不可逆変化

瀬川裕

不可逆変化

放った矢が手元には戻らないということを 

系は熱を失い続けるということを 

平衡が本来の姿であるということを

山も海も最後には均されるということを

何もかも不滅ではあり得ないということを

両手の砂が今もこぼれているということを  

目を背けたって何も戻らないということを 

それでも

今でも

君の手に私の目を塞いでほしいと

私が思っていることを

知らないままでいたかったということ

 

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