僕と由佳の物語②〜季節の様に変わる乙女心と宇宙の真理

 ユカとお付き合い…した。

 ユカは思ったより女の子だった、付き合いはキス以上進展はしなかったが、休みの日には色々な所に出かけた。

 

『思ったより…ソラは男なんだよなぁ…手がしっかりしてる…ドキドキするよ』


 手を繋ぎ、買い物や公園に行った。

 ユカの手は温かい、男性より女性の方が冷たいらしいけど違った。


 僕は寝たきりの育子婆ちゃんの介護もあるからウチに行く事も多かったけど…


 そして僕が彼女が出来たと言うと育子婆ちゃんはとても喜んだ。

 二人で婆ちゃんに付き合ってると言ったら…


『ソラ、ユカちゃん、良かったねぇ…本当に…良かったよ』


 涙ながらにユカと僕の手を握り喜んだ。

 ユカとは小学生の頃からの付き合いで、だから婆ちゃんも知っている。

 それとユカは簡単な料理なら作れるみたいで、たまに僕らに夕飯を作りに来てくれた。


 ユカと婆ちゃんと、ユカの作ったご飯を食べる。

 

 僕は、多分これが幸せの中にいるのではないかと、その時は本当に思っていたんだ。


 ユカの家には行った事がない、何故ならユカは5番目の子供で、家族の中では出来が悪い上にヒーローになるとか言っている為、家族で浮いているそうだ。


『勉強も運動も、考え方も私は家では劣っているみたいだよ、ずーっとね…でも普通の小学校に行ったからソラに出会えた。だから悔いはないよ』


 だから申し訳ないけど、僕はユカのご両親や兄弟姉妹にはあった事がない。

 

『育子婆ちゃんは良い人だな。私はいつか、あの家は出るんだ。だって居場所が無いもの……そしたら………いや、まだ早いな(笑)』


 そんな事を言いながらユカは少し寂しそうに笑った。


 学校でも生徒会や友達付き合いの合間にユカは僕の所に来て話したり、一緒に昼ごはんを食べたりした。

 

 楽しい時間はあっという間で、気付けばクリスマス、僕らはその日もデートをしていた。


『向こうは通行止めらしい…何かあったかな?』


「何だろうね?僕らの行く予定の場所じゃないけど…」


 大通り、街路樹が光に彩られ、街灯のイルミネーションの下を二人で歩いていた。


『光が綺麗だな…なぁソラ…私は…あの…その…』


「どうしたの?ユカ?」


『いや…世の中静かだし、平和だなって…もしかしたら私は…もう…ヒー…』

 

 何を言うんだろう?

 だけど、僕は何となく気付いていた。

 彼女はこの平和な日本で、別の道を行くのかも知れない。

 それでも良いと思う…でも、そんな時に限って…


 今日の、この星の動き。


 ドオオオオオオオオオオンッッッ!!!


 少し離れた高層のホテル、さいじょうが爆発した。


 僕も最初は分からなかったけど、この星は沢山の弱い人間、生命がメインの不思議な星だ。


 数え方がなんと言って良いか分からない。

 大体、一つの星に一つ、星の主がいる。

 しかしこの星は、星の主より強い力を持つ何かが一ついて、更には他に主がいるにも関わらず乗っ取ろうとする何かが一ついる…

 そして、星の主は、その他の二つの何かや、生物に対して殆ど関与していない事。

 分っているだけでも三つは別次元の何かがいる。


 ―クリスマスイヴ―

 ―十二月二十四日 十八時過ぎ―

 ―それは起きた―


 宇宙が掻き消えるような波動、この星に、遥か彼方からいたと思われる、巨大な力の源が、この小さな島国、日本で三つ同時に動き出した。


 北海道ではこの星の主が出現した。


 そしてこの星を乗っ取ろうとする者は、東京湾に現れた。

 その光は冬の夕方、夜の帳が下りる頃にも関わらず日中の様な光を放つ。

 その場所、東京湾に向かって行く、もう一体…この星で明らかに最も強き者

 二体は三百メートルを超えた巨大で向かい合う。


 何より驚いたのが、星の主より強いその何かが道場の師範代…社長だった。


 メスの…人の形…六本の腕に四本の足、尻尾は先端がコケシ?になっており、変な踊りを踊りながら東京湾に向かっていく。


 パニックになる人、奇声を上げながら天に手を掲げる者、倒れる人…


 天に手を掲げる人の一部が真っ白い人の様な人形になった。


『ねっねぇ!?ソラ!?何これ!?ねぇ!何が起こってるの!?』


 ユカもパニックだ。

 僕も人だったら混乱すると思う。

 エーイチから連絡が入る。


―ソラ?地球そこ》、凄い力場になっている…そこの系統の星々、消えるかもよ?―


 エーイチの声が聞こえる、恐怖の大王?って。


 さながら地球が滅ぶかのように。

 ユカは震えながら手をつかむ。


『ソラ!?大丈夫だから!私が…あ!?』


 ガン゙ッ


 白い人の形をしたものがユカを後ろから殴ろうとしたので庇った。

 まぁこれぐらいなら死にはしないから。

 ユカを突き飛ばし、殴られながら上を向く。


 自衛隊か、それとも他の軍隊か、更には異星人や別次元の存在もいた様な気がする。

 いよいよ世界の終わり感が強くなってきた。

 ユカには幸せになってもらいたかったのにな


―グォウラゥ゙!ギもぢィ゙ぃ゙ラアアエアア!!♥♥♥―


 社長が叫びながら光の塊を殴り始めた。それと同時にあらゆる場所に拳が落ちる。

 白い塊は同じ白い液体を飛び散らしながら消えた。

 僕はユカに大丈夫だよって言おうとしたけど肺がやられて言えなかった。


『ソラッ!?何でっ!?しっかりして!?いやぁっ!ソラああああア゙ァ゙!!』


 流星が、光の塊が全てのエネルギーを使い宇宙から流星を落とした。

 それを全部、社長は消した。 

 次に光の塊が消え、沢山の人が気を失った。

 そして……………


 少なくともこの星を…地球は光を失った。

 真っ暗の中の遠くの方に一つの目…みたいなものが穴から隠れる様に見ている、世界を。

 僕は気付いた、星の主。

 いや、銀河系と言われる範囲には間違いなく力を及ぼしているヌシ


 この時、周りの人は皆気を失っていたを

 この主の圧力は心を壊すからだ。

 だから…ユカを抱きしめて庇い、見えないようにした。

 この時、気を失っていない時点で既にウルトメスの因子が入っていたのかな?


『ゾラッ!?死なないで!お願いぃっ!ひどりにじないでえええ!!…え?ひぁ!耳ぃ!!』


 大丈夫だよ…それよりこの化け物達の声を聞こえない様に…暗いからバレないと思い、手を触手にして耳を防ぐ。

 

 エーイチが言っていた事を思い出す。

 地球に存在する三つの存在。


 一体、今、社長に消された光は、願いを集め力にするモノ…この星を奪おうとするモノ。


 もう一体は今、世界を暗黒にしたのは星の主、限りのある無…孤独と悲しみ、人になりたい無


 そして…最後の一体…社長…無から有、有の無限…永遠のエネルギーを作り出す異世界と繋がるモノ

 

 社長と主の目は、声にならない音で対話する。


―ザビジ…ぃ゙… ビドリ ハ イヤダ―


―ウルセェババア 電気付けろ、暗い―


―クパァ? コノ ヤクタタズ―


―うるすぇババァ…どっかキエロ ロウジンゴーホーム―


―ウルス?クパァ?クパァ…ザドブぐン゙ は? ィ゙なィ゙の?―


―ビョウインだよ ババァー オマエとは違うタイプの―


―ザドブグン゙ オウシ ワダジノ オうじ―


―ザドルグン゙ スキダヨ エッチシヨ…―


―どうしょもねぇババアだ…ん?VRゲームの電池切れる?じゃあオレも元に戻る―


―クパァ?―

 

 何だか全然分からない…この星で言う所の神同士の会話…そして空気が歪んだと思ったら…世界は突然元に戻った。


 幅はあるものの殆どが記憶を失い、まるで何事も無かったかのように日常が始まった。


 エーイチから後で何が起きたか説明をされたけど、どうでも良かった。

 地球に住むにあたって知らなくて良い事だから。


 ただ、ユカがこの宇宙の真理に片足を突っ込んでしまっていた。

 最後まで、神の様な存在の対話まで意識があったのだ。


 本来、星の主が動き出すと星の生き物は停止する。あの中で活動できるのは異星人か、異次元の存在だけだ。

 しかし何故かユカは気を失わず、ずっと震えていた。

 その時に気付くべきだったのかも知れない。



 それから…ユカはまるでオカルト(嘘)にハマる人の様な…一般的にはおかしな発言をするようになる。


 一言、忘れられない言葉がある。


『私は…自分も…ソラも…誰も守れず怯えていただけだった…』


 あの状況では誰しも同じ事になると思うがそれでも彼女は違った様だ…


 そして、僕への態度も変わっていった……


 


 

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