特別SS 七夕
前書き
どうも作者のイコです。
本日は七夕ですね。
和風ファンタジーを書いているので、SSを書いてみました。
よかったら楽しんでいただけれ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
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その年の七月七日、城内は七夕祭りの準備で賑わっていた。
学習術のイベントの一つとして、巨大な竹を以蔵先生がとってきて、平八が穴を掘って街の中心で祭りを開いた。
海辺の街では曇ることも予想していたが、天高く晴れ渡る夜になった。
屋台が立ち並び、七夕の伝説を紙芝居として伝えた美波藩の藩民は楽しそうに祭りに参加する。
城でも、庭園に美しい笹を立てて、色とりどりの短冊を飾っていた。
それは風に揺れて、蘭姫様の目を楽しませる。
蘭姫様と私は庭園の一角にある見晴らし良い縁側に腰掛けて、空に輝く無数の星々を見上げていた。
その中でも特に巨大な輝きを放つ天の川は、濁りのない空に美しい輝きを放っていた。
「美しい夜ですな、蘭姫様」
幼女から少女へと変貌を遂げた今でも、こうやって時間があれば蘭姫様とお話をする。此度の七夕は特別に祭りを開いて、蘭姫様が楽しめるように準備を整えた。
「ええ、七夕の夜は特別なのじゃ」
蘭姫様はチラリとこちらの顔を見て、微笑みを浮かべた。
八歳になられたばかりだが、その容姿は美しく。
つい、見惚れてしまう。
星空が一望できる縁側にゴロリと横になる。
「なんじゃ行儀が悪いぞ」
「しかし、蘭姫様、ずっと首を上げているよりもこうして寝転んだ方が、ゆっくりと見えまする」
天の川が空を横切り、その美しさに息を呑むほどだった。
「天の川を見ていると、織姫と彦星の伝説を思い出すのじゃ」
蘭姫様がふと呟いた。
「そうですね。一年に一度だけしか会えないなんて、なんとも切ない物語です」
蘭姫様と共に少しの間、天の川を見つめながら、近くに置かれていた笹の方に目を向けた。
「短冊に願い事を書きましたか?」
「うむ。この平和な世が長く続けば良いとな」
「はは、蘭姫様は良き藩主ですな」
「揶揄うでない。(本当はお主と一緒にいたいと書いたのだ)」
蘭姫様は、腕を広げる俺の元にゴロリとやってきて、腕枕を求めた。
私はその様子を見守りながら、まだまだ子供で親が恋しいのだろうと、好きに体を使わせる。
「そういう鷹は書いたのか?」
「はい。蘭姫様を幸福にすると書きました」
「なっ! お主は恥ずかしくはないのか?」
「何がでしょう?」
「もう良い」
蘭姫様は怒ってしまったのか、腕枕ではなく我が胸に顔を埋めてしまった。
俺は仕方なく天の川に視線を向けて、前世ではこのように美しく見ることができなかった星空を楽しむことにした。
「わっ、妾も其方の健康とこれからも一緒にいられるように祈ったのじゃ」
少し時間をおいて、恥ずかしそうに蘭姫様がそうやって告げた。
「ありがとうございます。とても嬉しゅうございます」
その夜、天の川の下で祭りの賑わいと、蘭姫様の優しさに触れながら、風の音を聞いていた。
まだまだ、彼女が成長するまではこの時間を楽しむことができる。
こうして二人で静かに星空を見上げて、七夕の夜を楽しめる幸福を噛み締めるとしよう。
いつもよりも特別な夜に感じられた。
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