第24話 窓の外に見えるスカイツリーの孤独

 都内で一番スカイツリーが見える結婚式場を選んだらしい。さぞご立派なホテルだ。食事はもちろん、ウエディングドレスやウエディングケーキも高級で贅沢なものになっている。空翔は、黒のウエディングやパーティー用のスーツを中にモーニングを着て参加していた。窓際でスカイツリーが見えると悲しくなるのはなぜだろう。同じ大学に通っていた夏楓の共通友人の篠山乃梨子しのやまのりこがエレガントなブルーのレースドレスをまとって、空翔がいる窓際で隣に近寄る。


「羽星くん。夏楓と付き合ってたんじゃなかったっけ」

「……それ禁句」

 

 空翔は静かにのポーズをとってすぐにポケットに手を入れて、外を見た。現実を見つめたくない。


「あ、ごめん」


 急に小声になる。乃梨子は、夏楓と空翔と同じテニスサークルで空翔と同い年でもあった。


「いろいろあったんだね。会わない間に2人は変わっちゃったんだね」

「……人生いろいろだね」

「おじいちゃん?」

「違うけど」

「ごめん。まぁ、世の中にたくさん女性はいるから。ほら、ここにも」

「何言ってんのさ。既婚者が。口説くじゃないよ」

「へへへ……新婚に言わすなって」

「そっちが言ったんだろ。んで? 順調なの?」

「ええ、ええ。順調ですよ。夏楓にも負けませんわ」

「そうですか。ごちそうさま」

 そう言い終えると会場では新婦様の入場が始まっていた。

 

 メインのプログラムを空翔は見ることができずに外の喫煙ルームでタバコを吸い続けていた。結婚式に呼ばれたのに心から祝うことができないなんて、ひどい友人だと自分に問いかけるかそうしたのか誰が悪いとかもう考えるのも面倒だ。披露宴の会食には参列するかと考えた。挙式を終えた後、ざわざわと参列者の移動が始まった。夏楓と孝俊の両親が通りかかる。脳裏には色んな事を考えているが、平静を装い、笑顔で建前と本音を使い分けた。ここではアウェイであるのは知っている。男性の友人はほとんどが孝俊の知り合いで僕との縁が無い人ばかりだ。急いでかき集めたメンバーなんだろうなと空翔は考える。


未だに孝俊は夏楓と僕の関係は知らない。空翔の気持ちはいつもそわそわしていた。

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