第8話 華~bouquet~
僕――
とある指輪によってすこしおかしくなってしまった
「あのねぇ……そんなすぐに進展あるわけないでしょ」
店員の
「いやだって、早く何とかしないともっと被害者が増えるでしょ!」
「それはそうなんだけどねぇ」
「華ちゃんの指輪ってどうなってるの?」
「えっ、あっ、と」
妙に詰まる森井さん。
「どうしたの?」
「い、いや、何も変わってないですよ」
「なんか変だよ」
「気にしないでください、最近ちょっと疲れてるだけなんで」
「いやいや、そんな感じじゃないわよ華ちゃん」
僕と魔狐で森井さんの心配をするけど
「よ。用事を思い出したのでいったん帰りますね!」
……なんだったんだ?めっちゃ焦ってたけど。
なんて僕が疑問に思っていると、
「ちょっと何やってんのよ!速く追いかけなさい!」
「え?なんで?」
僕が
「あの感じ、絶対指輪の状態進行してるわよ」
「でも……進行条件がわかんない以上捕まえたとしてもどうにもならなくない?」
「それもそうなんだけどねぇ、ミイラ取りがミイラになる様な結果は防がなきゃいけないでしょ?」
「それもそうだね……わかった、追いかけてみる」
そういってお店を出る僕。
「多分トリガーは……嫉妬かしら?少なくとも黒い恋の感情なんでしょうね」
そのつぶやきが僕に届くことはなかった。
「待ってよ!森井さん!」
「なんでそんなに急ぐんだ?!」
僕は森井さんに問いかける。
「だって……だって!」
「もう……気づいちゃったんですよ」
「この、この黒い感情に」
「黒い……感情?」
「まさか!」
最悪の結末になってしまったのかもしれない!
「ごめんなさい……先輩」
「もう抑えられない」
「貴方を」
「手に入れたい」
「え?」
僕は素っ頓狂な声を出してしまう。
それと同時に森井さんの肉体がどんどんと変化していく
『貴方にはもっとふさわしい人がいるのはわかってる』
『それでも……あなたがほしい!」
『私のもとに来てもらいますよ!』
完全に怪人となってしまった。
「そうか……なるほどな」
俺は臨戦態勢となり構える。
すると……
「素晴らしい!」
空から
「貴様ぁ!」
俺は思い切り叫ぶ。
「お前が……お前がこいつを!」
怒りのあふれるまま哀に怒鳴りつけるが
「変身していないあんたに何ができるの?」
「ぐっ」
哀にまさにその通りのことを言われて言葉が詰まる。
確かに俺は変身しないとただの一般人同然の力しかない。
「それでも!俺はあきらめない!」
【なぁ、力がほしくないか?】
「はぁ?」
急に声が聞こえてくる。
【
「はん!」
「俺たちをなめちゃいけないぞ」
「零!」
「やるぞ!」
≪おうよ!≫
「全てを斬り捨てる者!
≪融合承認!≫
「フェーズ1!」
ヒロイックな装甲に壱と刀があしらわれたフェイスパーツを装備する。
「
高速移動を開始する。
『そんな怠けた速度で!』
「んな?!追いつくのかよ!」
『貴方を手に入れるのに貴方より弱いわけないでしょ!』
「
氷を刀に乗せ振り、氷をあたりに撒き散らす。
『そんな氷でとまるような私じゃないの!』
≪星井、前に教えたあれをやるしかないんじゃないのか?≫
「まじ?」
≪大マジだ≫
「ふぅ……」
息を吐き呼吸を整え思い切り空気を吸い
「フェーズ!3!」
体の装甲が変わっていく。
フェーズ2よりも重装甲で、背中に大きなブースター、足には車輪がつきフェーズ1よりも高速で移動できるような装備もつく。
さらにフェイスパーツは参と刀が合わさったようなフェイスパーツとなる。
さらに全身がフェーズ0では白、フェーズ1では赤、フェーズ2では青に対しフェーズ3では黄色に染まる。
≪持っても5分が限界だ、一気に片をつけるぞ!≫
「任せろ!」
『なんなのよ!その姿は!』
「お前をぶっ潰すための姿だよ!」
「
フェーズ1とは比べ物にならない速度で華の周りを移動する。
『んな……あんた!何人いるのよ!』
高速で動くあまりまるで分身しているように見えるらしい。
「さぁな!」
「お前の速度では追いつけまい!」
『このぉ!』
ビームを大量に放ってくるが着弾点を見てからの回避が余裕でできるため、当たらない。
「お返しだ!」
「
肩に備わっているキャノンからフェーズ2の時よりも高威力のビームを放ち対抗で放ってきたビームごと華に当てる。
『ぐぅぅぅ!』
その衝撃に耐えられずに吹き飛ぶ華。
「悪いけど一旦引かせてもらうわ!」
哀が割って入ってくるが。
「どけ!クソ女!俺は俺のダチを助ける!」
「その邪魔をするならお前を殺す!」
「言うようになったじゃないの!」
「スター!撹乱お願い!」
『了解しました』
スターが攻撃を放ってくるが、
「遅いんだよぉ!」
ジャンプで回避し、その勢いでスターの眼前に迫る。
「ぶった斬れろ!」
『しまっ』
「ナイススター!」
その瞬間空間に穴が空き、華、スター、哀が消えてしまう。
「ちぃっ!」
「やばいな、星井」
零から人間になった玲が話しかけてくる。
「あぁ、まぁあれ以上深追いしてたら俺の体が持たなかったんだが」
「そしてさっき話しかけてきた野郎、姿をせめて現してくれ」
【すまなかったな】
すると空間が歪み、狩人のような男が姿を現す。
【俺はバルバトス、悪魔だ】
「ソロモン72柱の8位だっけか?」
玲が尋ねる。
【よく知ってるな】
「そんな大悪魔が何故俺に話しかけてくる」
【単純にお前らが気になったからだ】
【かつての恋人から世界を守るヒーロー、気にならないわけがないだろう?】
「契約時の代償はなんだ?」
【なしでいいさ】
【ただ、俺を楽しませてくれ】
「信じられないな」
【だろうな】
【また今度聞きにくるよ】
そうして去るバルバトス。
「だんだん面倒事が多くなってきたな、玲」
「それでもやるんだろ?星井」
「もちろん!」
そんな受け答えをした翌日、華と同じクラスの別の後輩から華が体調不良で休んでるということを聞いた。
「愛しの後輩ちゃんが休みで病んでるのか?」
「東!」
友人の
「そんなんじゃないけど……面倒なことが多くてさ」
「そりゃ確かに課題は多いし定期テストもあるけどさ」
「そんな気を落としちゃダメですよ?」
「藤野さん!」
もう一人の友人の
「なぁ、もし、もしだよ?」
「かつての友人が敵で、そいつを倒しつつ助けなきゃいけない、けど敵になった理由が自分の時、みんなならどうする?」
「うーん……俺ならそれがあってもそいつが大事な友人なら助けるし、これからも仲良くしようとするな」
「私も同意見です」
「ありがとう、助かったよ」
「どうしたんだ?照、そんなこと聞いてきて」
「いやぁ、昔のアニメ見てたらそんなシーンがあってさ」
「なるほど、確かに感情移入って大事ですもんね?」
「あと藤野さん、タメでいいって」
「だからなれないんで……慣れないの」
「まぁわからなくもないけど」
「僕もそうだったし」
「そうだな、照は中学の時普通に敬語ばっかりだったもんな」
「まぁね」
「それにしても、最近は体調不良者多いよなぁ」
「確かに、まだ季節の変わり目ってわけでもないのに多いわね」
「それも女子ばっかり」
藤野さんと東が僕の気にしていることのヒントを伝えてくれる。
「やっぱり女子ばっかりなのか?」
「やっぱりってどういうこと?星井」
藤野さんが聞いてくる。
「いや、これ共通点があるような気がしてな」
「休んでる後輩とその友達も女子なんだよ」
「これなんかやばいんじゃないのか?」
東に焦りが見える。
そういや東には妹がいたっけな。
「多分だが、指輪だな」
「え?」
「またあの二人の話だが二人ともある指輪をしてるんだよ」
「それが原因の可能性が高くてな」
「二人はそれをしてから様子がおかしくなったっていうことを聞いてる」
「じゃあその指輪を外させれば!」
「ダメだ、噂では片時も外さないらしい」
「だから、指輪を送りつけてるやつをぶっ潰す」
「……照?」
「っと、冗談だよ」
「冗談に聞こえなかったわ」
藤野さんが少し萎縮している。
やっぱ僕って怖いのかなぁ。
その日の放課後、俺は1人であの寿司屋に来ていた。
「失礼」
そういい店内に入ると
「また来たのかい?まだ営業前なんだけどなぁ」
「お前を潰す」
「急にどうしたんだ――」
相手が言い切る前に
「オラァ!」
ぶん殴る
「君は一体?」
店主が聞いてくる。
俺はもちろん
「全てを斬り捨てる者、断斬!」
≪融合承認!≫
「フェーズ1!」
「なるほど、君が哀の言っていた……」
『ならば私も応戦させてもらおう』
「さぁ……我が刀の鯖となれ!」
『なると思うなよ!』
そういうと同時にビームが放たれる。
「速化!」
高速で移動しそれを回避しつつ接近し
「
居合い斬りを当てる。
『ぐっ!』
『なかなかやるようだが、これはどうだ!』
俺を囲うようにビームが配置される。
「フェーズ2!」
重火力形態になり、
『吹き飛べ!』
無数に飛んできたビームを
『流石に効いたか?』
「残念でした」
耐え凌ぐ。
「
両肩のキャノンから極太のビームを放つ。
その勢いで怪人は壁をぶち抜き、道路へと吹き飛ばされる。
「どんなもんよ」
『まだだ、まだ終わらん!』
『私にだって……目標があるのだ!』
「そうだ、こいつで試すか」
≪あれをか?≫
「あぁ、今までの怪人たちには悪いがこれからの犠牲を減らすためだ!」
「ザビ・セブ・ジオ・ガガ・ギル!
「
緑色のエネルギーを纏わせ一刀両断にする。
『はっ!なんの効果……も?』
すると怪人の真ん中から店主が出てくる。
「よっしゃ!成功した!」
最初の7人には本当に申し訳ないが、華のことを見て昨日の戦闘の後、玲とどうにかして人間と怪人を分離できないかを考え、編み出したのがこの技だった。
これで怪人を倒す時のデメリットはない。
「これでお前を完全に倒せる!」
『この……クソ野郎が!』
「クソ野郎はあんただよ」
「
炎を纏わせた剣で思い切り切り捨てる!
『だが私が消えたとて、あの指輪の力はなくならんぞ!』
「それでもこれ以上増えないなら、俺たちの勝ちだ」
『地獄で待っててやる!』
そう言い爆散する怪人
「前に斬った人達もどうにかして助けたいな」
≪そうだな≫
「う、うーん」
店主の目が覚めたようだ
「あっやべっ壁直しとこ!」
肩のキャノンから修復光線を打ちなんとか直す。
「なぁ、あんたがあの怪人から助けてくれたのか?」
「そうだ」
「名前はなんていうんだい?」
店主に聞かれてフェイスパーツの下で笑いながら俺は
「全てを斬り捨てる者、断斬」
と怪人に対して言ったときと違い、優しめの口調で言う。
「そうか断斬さんっていうのか」
「ありがとう」
――感謝ってのは嬉しいもんだな。
「気をつけるんだぞ」
そう言ってその場を去る。
今度こそあいつを助けると誓って――――
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