統一された人格の保存_20241222

「あ、から始まって、ん、で終わるものなあんだ」

 よしりこ先生、よしりこ先生。それは、その答えは、もう、自明なのでは??

「そうです。よく分かったね、・・・くん。そうです。答えは、もう、自明ですね」

 あーはははあはは。そんな簡単な問題。ぼくには簡単すぎて、へなちょこですね。

「いやいやいや、・・・くんが賢いからだよ。本当に頭がいいよね」

 そうやって、よしりこ先生はぼくの自尊心を満たそうとしに来る。これはほぼ毎日のこと。たまに機嫌が悪い日は、ぼくをいじめようとする。

 しかし、よしりこ先生のいじめは五十パーセントの確率で失敗する。

 しかし、今日は機嫌がいい日。

「でも、先生、よしりこ先生。ぼくには、一つ、とても気になることがあるのです」

「なあに? 行って御覧?」

「ぼくは、ぼくがぼくであるということに、もう、ほとほと嫌気が差してきているのです」

「ふむふむ」

「もう、何と言いましょうか、この、ぼくのこの、このような在り方、存在の仕方、統一された人格が、もう嫌になってしまったのです」

「人格が、嫌になってしまったの」

「はいぃ、その通りです。ぼくはどこまでいってもいつまでたってもぼくなわけで、ほかの、ぼく以外のなにものかになることは不可能なのです。つまり、その、いわば、言うなれば、ぼくは、ずっと、このぼくのこの気持ち悪さをずっと抱え続けて生きていかなくてはならないのです」

「自分の性格が、嫌になったということ?」

「性格よりも、もっと重要なことです。態度であれば、表面的な態度であれば、矯正すれば済むことです。同様に、性格も、自らが心がければ矯正できます。しかし、根本的な精神そのものは、変えることはできないのです。統一された人格そのものの在り方は決して変わることがない」

「なるほど、そうなんだね」

 よしりこ先生は、うんうんと頷いて、それから言った。「めんどくせー」

「おわわわわ。おええぇ」

 ぼくはショックで吐いた。「おええぇ」「おええぇ」

「おええええぇ」

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