第12話 置手紙

 孔雀くじゃく宮に四夫人が集結し、顔合わせが行われた翌日のことだった。



 その日の朝、なかなか起きてこないあるじを起こしに侍女頭の鈴凛リンリンが寝室に入ると、主の姿はなく、枕元に手紙が置かれていたのだった。


 慌てて教育係の宦官、飛龍フェイロンに知らせる。


 飛龍は手紙を受け取ると、迷わず開き、内容を確認した。




『龍望皇帝からいただいた大切な義眼を、誤ってさせてしまいました。わたしはもう、陛下に合わせる顔がございません。どうか後宮を去る身勝手をお許しください』




「どうしましょう? 飛龍様」


「どうやら昨晩さらわれたようだ」


「どうして一読しただけでそんなことまでわかるのですか?」 


「ああ。字が合っておる!」


「はい?」


「灯翠はなんど教えても、紛失ふんしつの紛をこめへんで書いてしまう癖があるのだ。それに陛下のことを、陛下と呼ぶこともない。おそらく言葉の意味も知らぬのだろう」



「陛下の観察眼にも驚かされますが、飛龍様もまた……その、なんと言いますか……陶賢妃様のことをよくご存じなようで……」


 慎重に言葉を選ぶ鈴凛だった。


「なにが言いたいのかよくわからぬが、これより攫われた灯翠の捜索を行う。よいな」


「はいっ!」




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隻眼の鍵師。皇帝を救う乙女と勘違いされ後宮で溺愛される(ただし、本人はまったくそのことに気づかない) 三夜間円 @tukisiroro

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