[過去話] 私のヒーロー(白尾 side)


改めて、私…白尾 咲希しらお さきには、とある秘密がある。



それは、白尾家を含めた限られた一族にだけ現れる、とある特殊な体質のことだ。

その体質は、主に身体に現れる。


私たち白尾家の場合は、生まれた時から普通の人間とは違い、特徴的な猫の耳と尻尾を持って生まれるのだ。



だが、幼い頃の私は、こんな猫の耳や尻尾が付いていたとしても、中身はほとんど普通の人と変わらないのだから、特に問題は無いと本気で信じていた。


姉と母は私と同じ猫の特徴を持っていたし、普通の人間である父やお爺ちゃんも、可愛い可愛いと猫耳と尻尾が付いた私の事をたくさん可愛がってくれた。


その影響で、少し見た目が違くても、普通の人間と同じように生きていけると信じていた。




…その私の認識は、初めて会った[普通の人]で粉々に砕け散った。



ある日、私は母から言われた「猫耳と尻尾を隠せるようになるまでは外に出ない」とゆう決まりを破って、家の敷地の外に出た。


幼い子供らしく、元々持っていた[もっと広い場所で遊んでみたい]とゆう願望と、敷地の近くに偶然遊びに来ていた、子供達の笑い声が合わさり、気付けばその声に引かれて敷地の外に出てしまっていたのだ。


まだまだ好奇心旺盛だった幼い私は、初めて見る家族以外の存在に興奮し、笑顔で、その子供たちの遊びにいれてもらおうとした。


子供の遊びなんて、人数が多ければ多いほど楽しいものだ。普通の人に会うのは初めてだけれど、父やお爺ちゃんと同じように、快く遊んでくれると思った。




……でも子供達の反応は、幼い私の予想とは違った。



成長した今ならわかる。子供たちは、急に現れた自分達とは[違う存在]に、驚いて、怖がっていただけなのだと。


自分とは違う存在に怖がって、離れて欲しくて、幼い私に石を投げたのだ。


でもそんな事に幼い私は気付くはずがなく、急に石を投げてきた子供たちに、驚いて、怖くて、泣きながらうずくまることしかできなかった。


そのまま何も起こらなければ、私はこの時のことを、ただのトラウマとして記憶して、家族以外の存在には一生関心を持つこともなく過ごしたかもしれない。



…でも、そうはならなかった。


突然現れた、幼い私と同い年ぐらいの少女が、私を子供たちが飛ばしてくる石から守ってくれたのだ。


その少女は私と子供たちの前に立って、飛んでくる石から私を庇うように手を広げると、石を投げている子供たちに向かって怒りながら何かを叫んでいた。

…泣いていた私には少女が何を言っているのかわからなかったけど、私の為に怒ってくれてる事だけはわかった。



でも、無邪気な子供は、時に大人よりも残酷になる。


子供たちは、自分たちと[違う存在]の私を守る少女も私と[同類]だと見なした。


その瞬間、少女は説得は無理だと悟ったのだろう。


未だに蹲っている私に覆いかぶさって、再び飛んできた石から私を守り続けた。その間にも傷だらけになりながら、「大丈夫?」や「痛くない?」と言いながら、私の心配までしてくれた。



少女の方が痛いはずなのに、少女の方が苦しいはずなのに、少女は私を不安にさせない為に、笑顔を私に向け続けてくれた。



少しづつ激しくなる子供たちの攻撃にも怯まず私を庇って投石を受け続けた。



…ずっと………ずっと………………







───────



…私は、両親に見守られながら、ベッドの上で目を覚ました。

どうやら、あのまま気絶してしまっていたらしい。


すぐに、私を守ってくれた少女のことを両親に話して、少女の行方を聞いた。


「あの少女は無事なのか」「お礼を言いたい」、「あの少女となら、友達になれるかもしれない」そんな事を思いながら両親に必死に少女の行方を聞いた。


そんな私に、両親は「あの子は治療を受けて自分の家に帰った」としか教えてくれなかった。何回聞いても、それ以外には何も教えてくれなかった。


少女が庇ってくれる前に受けた傷が痛むが、その痛みよりも、少女に会えなかった。話せなかった。名前すら聞けなかった。そんな心の痛みの方が痛かった…



それ以降、私は猫化の制御ができるようになってからも、家族以外の人とは最低限の会話しかしなくなった。

普通の人は怖い。他の人とは違う私を受け入れてはくれない。

そう信じ込むようになってしまった。


それでも、やはりあの少女のような優しい人も世の中には存在するのかもしれない。少女のお陰でそう思えて、私は家に引き込もらずにすんだ。


いつか、あの少女に会えたら必ずお礼を言おう。

そして叶うのならばあの少女と…………





───────



そこで私は目を覚ました。どうやら、授業中にもかかわらず眠ってしまったらしい。

ふと、スマホに着信が来ていることに気付く。


▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂


[ねこみん]<白尾さん居眠りなんて珍しいね?大丈夫?>



<白猫が心配そうな顔で汗を流すスタンプ>



[白尾 咲希]<心配してくれてありがとうございます。少し寝不足なだけですから大丈夫です。>


▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂



……高校で偶然にも出会えた私の恩人ヒーロー


あの時の少女…いや、猫見さんは私の事を覚えてはいなかったけれど、それでも構わない。


ずっと会いたかった人と再会して、猫見 奏多ねこみ かなたとゆう名前を知って、会話ができて、頭を撫でてもらって、友達にだってなれた。




あの時に願った事が全て叶った。

それだけで私は十分幸せなんだから。




1度は離れてしまって、やっと見つけたられた私の恩人…もう……絶対に見失わない。……絶対に離さない。




✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -

もしも読んでくれた人がいるなら…


初心者の初執筆なので、言葉の違和感や誤字などがあるかもしれません…もし見つけたら遠慮なく指摘していただけると助かります!


リアル&初執筆で更新頻度も不定期ですが、続きが気になるって思ってくれた人がいれば嬉しいです。


[作者コメント]

今回は白尾ちゃんの過去編でした!結構読んでて胸糞だったね!

でも白尾ちゃんが普通の人を嫌う理由ってのは絶対に必要だから書きました。後悔はしてない!タイミング的にも結構いい場面でのお披露目だったと思うし!


今後のストーリーで悩んでるのと、あまり早く投稿し過ぎても着いていけないかもなので少し休みます。多分長くても1週間くらいで復活します。またね



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