第4話:第二の戦士:巡洋駆逐艦”雪風”
巡洋駆逐艦“雪風”性能
基準排水量 3,033トン
全長 120.5メートル
最大幅 12.8メートル
吃水 3.9メートル
ボイラー 朝霧式Ⅱ型熱核融合炉
主機 朝霧式核融合タービン2基2軸
最大速力 70ノット
航続距離 全速力で数百年
乗員 兵員100人
兵装
50口径朝霧式12.7cm超高速電磁砲:2基
九六式全自動25mmレーザー3連装機銃:4基
九六式全自動25mmレーザー連装機銃:1基
九六式全自動25mmレーザー単装機銃:14基
九二式61cm四連装魚雷発射管:2基(韋駄天魚雷40本)
九四式誘導爆雷投射機:1基
爆雷投下軌条:2基
防御
光学迷彩システム・ステルスモード
磁気シールド
エンジンの振動音が艦橋に響いている。
“雪風”は、静かに海面を滑るように進み、眼前には霧に包まれた巨大な要塞“高天原”が姿を現しつつあった。
富嶽武夫は、艦橋の指揮席に座りながら、固く握った拳を膝の上に置いていた。
艦橋内の空気は重く張り詰め、オペレーターたちも普段以上に緊張した様子で計器を操作している。
「……高天原要塞、距離2000メートル、第11番ドックへ進入せよとの事です」
通信士が報告する。
富嶽は頷きながら要塞を見る。
「あれが……数々の並行世界を行き来できる空間移動要塞か……デカいな」
富嶽は前方のスクリーンに映る高天原要塞の姿を見ながら、無意識に息を呑んだ。
巨大な要塞……海面に浮かぶその姿はまるで鋼鉄の城のような威圧感を放っている。
そして……その中にいるのは、あの伝説の艦長……『日下敏夫』海軍少将。
「(伝説の艦長か……)」
富嶽の胸が激しく高鳴る。
……数々の並行世界を渡り歩き、幾度もの絶望的な状況を覆した男。
……沈むことを知らぬ不沈潜水空母“伊400”を率い、日本を幾度も救った英雄。
「……しかし、果たしてそんな英雄と肩を並べることができるのか……」
ふと、不安が胸に広がる。
日下敏夫の存在感は桁違いだった。
「(俺は本当に、この作戦にふさわしいのか?)」
「……艦長」
副長の『東郷茂雄』の声に、富嶽は我に返った。
「どうした?」
「何と! 伊400からホログラム通信です! 日下艦長からの直接通信を受けています」
富嶽の胸がさらに高鳴る。
「……繋げ!」
スクリーンが暗転し、次の瞬間……!
日下敏夫が映し出された。
「君が富嶽武夫君か、朝霧翁から聞いているよ」
鋭い眼光。
日下敏夫の姿は、思っていたよりも穏やかだった。
だが、その瞳には冷徹な強さと確固たる自信が宿っている。
「……日下艦長」
富嶽は自然と背筋を正し、敬礼する。
「巡洋駆逐艦“雪風”艦長『富嶽武夫』、これより伊400と共同作戦に入ります」
「うん、こちらこそ頼む。よく来たな、富嶽君」
日下は淡々とした声で言ったが、その声には確かな信頼が感じられた。
「雪風……奇跡の駆逐艦。その名を背負う者が、君のような男でよかったよ」
「……恐れ入ります」
「富嶽……」
日下の声が鋭くなる。
「これから我々は、高天原要塞で準備をして、日本を取り戻す戦いに入る。逃げ道はない、覚悟はあるか?」
富嶽は瞬時に答えた。
「当然です! 雪風は、どんな死地でも帰還する艦。この私もまた、その艦長として最後まで戦い抜きます」
日下の口元に微かな笑みが浮かぶ。
「……いい目をしているな」
富嶽の胸に鋭く響く言葉。
まるで、己の内側を見透かされたような感覚だった。
「富嶽、俺の背中を任せる」
「……! 光栄です。」
富嶽は大きく息を吸い、拳を握る。
先ほどまでの不安が、消え去っていた。
……自分が選ばれた理由を、今なら理解できる。
「では、直に会うのは要塞内だな? 時間の概念がない要塞だから納得いくまで準備できる」
そういうと日下の姿が消える。
しばしの沈黙の中、富嶽は命令する。
「雪風、前進! 高天原要塞へ向かう」
「了解!」
「機関出力ダウン!」
「駆動音安定!」
「艦長」
東郷副長が富嶽を見た。
「……英雄に並び立てそうですか?」
富嶽は短く笑った。
「私は英雄になるつもりはないよ」
「え?」
「英雄の背中を守る! それが俺の役割だ」
富嶽はスクリーンに映る高天原要塞を見据えた。
「英雄に守られる時代は終わった! 今度は俺たちが、英雄を支える番だ」
「富嶽艦長……」
「必ず……やるぞ! 雪風、要塞内へ進入だ!!」
「総員、寄港準備」
機関が唸りを上げる。
巡洋駆逐艦“雪風”は、要塞内入り口に向かう。
「富嶽、俺の背中を任せる、頼むぞ」
日下が最後に言った言葉を富嶽は思い出していた。
「やってみせる!」
その瞬間、雪風の艦首が波を切った。
共に行動する伊400と雪風……伝説と奇跡が交差した瞬間だった。
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