がここにいると知って飛んで来ただけだ!」
(だとすると……コイツを望みどおりぴあ
「……分かった。オレが協力してやるから、お前はこのままオーディション受けろ」
「キサマ、何を
「た、企んでねーって! 拳で熱く語り合った仲じゃねーか!」
中では、
「もしかして、こないだ
「
「まぁ。二人はお友だちでらしたのね。息の合った演奏、期待しておりますわ」
「……! ま、任せてください!」
自前のスティックとフットペダルを手に、
「ほいじゃあ始めるでー」
ネル部長がノートPCから音源をスタートさせる。クリック音に合わせて、
唖然と立ちすくむぴあ
「おい、テメェ! ふざけ……」
「も、もしかして、ほ、本番、は、始まってます……か……?」
明らかに様子がおかしい。マスクから
(コイツ……好きな女の前で
「どうしたんじゃ?」
ネル部長がそばまでやって来るが、
だが、それで部長も悟ったとみえ、
「よいよ……」溜め息一つ。「
「はいぃっ!!」
鋭い叱咤の声に、
「おどれはワシの背中だけ見ちょりゃええんじゃ」
ネル部長はマイクを引っ掴むと、メンバーの真ん中へ堂々と陣取った。前後して、アイコンタクトを交わした
イントロ明け、
(……! これがコイツの本領か!)
それも束の間、ネル部長が歌い出したのを境に、スタジオの空気は一変した。
(部長の生歌……スゲぇ……!)
仮歌を吹き込んでくれたのと同じ人物とは思えなかった。何度も耳にしたはずのハスキーヴォイスが勇ましくも
聴き惚れているうちに、曲はいつしか間奏へ移ろうとしていた。ネル部長の招きに応じ、ぴあ
まるで、始めからそう打ち合わせていたかのように。
(……あぁ。オレたち、今マジでバンドやってんだ)
初めて一堂に会した五人での演奏。皆の鳴らす音が噛み合う、得難い快感が脳髄を刺激する。身体中が熱い。汗ばむ手を必死に律して、指板の上に踊らせた。
そうして、
*
「それで、ドラムの子はどうなったんだい?」
話の先を促すマキナ。格好は本人お気に入りのファンタジー魔女スタイルだ。家族連れも多い休日のフードコートにあっては、
「どうもこうもねーだろ。合格だよ」
昨日の出来事を脳裏に思い浮かべながら、
「それはよかった。バンド結成おめでとう」
「どういたしまして」
「いやぁ、
その言葉に嘘はないのだろう。マキナは笑みを絶やすことなく、フライドポテトを口に運んでいる。
「何であんたが喜んでんだよ。親戚のオバハンか」
「気分的にはそんなものさ。おそらく、のべ十年分ぐらいはキミのことを見守っているわけだからね」
また訳の分からないことを言い出した。面倒なので、
「そりゃご苦労さん。ま、ちゃんとバイトも続けるから心配すんな……」
「おっと、噂をすれば。早速バイトの時間だよ」
およそ半月ぶりの悪魔発見。
*
悪魔は繁華街にいた。女性ばかりを狙ってぶつかり行為を繰り返していた中年男だ。
「オラァ! 観念しろやァ!!」
そこに先客がいるとは思いもしなかった。
「――やれやれ、騒がしいことだ」
若い男の声だった。その人影は悠然と中年悪魔に近付き、胸元に指先を突きつける。
直後、悪魔は粉々になって爆散した。
(……! あいつ今、何をした……!?)
いかにも高級そうなスーツに靴、髪型もバッチリと決めたホスト風の男だった。
「フッ……この辺りの悪魔も狩り尽くしてしまったな」
(まさか……同業者か――!?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます