第五十一話 ギルドカード

「あ、すみません。冒険者登録、二人分お願いしたいんですけど」


 頭をあげた金髪の女性に、俺はそう言った。


 すると、女性はカウンター内の右手に立つ桃色の髪をした女性に顔を向けて「冒険者登録の手続きですって」と言った。


 桃色の髪の女性は、こくりとうなずくと、片手をあげざま「はい! では、こちらにどうぞ」と俺たちに声をかけた。


 促されて、メアとともに移動する。


 そうして、桃色の髪の女性の前に、カウンターを挟んでメアと並んで立つと、すぐに女性が口を開いた。


「はい。手続きお承ります。一人あたり登録料二百五十ジャラチャリンになりますので、しめて五百ジャラチャリンになります」


 そう告げると、女性は営業スマイル然とした笑みを湛えた。


「は、はい。えーと、五百、五百」


 俺は、言いながら、ぎこちない手つきで、先ほど手にした大金の入った革袋を開いて、手を突っ込む。


 そのまま、ジャラジャラ言わせながら、硬貨を手で鷲掴みにして取り出し、目を落とす。


 手のひらには、漢数字で百と刻印された硬貨が八枚、室内灯の火明りを照り返して、キラキラ光っていた。


 勘を働かせた俺は、その中から、硬貨を五枚、もう一方の手に移し取って、それを女性の前に差し出し、答え合わせをするように「これで、いいですか?」と訊ねた。


 女性は、俺の手のひらの上で光る硬貨を認めると、その数秒後には「はい」と答えた。


 女性の返事を耳にした俺は、左手に載せた硬貨を、カウンターに置かれていた木でできたカルトンに移して、手をスボンで二回拭った。


 女性は確認するように、雑然と並んだ硬貨をためつすがめつ見て「五百ジャラチャリンちょうどですね」と言って、硬貨を一枚ずつ取りあげた。


 それから、間髪入れずに「はい。それでは、ギルドカードを発行しますので、お名前を教えてください」と言った。


「はい。夜雲龍彦です」


「メアです」


 俺たちが名前を述べた直後、女性は「承知しました。少々お待ちください」と言って、踵を返すと、カウンターの奥にある部屋に入っていった。


 ややあって女性が戻ってきて、クレジットカードのような見た目の、琥珀色をした魔石が埋め込まれた金属製の白いカードを俺とメアとにそれぞれ手渡して言った。


「こちらが、ギルドカードになります。ご存知かもしれませんが、ギルドガードがあれば、ギルドにおいてクエストを受けることができます。クエストを受けたい場合、あちらにあるクエストボードに貼られたクエストシートを選んで、ギルドカードと一緒に提示してください」


 機械的な口ぶりで述べられたその説明を受けて、「わかりました」と俺が答えると、女性は「それと、ギルドカードに埋め込まれた魔石には、モンスターを倒すと、スキルポイントが蓄積され、そのポイントを利用することで、新たなスキルが獲得可能です。ポイント利用の際は、私の右手のカウンターの受付係にお申しつけください」と言って、女性は、金髪の女性がしたように丁寧にお辞儀をした。


 俺はまた「わかりました」と口にすると、「ありがとうございます」と言って、軽く頭をさげた。


 俺がそう言うと、遅まきながらメアも「どうもありがとう」と礼を口にして、俺同様に軽くこうべを垂れた。

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