1 現状の把握と情報の共有は重要
「というわけで、生き残るため情報を集めて計画を練ろう!第一回!私生存会議ー!議長はオリジナルの私が進行します!」
わーぱちぱちと「私」達……私のスキルによって生み出された複製達の拍手が鳴り響きそれが止んだあたりで私は複製達に話し出す。
「まず現状ですが……これもう異世界転移でいいよね!」
「うん、突然見知らぬ場所に転移してチートスキルまであるんだから違ったほうが驚きだよ」
「明らかに魔物っぽいのもいたしね」
「いきなり荒野で魔物に奇襲されるスタートはハードすぎない?」
「三十分ぐらい真っ直ぐ歩いて戻ってきたんだけど、どこまで行っても荒野だったんだけど」
「ちょっと、あんまり不安になること言わないでよ」
「私一回遠くで魔物っぽいの見た」
「よくよく見ると私達の人数ちょっと減ってない?」
「いや、だから言わないでってば!」
私の言葉に反応して周囲の探索とか魔物の調査とか周囲の安全確認とか色々とやらせるために生み出して行動させていた50人ほどの複製達が口々に話しだす。
しかし半日ほど複製達と行動してたけど、やっぱり人がたくさんいるのは気分的にも効率的にも違うな、まあ半分一人のようなものなんだけど。
だけどこのままワイワイ話していても会議にはならない、私が手を1回打つと場はパっと静まり返り、私は会議を続行する。
「それじゃあ最初は今までにわかったことの情報共有から、まずは異世界転移で手に入れたチートスキル、複製について話そっか」
「なんとなくわかってたけどそのスキルって複製なんだね」
「オリジナルじゃない生み出された側の私には使えないから気になってた」
「この状況を打開できるものならいいんだけど」
複製達の意識がが私に集中する。自分の複製相手なのに意外と緊張するな。
そんなことを考えながらも私は説明を始める。
「それじゃあこのスキルの内容だけど……このスキルの名前は名付けて『万物複製』。体の中に感じる魔力っぽい謎エネルギーを消費することで触れたものを複製するスキルだよ。魔力は使い切っても1時間程度で自然回復するし一部の例外を除いて消費はごくごく低いから結構無法な使い方ができそうかな」
「おお、チートスキルだ」
「結構やばいスキルっぽい?」
「いや待って?一部の例外って?」
「そうだね、一部の例外ってのは、魔力を持つものの複製は魔力の消費量が増えるのと……生き物の複製は多分今のところ不可能なぐらい魔力を使いそうってくらい?なんでか自分自身……複製されてないオリジナルの複製だけはむしろほとんど魔力を使わないけど……」
「自分を複製できるのは例外なんだ…… 」
「多分わかってるのはそれくらいだよね、もうちょっと余裕ができたら少し調査してみたいけど……」
そうだね、わかってるのはそれぐらい、とうまく言えたことへの安堵を感じながら一息をついたところで複製の1人が手を挙げて私がOKを出すと話しだす。
「……あの、私は周囲の状況を確かめるために結構動いてて、かなりお腹が空いて来たんですけど……食料って大丈夫なんですか?」
その言葉に反応して複製達が確かにそれは気になっていただのそうだそうだ、私もお腹が空いてきただの言い始める。
それを見て、私はその質問を待っていたとばかりにドヤ顔を決めて指パッチンをすると……
「はいはーい、ちょうど出来上がりましたよ」
と言いながら現れた食料担当の複製が私に骨に突き刺さったとある物を手渡す。
そして私はそのとある物を掲げて。
「ば、馬鹿な……や、焼き肉だと!?」
「いや、確かに魔物の肉はあったけど……火はどうしたの!?」
「ちょっと誰か火種の心当たりある?」
「わ、私は枯れ木を持ってきたけど……」
「いやあ、それだけじゃ貧弱女子中学生の私が火をつけるなんて不可能だよね」
「ハラ、ヘッタ、ワタシ、ニク、クウ!」
私が掲げた物……魔物の骨に突き刺した魔物肉の焼き肉に会議がどよめきに包まれる。
まあ当然である、なにせ私が一番心配していたのが火の起こし方で、ここにいる全員は私の複製なのだから……いやなんか変なの混ざってるような。
まあともかく、私はドヤりながら複製達に焼き肉を見せびらかしてもったいぶる。
「ふふ、どうやって作ったのか気になるでしょ? 気になるでしょー!」
「もったいぶんなオリジナルー!」
「ドヤ顔がうざい!」
「それを作ったのはお前の手柄じゃないだろ!」
「ニク、ヨコセ、デナイト……」
ふふふ、自分相手だからこそなんとも優越感があっていいわね、遠慮なく言えるっていうか。
そうね、もっともったいぶって煽ってから
…………いや、やっぱり変なのが混じってる!
ニク、ヨコセ、デナイト……何!?
デナイト何されるのかの恐怖に負けた私は素直に話し始める。
「え、ええとまずは火の起こし方だけど……これを使ったの」
そう言うと私はキレイな宝石のような石をポケットから取り出す。
「なにそれ石?」
「宝石っぽいけど」
「あ、それ魔石じゃん」
「魔石?なにそれ?」
「魔物の体の中に入ってる石。魔物解体班だったんだけど……グロさに耐えらんなくてそれが見つかったあたりでリタイアしたからあんまり知らない」
「それは惜しかったね、そこからが一番面白かったのに」
「はー?」
喧嘩が始まりそうなので手を打って沈めて話し始める。
「静かに。そう、これは魔石なの。魔物の体の中にあって綺麗だったからそう呼んでたんだけどね。実はこれ、思いっきり衝撃を与えると……」
そう言って私は魔石を地面において石で叩き割って……
パァン!!
強い破裂音と赤い光と共に耳と手に強いしびれが走る。
そして複製達に魔石を打った石を見せると、そこにはヒビと焦げ跡が残っていた。
「……耳痛い。えっと、爆発するの。魔物解体班の私達がこの効果を見つけてくれてね、食糧班がノートを上手いこと使って火をつけてくれたんだ。今、裏で食糧班を三十人くらいに増やして魔物が腐る前に色々と試してもらってるとこ。万物複製のことを考えればだいぶん余裕が出てきたね」
「おお!大発見じゃん!」
「蒸留、燻製、火があれば他にもやれることが大幅に増えるわけだし、それがほんの少しでも成功すれば増やせる、これなら生き残れるかも?あとこんな音がするなら誰か事前に言ってよ……」
「もしかして私が魔物解体班抜けたあとに魔石で実験して楽しんでたの?あとこんな音がするって知ってたなら教えてよ!」
「そーだよ、だから惜しかったね、そして私は耳をふさいでいたから大丈夫!」
会議が今までで一番の騒々しさで満ちる。
その声には、当面の生存の目処が立った喜びに溢れていた。
だがあくまで当面、何もしなければそのうち死ぬ可能性もある。だから次の提案である。
「……さて、とりあえず生きていく目処は立ったわけだけどここで提案があるんだけど……
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