第17話:拾い指揮官

「……ッ!」


何があった! ここはどこだ? なぜ俺は意識を失っていた?


「目が覚めたみたいね」

「……助けてくれたってことでいいんだよな」


俺の目の前に現れたのは、深い、深い迷いの森をイメージさせるような緑髪をした1人の幻想少女。


「グリエルよ。貴方と同じ任務を受け、雪に倒れていたのを保護してシェルターに退避、今に至るわ」

「ありがとうグリエル。近くに俺の仲間は居なかったか? 雪崩に巻き込まれたんだ、埋まっているかもしれない」

「今は猛吹雪で、外に出て活動すればすぐに凍死よ、リスキーだわ。それに、幻想少女は3時間くらいなら空気を取り入れなくても平気だし、埋まってしまっても自分で脱出できるでしょう」

「……この場所の正確な座標はわかるか?」

「無理ね。天候のせいで電波が届かないの、大雑把な位置しかわからないわ」

「……モールスくらいならギリ届くか?」

「それでも相当厳しいでしょうね。吹雪が落ち着くのを待ってかしら。何を送る気なの?」

「この部隊も俺の部隊も、行き着くところは同じなんだ。変に捜索して時間を浪費するより、目標を集合地点としたほうがいい」


そこで、俺はある違和感に気がつく。


「なぁ、床に倒れていた、と言ってたよな? 、ではなくて」

「……………えぇ、そうね。若干雪が覆っていたけど、雪崩に巻き込まれた雰囲気ではなかったわ。時間経過で雪が積もった感じだった」

「……なら、なぜ俺だけ埋まっていなかった? いや、そもそもなぜ俺は偶然にもに倒れていた?」


気を失う前、最後に見たであろう光景が脳裏に、霧をスクリーンにしたかのようにぼんやりと浮かぶ。しかし、その手がかりでさえも風に吹かれて霧散してしまうのだ。






◇◇◇◇◇






Reader-アスナ


「……これ、どうしよう」


拾い猫、もとい拾い指揮官を連れて洞窟に避難。凍えていた様子なので俺が羽織っていたコートを被せて焚き火を焚く。


「いやいや、さりげなく介護してるけど、これやべぇでしょ」


俺が考えたシナリオでは、ここでニュービーと会う予定ではなかったんだよな。むしろイエルロと会いたかった。

不幸中の幸いか、ニュービーは俺のことを認識する前に気絶した。このままほっぽって知らんぷりをするの手、なんだがぁ……


「グリエル部隊の進行が思ったより遅れているんだよなぁ」


このままにしておけば八割五分がた死ぬ。しかし助けたことを報告されてしまっては、


「どっちを取っても破滅の一歩なんだよなぁ」


はぁ、あまり使いたくはなかったが……


「使いますか、OYS」


OYSの能力は大きく分けて3つ。


反発させる『あお


収束させる『くろ


そして……その二つを混ぜ合わせ、相容れない特性の崩壊を攻撃として転用する『あか


「『私だけの空ザ・ワールド』モード『くろ』 『赤イ糸』」


ニュービーとグリエルが出会う運命を加速させ、増幅し引き合わせる。


「ニュービーの方は十分だけど、グリエルの引きが弱いなぁ」


無いものに引っかかる無理技を遂行し、因果を糸として繋ぐ。


「ついでだし、イエルロと会う運命を貰ってこ」


これでよし。あとは進行方向に適当に投げておくだけでいいでしょ。


彼の胸ポケットを漁り、ライターを取り出すと手に握らせて火を付けさせる。


「すぅ—————ハァ〜〜〜」


俺もぼちぼち仕事するかぁ。

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