残虐なNTRで眠るんだろな

次章の前に…かわいそうな、ユカ①〜守護戦姫Ivy《アイヴィ》の路


 ヒーローになりたかった。

 ヒーローになりたいだけだった。

 格好良い、どんな悪も許さない、ヒーローに。


 この世界にヒーローが必要無い事なんて無い、きっと誰かが助けを求めてる。

 

 パパも、ママも、最初は頑張るんだぞって言ってくれた。

 だけどオトナになるにつれ『もう少し考えなさい』とか『周りを見なさい』とか、怒られる事が多くなった。


 兄さんや姉さんは馬鹿にする。


『いい加減夢から覚めろよ、馬鹿が』

『アンタ、いつまでそんな事言ってんの?』


 私は小学生、年の離れた兄姉は、ヒーローごっこはとっくに終わってた。

 

 現実的に考えて…人を救える人に…

 学級委員長とか?…生徒会とか?…人助け…弱きを守る…ヒーローは…


「助ける人がいなければ…ヒーローは要らない」


 当たり前の事が、認められない。


「今の日本に…私の生活に…ヒーローは要らない」


 当たり前の事を、私は認められなかった。


『ウ~ン、ちょっとユカちゃんは遅れてますね…』


 小学校の時に親に連れられて行った病院…

 医者の言葉…思考が偏っている…年齢の割におかしな事を言う、と。


 ヒーローになる事のどこがおかしいの?

 いつか、悪い宇宙人が来るかも知れない。

 それに地球だって悪い人はいっぱいいる。

 だから…だから私は…


『警察官とか、そういうのじゃ、駄目なのか?』


「だって、警察官も事件起こしてるよ?どんな時でも助けられる、絶対の正義がヒーローなんだよ」


 親は溜息をついた…譲歩して寄り添ってくれたんだろう…それでも…私はヒーローになると決めていた。


 彼が応援してくれたから、どんな時もずっと…

 気持ちが、その心がヒーローの証だからって。


 そんな私に中学の時、神様からプレゼントがあった。

 綺麗な水晶の様な石、歩いていたら道端に落ちていた…何処か引き込まれるような、透き通る様な黄色。

 何気なく付けていたらおかしな事が起きた。


 三メートルぐらいジャンプ出来た。

 ちょっとした木だったら叩いて壊せた。

 足が2倍ぐらい速くなった。


 神様は私にヒーローの資格くれた。


 願いは叶うって神様は教えてくれた。


 その結果が…


『ソラあああ!!死んじゃいやああああ!!』


 唯一救える、目の前の命すら失いかけた。

 この力を持ってしても、叶わない敵がいる。

 いや、ちょっと強くなって調子に乗った私に、神様が与えた試練なんだ。


 その試練で動けなかった私に言っている気がする。


――もっとだ、もっと、もっと、――


 頭に響く声に従う、今度こそソラを守れる様に。

 強く願い変わる私、変身はヒーローの証なのだ。

 皮膚が白銀に覆われた、強く、感覚も鋭くなる。


――凄いねユカちゃん、私達のリーダーだね――


 大事な人達が出来た、もう誰も失わないように。

 皆の手本になるように、私は前へ進み続ける。

 そこで会った学校の先輩、まるで物語のヒーロー


――大事な後輩を見殺しに出来るかよ――


 正義のヒーロー、それは、夢のような日々。

 助け、助けられ、自分を顧みず、人を守る。

 人に慕われ期待され、私は一人のヒーローになる


 だけどその路は……振り返れば果てしなく……同時に悪夢で……足元は既に沼地の様にぬかるみ、マグマの様な怨嗟が聞こえ……



――テメェも、ここまでのし上がった私も、所詮自己満だ、ただねぇ…仲間を疑えねぇ、後ろから刺す奴の首取れねぇ、自分でケジメもつけられねぇなら、こっから先は来るじゃないよ――


 憧れのヒーローは逆側に、遥か遠くにいた。

 正義は沢山あって、私の立ち位置はグラグラ


――ヒーローがトラックに轢かれたぐれぇでガタガタ言ってんじゃねぇ!オレなんていつもトラックの心配してるぞ?新車だとヤベェから――


――社長!駄目ですよ!優しく!優しくしてあげて!夢のないこと言わないで!夢を見させてあげて!――


 最初に応援してくれた人を忘れ見下したクセに、その人に守られて、怯えて裏切って、またすがりつく


 そして…………


――ジブンダゲ ギセイニナルッテ ウツクシイネェ? ノゾミドオリ イジクラセテモラウヨォ゙?――


 圧倒的な力に、蹂躙されて、尊厳も誇りも踏み躙られ……


――Ivyだって、もうヒーローどころか普通の人間にも戻れないでしょ?あれだけの事されて…いや、何でもない…―― 


 壊れた時には取り返しのつかない事になり……


――さっさと人なんかやめちまえ、他の男に現を抜かすなら破裂しろ――


 私は裏切られ裏切り、蔑まれ見下して、脅され馬鹿にして、憎まれ…怖くて怯え…従う……


 アイデンティティを失ったヒーロー


 私はヒーロー…相武由佳…防専の星、守護戦姫Ivy…だった、人でなしの、女。

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