第22話 クラスメイトの桜田さんは悩んでいるみたい
放課後に、
このまま帰るわけではなく、亜佑奈からの要望もあり、これから街中に行く事になっていた。
本来は莉子と遊ぶ約束をしていたのだが、昨日と同様に急遽予定が変更してしまったのだ。
これから亜佑奈と向かう先は、昨日と同じファミレスである。
街中に到着し、入店するなり、女性の店員に案内されて席へ向かう。
二人は向き合うように座ったまま、テーブル上に広げられたメニュー表を見ながら、注文する品を選んでいた。
「今日は何にする?」
「んー、今回はハンバーグでもいいかもな」
どの商品も美味しそうに見え、すぐにこれという判断は下せず、ただ写真を眺めて小さく唸り声を出していたのだ。
特にチーズ乗せ、ハンバーグに魅力を感じていた。
今日は少々お腹が減っていて、それに両親の帰りも遅くなる事もあり、ここで夕食として食べて行こうと考えていた。
「じゃあ……私は、これにしようかな」
亜佑奈もメニュー表を見て、商品の写真のところを指さしていた。
彼女の方は大方決まっているらしい。
「そう言えば、話したい事って何だったの?」
さっき通学路を歩いている際、後で相談に乗ってほしいという話をしていた。
それが気になり、啓介は思い出したかのように問う。
「それね。それは……」
亜佑奈は言いづらそうな表情を見せていた。
「昨日さ。私、バイトの事について話してたじゃない?」
「そうだね」
「その件なんだけど、バイトを辞めないといけなくなったの」
「え、どうして? 急すぎないか?」
「うん……なんかね、店長が年齢的にも、売り上げ的にも難しそうだからって」
「そういうことか。じゃあ、次のところを探す必要性があるよね。でも、バイトは禁止だけど」
「うん……そうなんだよね……」
亜佑奈は疚しい行為をしているからこそ、大きな声では発言できていなかった。
校則でバイトが禁止になっている。
バレてしまったら、後々面倒になるのだ。
むしろ、これを機にキッパリと辞めるという手段もある。
亜佑奈がどのように考えているかも気になり、様子を伺うように、啓介は正面のソファ席に座っている彼女の顔へ視線を向けたままだった。
「私ね、バイトをしないといけないから……」
彼女はため息交じりに言う。
「私の家はそんなに裕福じゃないし、バイトでもしないとやっていけなくて。それで、バイトをしていたの」
「それは大変だね」
「だからね、バイトを辞めることになったら後々困るの」
確かに、そういう事情があるなら、校則を破ってバイトをするしかないと思う。
これに関しては困った問題であり、生真面目な人が多い生徒会役員に相談してもどうにもならないような気もする。
この前、学校の校門前で行われていた身だしなみ検査の時の事を振り返りながら、啓介は難しい顔をしていた。
「でも、どうしたらいいのか。それについて悩んでて。難波君の方で知ってるバイト先ってない?」
「それはないかな。でも、バイトしないと色々と大変なんだよね?」
「そうなの、だからね、本当にどうしようかなって」
本気で悩んでいる。
困っている人を見捨てようとも思えなかったが、流石に今の自分では非力すぎて、手を差し伸べてあげられる状況ではなかった。
「他の人には相談したの?」
「してないよ」
「クラスにも普段からいる人とか?」
「それは……まあ、友達ではあるんだけど。あまり」
「え?」
「だからね、友達なんだけど。本当の事を言えなくて。口が軽かったりして。去年とかも色々あって……」
普段は明るい生活を送っている亜佑奈にも悩みはある。
それは陽キャとか、陰キャとか関係なく、それなりの悩みを抱えながら生活しているらしい。
こんな時、知り合いにバイトしている人がいたら……。
「……難しいかも」
「だよね、難しいよね……でも、どうしたらいいんだろ」
「今バイトしている店長にもう一回相談出来たりとかは?」
「それは出来ないって。だから昨日、結構な時間会話してたの」
だから、昨日時間がかかっていたのだと啓介は察した。
二人は向き合うように悩んでいると、新しく店内に入ってきたお客がいる事に気づいたのだ。
店員により、二人がいる場所とは少し遠くの場所に案内されている人らがいる。
よくよく見てみると、それは
しかも、一緒に入店したのは、スーツを着た年上の男性だったのだ。
え……?
亜佑奈との会話もあったのだが、莉子が知らない男性と入店した事にも正直驚きを隠せなかったのだ。
ビッチだと噂されている清楚系美少女が、俺と二人っきりの時だけキスを求めてくる 譲羽唯月 @UitukiSiranui
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