第12話 一気に逮捕された一味
江崎と渡辺の無残すぎる遺体は翌日10月8日6時15分ごろ、現場付近でトラックを路肩に止めた運転手が発見される。
通報を受けた岐阜県警大垣署は死体を同日午後に岐阜大学医学部に運んで司法解剖した結果、死因はいずれも数種類の凶器で多数回殴られたことによる失血死と判明した。
遺体は生前に念入りに痛めつけられたことが明らかだったことから、報道当初は不良か暴走族グループの抗争によるものと思われていたが、どうやらそうではないことがすぐに明らかとなる。
小森に解放されるやすぐに警察に駆け込んだ小笠原の口により、殺された江崎と渡辺はボーリング場で見知らぬグループに一方的に因縁をつけられて江崎とともに拉致されていたことが判明したのだ。
やはり小笠原を生かしておいたのが犯行グループにとって命取りだった。
10月9日には傷害致死事件として岐阜県警は大垣署内に捜査本部を設置。
翌10月10日に行われた事情聴取での小笠原の供述に出てきたグループの一人の女の存在が突き止められる。
さらに奪われた彼の車は消火剤を撒かれて一宮市内に放置されていたが、その車内から小林の指紋が発見されたことが決定打となった。
小林は先の8月に県内で起こした恐喝事件で指名手配の身であり、今まで悪さをしすぎたおかげで指紋のデータもばっちり保管されていたから、捜査本部は「犯行グループは小林正人を含む愛知県尾張地区の不良少年グループ6人」という方向で捜査が始まる。
また、大阪に連れて行かれる際に寄ったコンビニの防犯カメラにはグループの一味ではないかと思われていた女と小林本人が写っていたことからもそれは裏付けられた。
一方、運転手役の重住は江崎と渡辺を殺した事件が発覚した翌日10月9日には大阪から一宮市へ戻って、岡田を殺した際に一緒にいた高澤、町田、藤川と合流。
車内で彼らとシンナーを吸っていたが、その現場を愛知県警の一宮警察署の署員に押さえられてしまった。
彼らは小林と一緒ではなかったが、もうあんな同じ人間とは思えないほど悪い奴と一緒にいたくなかったらしい。
また、逮捕後に次々に長良川で江崎や渡辺を殺した一件ばかりか岡田をリンチして殺したことについても自供し始め、林も出頭してきた。
そして当の小林本人も逃げ切ることはできなかった。
小林は少年院時代の知り合いの家に匿ってもらっていたが、13日にその知り合いと前述のリンチ事件には関わっていない他の不良とともに強盗事件を起こして車を奪い、通報を受けたパトカーに追われて街路樹に衝突。
小林は逃げたが翌14日に出頭した。
もう逃げきれないと観念したらしい。
また、小森も岐阜県警や愛知県警が知らない間に大阪府警に他の事件について自首しており、後日木曽川や長良川の事件で改めて逮捕された。
やがて小林は11月18日までに大阪で林正英を殺したことを自供。
高知県の山中からほぼ白骨化した林の遺体が発見される。
26日には大阪の事件での共犯の浦も逮捕。
浦は強盗致傷容疑で逮捕されていたが保護観察処分になっており、出頭してきたらしい。
短期間で四人もの青年がリンチされてなぶり殺しにされたことが報道されるや当時の日本は震撼した。
当初こそ小林は四人を殺した理由を「林がガンを飛ばしたから」「岡田が因縁をつけてきたから」「ボウリング場で態度の生意気な奴らをしめたから」などと言っていたが、明らかにやりすぎどころではない。
たったそれだけのことでそこまでむごたらしく何人も殺せる人間が日本にいること自体驚きなのに、それが未成年だったからなおさらだった。
なお、一味のうち芳我だけはすぐ捕まることはなく、往生際悪く逃げ回っていたが、事件の翌年1995年になって阪神・淡路大震災発生の翌日である1月18日に和歌山市内のラブホテルで女性と一緒にいたところを取り押さえられ、大阪で林正英を殺した容疑で大阪府警南署に逮捕された。
そして、後に木曽川や長良川の事件でも逮捕となる。
また、大阪での事件で死体遺棄容疑で指名手配されていた三下ヤクザの川田も大阪府警に逮捕された。
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