第18話:成長の兆し

「……なっ、めるんじゃないわよ!!」


雪崩に巻き込まれてから2時間と少し、私は雪の牢獄からの脱獄を成功させていた。


「他の3人は!?」


スカレットとブルースならまだいい。ただあのモヤシ指揮官だけはすぐに救出しないと15分ほどで死ぬ。


猛吹雪のせいでGPSが使えず、捜索が困難に。自分の出土位置から推定して、流された大まかな場所に向かって棒を突き刺す。


「オルターのババアが言ってたこと、無駄じゃなかったわねっ!」


憎たらしいにやけ面を思い出しながら、懸命に救助を続ける。


その時、吹雪に切れ目が入り、一時的に電波が復活する。慌てて発信機を確認するが、それよりも前に通信が入る。


『・-・・ ---・- ・・ ・・-・・ --・・ ・・ --・-・ ・・』

「何これ……何かの暗号?」


あーもう、こう言うのはスカレットの役割なんだって。何言ってるのかわからないわよ!


だめ元で記録だけしているが、解読の兆しは一切なし!


『-・-- ・・ ・-・-・ -・・・ ・・ --・-・ ・・- ---- ・・ ・・-』

「スカレット! 早く起きなさいよ!」

「和人無事、現場集合、だってよ」

「スカレッ———ッ!?」


声をかけられ、振り返ると……


「クロノ・ホワイト!?」

「よっす」

「…‥なぜここに?」

「野暮用だよ。君たちも、ここに俺がいることを期待してとっとこ来たんじゃねえか?」


会話を繋げながら、後ろ手でバーナーカッターを抜く。ちゃちなものだが、無手よりはマシだろう。


「他のみんなは?」

「発見できたのはお前だけだよ。相当奥に流されたらしいな、俺の目でもギリギリ捉え切れる程度だ。っていうか、モールスくらい覚えておけよ、中坊じゃないんだぞ?」

「悪かったわね。で、その暗号が本当だって言う証拠は?」

「人の善行を疑うもんじゃねぇぞ、というか嘘を付く理由がないだろ。このまま放置しても、お前は文字通り五里霧中だ」


半分ほどまで長さを減らした煙草を吸い、ニヒルな笑みでにははと笑う彼女に対して、何も言うことができなかった。


「はい、それじゃあ楽しいピクニックだ。オヤツは300クレジットまで、先生バナナ嫌いだからオヤツ側に入れとくわ」

「はぁ!? 何あんたが仕切ってるわけ?」


まずは2人と合流しないと、私だけではこの化け物を抑えきれない。


「他の2人だったら気にしなくていい。一定周期で通信がループしているから、そのうち気がついて目的地に向かうさ。そもそもの目的である俺から目を離していいのかい?」

「〜〜〜っ! 行くわよ!!」

「にはは。んじゃ、出発すんぞ〜






















せいぜい振り切られないようにな?」

「—————ッ!!??」


瞬間、目の前にいたはずのクロノの姿が消えた、と思ったらすでに20メートルほど先に進んでいた。


「能力!? ……いや、純粋なスピード!!」


オルターの報告では、クロノ本体の機体性能は、B級中位ほどの性能しかない。

これでも才能の塊と言われた私が追いつかない理由がない。なのに……!


「距離が縮まらない! 純粋な速度は私が優っているはずなのに!」


おそらくこれでも手加減されている。あえて私の一回り下くらいの速力で。


「何が違うの? シンプルなスピード勝負、経験の差で離されるはずがない!」


おそらくこれが、私の殻を破るヒントになる。彼女にあって私にないもの、一足一手も見逃さない。全て吸収してやる。


「もう二度と、仲間を危険に晒す訳には行かないのよ!」

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