第四話 四十九院末明と初陣

「総員、戦闘配備!」

儂らの戦いは、今始まろうとしておった。

「あーしもしも?…はいっす、打ち合わせ通りに頼むっすよ〜、僕ちゃん達に当てたら後で特科の砲という砲の砲身にC4ぶち込んで回るっすからね?」

なんだか物騒なことを言っておるが、概ね作戦通りじゃろう。まずは特科、即ち諸外国で言う砲兵隊による砲撃で、目標のゲート周辺の魔物を粉砕するのじゃ。

どーんと、車両を降りれば聞こえてくる巨大な轟音。無人攻撃機が飛んでおる。

「…はいっすよ。僕ちゃんだって、富士の子達に愛着あるんっすから、優しくするっすよ?…じゃあ頼んだっす!」

こやつ、耒田一曹は元特戦群じゃが、その前は特科大隊に所属しておった。《富士の子達》というのは、この作戦に参加しておる富士駐屯地の各種最新鋭砲兵器じゃろう。

99式自走155mmりゅう弾砲、19式装輪自走155mmりゅう弾砲、28式装軌200mm自走りゅう弾砲、30式装軌自走多連装ロケット砲、32式装輪自走弾道誘導弾発射器。こやつらから放たれるのは、大量の砲弾、重砲弾、ロケット弾、そして短距離弾道ミサイルじゃ。今頃富士の峰からは噴煙が怒涛の如く吹き荒れておることじゃろう。

「…二佐、来た」

久佐三尉が、軍用光学双眼鏡を覗いて言いよる。ちなみにじゃが、儂らを運んできた兵員輸送車はもうすでにこの場には居らん。あれには無人操縦機能が搭載されており、自動で帰還させたからじゃ。

「富士の特科からもうすぐ砲撃来るっすよ~」

耒田が、SCAR-Hの弾薬を装填して地面に伏せてバイポッド、二脚を立てる。狙撃体勢じゃろう。儂も、M202A1の光学照準器を覗き込んで奴等を見る。今回の敵、【ゴブリン】共じゃ。

「やっちゃいましょうか~。派手に、華麗に、一撃で!」

俵井陸士長が、我々のモットーを言いながら、どや顔でUMP上に構える。絵になる美人さ。以前の儂からしても綺麗じゃと思っておったが、それよりも遥に綺麗に見えるのじゃから不思議じゃ。子供の頃近所のお姉さんに憧れたような心持になってしまう。

『頑張ってねっ!』

『ほのかたそかわゆす』

『盛り上がっていきましょうっ!』

……忘れておった。こやつらの紹介もせねばならん。

上から馬鹿、変態、阿呆じゃ。

『なんでだろうねっ、突然とっても不愉快な気分になったなっ!?』

まぁ、一応第一分隊の仲間じゃから説明しておこうかの。

この元気満々の少年風のやつは銀髪碧眼の美男子じゃ。ちょっと小さいのがコンプレックスで、眼鏡をかけておる。めんこい奴での、今の儂でさえ撫でてしまいたくなるくらいには愛らしい奴じゃ。儂らの整備要員で、銃器の手入れも本格的なものは殆どやって貰っておる。名は結笹〔ゆいささ〕早月〔さづき〕じゃ。

『確かに俺のMっ気がビンビンに反応してるわ』

この変態丸出しのやつが古末〔ふるすえ〕苅田〔かんだ〕、茶髪黒眼のショートストレートのごりごり理系って言う見た目なのに眼鏡をかけていない小癪な事に多少イケメンなくそ魔法研究者。儂の身体の生みの親でもあり小癪な事に世界有数の研究者としてノーベル物理学賞も受賞しておる。

『これはあれですね、心の中で失礼なことを考えてるやつです!』

最後にこの実況中継スタイルの口調が調子を狂わせおる奴が第13普通科連隊長、黒髪黒眼のアホ毛が特徴的な童顔短髪の美少年、浜波〔はまなみ〕槌谷〔ついや〕。儂の直接の上司であり、同時に唯一儂の事を子供扱い…というより幼女扱いせん奴じゃ。

こやつら三人が第一分隊の後方支援員じゃ。まぁ、何とも面白くない話なのじゃが、こやつらサポーターとしては本当に優秀じゃから、何とも文句が言えんのじゃ。

さて、そんなことを考えておる間に、ゴブリンどもが有効射程圏内に入って来よった。

「よし、行くぞ者共。儂らの初陣を、快勝で飾ってくれようではないか!」

「「「Mom, yes Mom!!!」」」

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