時々シッポ 〜犬の五感

 犬達は、この世界をどのように感じているのでしょうか。


 外界からの情報を得るため、人と同じように、犬達にも五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)があります。


 人の場合は『視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚』の順番に感覚が優れており、約8割を「視覚」が占めるといわれています。つまり、人はほとんど「視覚」に頼って生活しているのですね。


 犬の場合、一般的には『嗅覚・聴覚・視覚・味覚・触覚』の順番に優れており、「嗅覚4割、聴覚3割、視覚1割」という割合で、情報を認識していると考えられています。


 ★ ★ ★


【視覚】

 犬達は、遠くのものを見るのは得意ですが、近くの物に焦点を合わせることができません。

 犬は目が横についている犬種が多いため、200~270度という広い視野を持っています。

 人間のようにハッキリと色を識別することはできませんが、青と黄色をメインに認識していて、赤と緑を区別することは難しいようです。

 また、暗いところを見ること、動体視力は非常に優れています。


【味覚】

 人と同様に、甘味、塩味、苦味、酸味、旨味を感知できるといわれています。

 犬は、人間と比べて舌にある味を感じる細胞が約6分の1と少ないため、味覚には鈍感です。

 その中では、甘味に反応する細胞が多いため、甘いものは好きなようです。

 犬が味を感じるのは、匂いで一番美味しさを感じ、次いで、食感、味、見た目の順に美味しさを判断しているようです。


【触覚】

 生まれてまだ目が開かないうちから、最初に発達するのが触覚です。

 犬は、成長とともに、鼻先やしっぽ、足の先などの末端にかけて敏感になっていくため、触られると嫌がる子もいます。

 首から背中にかけてや、頭、胸などを撫でられることは大好きなので、ゆっくりと優しく撫でてあげると喜びます。


【聴覚】

 犬は、人間が聞こえる距離の4倍も遠くからの音を聞き分けることができます。

 また、音が聞こえる方向も、犬は32方向聞こえており、人間の2倍の能力を持っています。耳を非常によく動かしたり首を傾げたりしているのは、そのためです。

 音域は、高音域を得意としており、約40~6万ヘルツまでの音域を聞きとることができます。

 トレーニングでは、高めの声で話しかけた方が、犬達にはわかりやすいと言われます。


【嗅覚】

 犬にとって最も重要な感覚ですね。

 人間の鼻の臭細胞が500万個なのに対し、犬は2億個以上も持っています。犬は、人間の100万倍以上も嗅覚が発達しているのです。

 優れた嗅覚で、警察犬や麻薬探知犬など、活躍する犬達がいます。人間の喜怒哀楽を、感情で発する匂いで嗅ぎ分けているそうです。


★ ★ ★


 人間はほぼ視覚と聴覚で情報を捉えていますが、犬は嗅覚で情報を捉えています。目が見えにくくなっても、耳が遠くなっても、大きな影響がなく生活できるのはそのためです。


 犬達が匂いで感じているこの世界は、私達人間が目で見て捉えているものとは、全く異なっているのです。同じ世界に生きているのに、とても不思議ですね。


 犬達は人間のそばで、一緒に暮らすことを選び、匂いを嗅いで、言葉に耳を傾けて、私達を理解しようとしてくれます。


 はるお嬢様は、

 撫でられることが大好きで、

 ときどき飼い主の脚を踏んづけたまま、気がつかないでいて、

 濡れた冷たい鼻を押し付けて驚かせてくれて、

 左右の耳を動かして、首をかしげて、一所懸命に聴こうとして、

 シッポを振って、応えてくれます。


 そんな愛しいお嬢様の感じている世界を、少しでもわかることができたらいいのになぁ、と思うのです。




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