第7話 新曲できたので、よかったら聞いてください。
今日は待ちに待ったライブの日。
会場は私の家の敷地内にある牧場。
観客はチュプリンと牛とペットの猫ちゃん達。
みんな私の歌を待ち遠しいのか、モーモーニャーニャーと鳴いていた。
はぁ、緊張するな。
この日のために私は三日三晩……は嘘だけど、昨日徹夜して書いたんだ。
リズムは脳内で何度も作っては消してを繰り返して、完璧な仕上がりになった。
作詞も誰もが感動するような言葉を
何度も練習したし、あとは本番に望むだけ。
私は何度も深呼吸してから、ステージ(木箱一個)の上に立った。
あぁ、牛や猫達がジト目で私を見ている!
「みんな! 今日は来てくれてありがとう!」
私は感謝の投げキッスをすると、チュプリンが嬉しさのあまり震えていた。
「今日のために作詞してきました! それでは聞いてください……『
私は足踏み鳴らしてリズムを取った。
頭の中に音楽が流れていく。
思わず踊りたくなるようなアップテンポな曲だ。
私は牛や猫達が立ち上がって踊りまくる妄想をしながら自分のタイミングで、オリジナル曲をアカペラで歌った。
「Trick time……Trick time……
Oh,Yeah……
Trick time……Trick time……
Come on……
Trick time……Trick time……
Here we go!
存在証明 何かの本命亡命
先に眠る宝の根源
それでも負けじと戦います
バットエンドならもったいない
遥か彼方のその先へ
一緒に頂きへと登りつめていこう
タンララ、タラタラ
Yeah! 真夏のランデブー
今夜もぶっ飛ぶ
右耳 左耳
君はどの聞き耳
すました顔して
ファイナルクッキング
根菜は根っこの食べ物
Oh、Oh、Oh……
この世のすべてに
Trick time Trick time
あやかし まやかし こざかしいな
Trick time Trick time
転がし 見逃し 悲しいかな
とろけるバター
みんなで買った
パンのケーキのパンケーキ
Uh、Uh、Uh、Uh、Uh!
Let's Go!
マカデミ Unナッツの本音
それでも判明
摩訶不思議の信念
遮る何かにドギマギしちゃいます
だけど、いつも拗ねちゃいます
森羅万象
ラタラタ、ラタラタ
Oh、鹿のおせんべい パリッと香ばしい
奈良 世なら 濡らすな涙
あの木の実を食べて
Go ヘブンチーズフォンデュはチーズ入り
Oh、Oh、Oh……
あの世の果てに
Sleep time Sleep time
Sleep time Sleep time
カマキリ山脈 山へ登った
くるぶしのクルミのクルクルミ……」
ここで私は会場をさらに盛り上げるために、オリジナルのダンスを披露した。
とにかく身体をクネクネさせた。
それを散々お披露目させた後、歌に戻った。
「散財!(サーセン!)
サーモン!(刺し身!)
寿司の身の中に馬鹿面の馬が消える
それは(それは)
まさか(まさか)
この世の始まり
この世のすべてに
Trick time Trick time
あやかし まやかし こざかしいな
Trick time Trick time
とろけるバター みんなで買った
パンのケーキのパンケーキ
Trick time……Trick time……
Yeah……
Trick time……Trick time……
heavy……
Trick time……Trick time……
ほぉおおおおおおおお!!!!
Trick time、Trick time……」
歌が終わると、辺りは静寂に包まれた。
小鳥のさえずりや遠くで村の人達の賑やかな声が聞こえてくる。
「……ありがとう」
私がカッコよくお礼の投げキッスをしたが、観客席にはチュプリンしかいなかった。
「……あれ? 他のみんなは?」
「牛はあなたのママに連れて行かれたわよ。猫達は飽きてどっかに行ったわ」
思わずズッコケそうになった。
えー、せっかく頑張って歌ったのにー!
観客が一匹だけなんて……あんまりじゃない。
あーあ、どうせだったらシャーナも呼べばよかったかな。
でも、誕生日にサプライズで披露したいから呼んだら意味ないか。
「はぁ……」
期待していた展開でない事にガッカリしていた――その時だった。
「なに今の歌。くそダッサーーーい!」
早くも私の新曲に誹謗中傷する輩が現れた。
もしかしてアンチか?
だったら、潰さないと!
私の本能がそう語りかけてきたので、球体を取り出して呪文を唱えた。
幸いチュプリンは目の前にいたので、すぐに吸い込まれて変身した。
「さぁっ! 私の歌を
私は大声で呼びかけた。
すると、「それって私のこと?」と黄緑色のポニーテールを揺らしながら向かってくる人がいた。
やたら丈の短いピンク色のスカートと黄色いブーツを履いた女の子だった。
そして、頬に『002』という文字が描かれていた。
この数字に見覚えがあった。
確か私が釣りをしている最中に、やたらめったらとナイフを投げつけて殺そうとしていたメイド服の女の子だ。
名前は忘れたけど。
「あなた、この村の人ではないわね。名前は?」
私が尋ねると、彼女は腕を組んで「別に? あなたに私の名前を名乗る権利はないわ」と睨んできた。
なんだこいつ、初対面に対して何て態度を取るんだ。
「じゃあ、私も名乗らなーーい!」
私も負けじと対抗して、会場の片付けを再開した。
ポニーテールの子は口をモゴモゴさせながら見ていたが、特に何もして来なかったので、続ける事にした。
「……よ」
すると、彼女の口からボソッと何か言っていた。
「なに? よく聞こえないんだけど?」
私は耳を傾けてもう一度言うようにお願いすると、ポニーテールの子は「お、オーツンよ」と頬を赤くしながら言った。
何だ。ちゃんと挨拶できるじゃない。
「オーツンね。私はモプミ。で、何の用?」
「別に……いや、
オーツンはそう言うと、ポケットから小さい石を取り出した。
それで私を倒すつもりなのかなと思っていたが、みるみるうちに大きくなり巨大なハンマーになった。
うわぁ、あたったら一環の終わりだ。
私の反応にオーツンは嬉しそうだった。
「アハハハハハハ!!! どう? 怖い?」
「うーん、怖いっちゃ怖いけど……そっちがその気なら私も抵抗するね」
私が身構えると、オーツンは態度が気に食わなかったのか、プイッとそっぽを向いてしまった。
「別に? 攻撃したいんなら、さっさとすれば?」
「じゃあ、遠慮なく。ポポポーー!!」
私はオーツンの足元だけバネを出した。
「きゃああああああ!!!」
オーツンは悲鳴を上げながらあっという間に空まで飛んだ。
「真に受けるなバカーーーーー!!!」
彼女はそう言い残し、空の彼方へ消えていった。
ふぅ、今日も今日とて終わったぞ。
すぐに変身を解除して片付けに取り掛かろうとした――その時。
「なに今の攻撃。ダサいわね」
私の戦いぶりを
早くもオーツン戻ってきたのかなと思って見てみたが、黒猫がこっちを見ているだけだった。
『……ん? あ、あいつは?!』
すると、私の脳内でチュピリンが驚いたような声を出すと、球体から飛び出していった。
「どうしたの? 知り合い?」
「こいつはピャメロン……私の幼馴染にしてライバルよ!」
キッと睨むチュプリンにピャメロンと呼ばれた黒猫は「は〜い! チュプちゃん。お久しぶりね!」とウインクした。
この見るからに大人びた猫に私は即座に「うちに来ないかい?」とペットのオファーをした。
↓次回予告
早いもので、もう魔王と王子様sideストーリーです。
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