35.エルフ卒業

「また、えらく難しい攻略法編み出したわね……」

「これ簡単だぞ?」


上位チャット:凄く当てにならない!

上位チャット:(一フレーム目押しよりは)簡単


「一回壁に引っ掛けることができたら、あとは壁と垂直に向いて前ジャンプするだけでいい」


上位チャット:え、嘘?

上位チャット:キリシたん、やってみて


「エルフ、代わってくれる?」

「ん」


 俺は操作に使っていたキーボードをキリシたん側に寄せる。


「……確かに、簡単にできるわね」


上位チャット:人   間   卒   業

上位チャット:エ  ル  フ  入  学

上位チャット:学校なのか


「あと、最初にジャンプで壁に引っ掛けるときは、この出っ張りを狙う」

「小さい……けど、確かに何かあるわね」

「俺だって、何の根拠もなく壁登りできるとは思わないぞ」


上位チャット:そういえば、エルフさんってガンフィールドで壊れた壁見つけて乗り越えてたね

上位チャット:だからって、こんなことすぐ思いつく?

上位チャット:それはエルフさんだし

上位チャット:すべての疑問を灰燼かいじんす回答やめて


「多分、メーカーも意図して作ってるぞ」

「根拠は?」

「このゲーム、クリアタイムが記録されるだろ。このやり方は、クリアできるけどタイムが遅い」


上位チャット:あれ? マジでそれっぽい根拠

上位チャット:どうなんだ、これ?


「……《ネクストファイア》って、クリアタイムで分岐するマルチエンド形式なのよね。本当にエルフの推測で合ってるかも」


上位チャット:はえー

上位チャット:周知されなかった救済措置かー

上位チャット:そんなことあるんだな

上位チャット:知名度が低い、インディーズならではって感じ


「で、次は何やるんだ?」


上位チャット:眩しい笑顔

上位チャット:本当に楽しそう

上位チャット:ちょっと罪悪感ある


「罪悪感?」

「さあ! 子羊とエルフの視聴者たち! せっかくだし、一本面白そうなゲームを選んで頂戴! 今から購入してそれをプレイするわよ!」


上位チャット:あ、はい

上位チャット:ぼく、『闇ヨリイヅルモノ』がいいと思います

上位チャット:賛同します

上位チャット:賛成します

上位チャット:右に同じします


「罪悪感……?」

「はいはいはい! ゲーム決まったんだから、早速やっていくわよ! ほら、エルフ、ぐずぐずしない!」

「ん、おう」


上位チャット:大分草生えますよ

上位チャット:しーっ!

上位チャット:おくちチャックしなさい!


 キリシたんは、くだんのゲームをダウンロードサイトで手早く購入。ゲームの概要も読まなかった。

 そして、ダウンロード開始。ふむ。終了までしばらく掛かりそうだ。


「兵士が動いたりしないんだな」


上位チャット:兵士?

上位チャット:何の話?

上位チャット:あ、わかった。ガンフィールドの話だ

上位チャット:あー……そういえば、ロード画面でエルフさんめっちゃ喜んでたなぁ

上位チャット:え、何? そんなのあったの?

上位チャット:ちゃんとアーカイブ、履修してこい

上位チャット:単位が足りないとエルフ卒業できないぞ

上位チャット:エルフまで卒業したら何になるんですか……?


「操作説明なら出てるわよ」

「本当だ。ゲームが始まるまでに覚えるか」


上位チャット:エルフさんだとひとにらみで覚えても驚かない

上位チャット:ははは、やったら面白いな


「覚えた」

「早くない!?」


上位チャット:本当にやるやつがあるかバカ!

上位チャット:草

上位チャット:バカにはできないですぅー

上位チャット:子供かw

上位チャット:エルフですぅー

上位チャット:エルフさん、前からそんなに記憶力いいの?


「んー? ……おー、言われてみれば、記憶力よくなってるかも」


上位チャット:遅っ!

上位チャット:遅すぎ!

上位チャット:もう少し違和感持って!


「お前らだって、『電話帳一ページ暗記するのに何秒掛かるか』なんて滅多に確かめないだろ?」


上位チャット:まあ、それは……滅多に?

上位チャット:なんか、たとえがおかしくない?

上位チャット:やったことある感じが

上位チャット:あと、単位が秒なんですが……


「この頭、何入ってんのかしら?」

「うぁ、揺するな」

「髪の分け目からネジが見つかって、『実は俺、アンドロイドでした』って白状されたら、嫌ね」


上位チャット:TSエルフ姫アンドロイド

上位チャット:属性が渋滞してる

上位チャット:むしろ、玉突き事故だよ、これ

上位チャット:エルフを卒業するとアンドロイドになるのか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る