第20話 莉子の本心は?
「私の悩みは――」
膝の上に弁当箱を乗せている
「私ね……そこまではないかな」
「……え、ないの?」
莉子から帰って来たセリフに、なんでといった顔を、
もう少し何かあると思っていたが、彼女はそこまで大した悩みがない様子。
「でも、嫌な事を言われたりしてないの?」
同じベンチに座っている啓介は、右隣にいる彼女へ問う。
「それは、まあ、あるけどね。色々な人と付き合ってそうとか。エロそうとか」
「そういうの言われて嫌じゃないの? 月見里さんは」
「んー、私はあまり気にしてないよ。それに、そういう噂で実害とかもないから。多分、誰も信じてないでしょ」
「そ、そうかもしれないけど。でも……」
莉子は成績優秀で、そういう優等生的な一面もあるため、変な噂などに動じている感じではなかった。
ただ、啓介からしたら、少し納得がいかなかった。
付き合っている相手が、嫌な思いをしているのなら助けになってあげたいと思っていたからだ。
「難波君は、そういうの気にしてくれるんだね」
莉子が、優しい口調で話してくる。
彼女は気にしてないものの、啓介の心の中ではモヤモヤとした感情が渦巻いていたのだ。
「でも、そういうの気にしてくれてありがとね」
莉子から優しい笑みを見せられ、啓介は少しだけ照れてしまう。
そこまで大した事はしていないものの、彼女から直接お礼を言われ、心が安らいでいた。
本当にそれでいいのか……。
莉子本人がそれでいいと言っているのなら、それでもいいのかもしれない。
啓介は心で悩みながら、首を傾げていたのだ。
「私ね、胸が大きいから、そういう噂を言われてるのだと思うの」
莉子が再び話し始めた。
啓介は隣にいる彼女へと視線を向ける。
彼女の胸ばかりに視線がいってしまう。
確かに胸がデカく、エロそうに見えるのは間違いない。
ビッチみたいだとか、多くの異性から告白されて二股してそうとか、そう言われても仕方のないスタイルをしているのだ。
「でも、しょうがないじゃない? 身体的なのは変えられないし」
「……一応聞いておくけど、いつからそういう体系になったの?」
「それはね、中学の一年の時からかな? それぐらいから下着選びには慎重になってたし」
莉子の話を聞いていると、啓介の視線は再び彼女の胸元まで向かって行く。
制服の中に隠れているブラジャーの大きさなどを妄想してしまい、食事中なのに脳内が卑猥な事で汚染され始める。
しかも、制服が薄っすらと透けて見えて、ブラジャーの色がピンク色だという事が分かったのだ。
「そ、そうなんだね。でも、まあ、嫌な思いをしてないのならき、まあ、いいと思うよ。でも、本当に悩んでるなら俺も協力するから」
啓介はエロい妄想をかき消すように、慌てながらも、この話を強制的に終わらせる。
二人は静かな校舎の裏庭で昼食を取り始めるのだった。
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