僕の小説「生長と成長」

数え切れぬほどの種を蒔いた。


その多くは、芽を出すこともなく静かに消えた。


肥沃な大地を探し求めて、果てしなく遠い地平へと歩いた。



水を乞うた日もあった。


雨雲はどこか遠くで笑っていた。


涙の一滴も流れない。


からっ風が吹き抜けた。


ただその場に立ち尽くし、やがて音もなく立ち枯れた。



かろうじて残っていた葉っぱさえ、もう力無く舞い落ちた。


吹きすさぶ風に、枯葉はどこかへ飛ばされていく。



小さな夢や多くの努力、命の証は、やがて消え失せ、大きな影に溶け込んだ。


無数の種を抱えたままで、朽ち果てた木がここにはあった。



光だけは知っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る