ショートコント:魔改造桃太郎

鈴イレ

ショートコント:「魔改造桃太郎」

ショートコント。魔改造桃太郎。


◇ ◇ ◇


 昔、昔、あるところにおじいさんと、おじいさんと……、あとおじいさんがいました。



Aさん:「ジジイしかいないのか!」


Bさん:「ばあさんは、交通事故で……」


Cさん:「……そうか」


Bさん:「捕まって今檻の中さ」


Aさん:「加害者! 被害者かと思ったら圧倒的に加害者じゃねぇか!」


◇ ◇ ◇


 おじいさんの名前をそれぞれ、ゴルゴンゾーラチーズ一世、アーリオオーリオペペロンチーノ一世、アヴァンギャルド一世と言います。



Aさん:「長い」


Bさん:「RTAでは3秒の遅延です」


Cさん:「鬼退治RTA?」


◇ ◇ ◇


 ゴルゴンゾーラチーズ一世は年金が無いから山をシバきたおしに、アーリオオーリ

オペペロンチーノ一世は川へ尋問しに、アヴァンギャルド一世は家でぐっすりしてました。


Bさん:「#アヴァンギャルド働け!」


Aさん:「年金積み立てていたんじゃないか?」


Cさん:「そもそも……、年金システムまだないよね?」


Aさん:「それは言ってはいけない」


◇ ◇ ◇


 ゴルゴンゾーラチーズはお金がないから山へいくと、ソノ竹ノ中ニ下ヒカル竹ナン一筋アリケル。アヤシガリテ寄リテミルニ、筒ノ中光タリ。



Aさん:「それを見れば三寸ばかりなる人いと美しゅうていたり」


Bさん:「竹取物語」


Cさん:「竹取の翁はゴルゴンゾーラチーズだった……?」


Aさん:「しかもこいつ一世だからかぐや姫とエロスしたんじゃね」


Bさん:「まあ、平安時代はそういう時代です、知らんけど」


◇ ◇ ◇


 アーリオオーリオペペロンチーノ一世が川を尋問していると「オロ、オロロ、オロロロ……!」と桃が流れてきました。



A:「川を尋問って……」


Cさん:「さっさと吐けってか?」


Bさん:「オロ、オロロ、オロロロ……!」


Cさん:「きったねー」


Bさん:「オーロオオーロオロロンローロー」


Aさん:「語感だけで勝負すな!」


◇ ◇ ◇


 アーリオオーリオペペロンチーノ一世はこの桃を家に持ち帰りました。しかし、あまりにも重いのでアヴァンギャルド一世を召喚して使役することにしました。



Cさん:「召喚……と使役して持ち帰ったのか……」


Bさん:「#アヴァンギャルド働け」


Aさん:「山をシバキに行ってたのにかわいそう」


Cさん:「いや待て、ペペロンチーノ桃家に持ち帰ってね?」


Aさん:「無駄に召喚してて笑う」


Bさん:「#ペペロンチーノ働け」


◇ ◇ ◇


 そしてアヴァンギャルド一世は死にました☆



Aさん:「即落ち二コマ! 死んだ! 桃太郎が鬼ヶ島に行く前に、鬼が襲ってくるに前に人が死んだ!」


Bさん:「あいつはいい奴だったよ、たぶん」


◇ ◇ ◇


 さて、桃を切ることになりました。ゴルゴンゾーラチーズ一世が竹をシバいてきた鉈で大きな桃を一刀両断……、の前に腰が……。



Aさん:「ジジイ要素! ここでジジイ要素いらない! 物語進まない! 鬼ヶ島に着く以前の物語がジジイ要素のせいで進まない!」


Bさん:「代打。アヴァンギャルド一世」


Cさん:「死んだよ! アヴァンギャルド一世、死んだよ!」


◇ ◇ ◇


 すると桃の中にはかわいいかわいい赤ちゃんがいました。それをゴルゴンゾーラチーズ一世は桃太郎と名付けました。



Bさん:「おぎゃあおぎゃあって泣いてないけど……呼吸できてる?」


Aさん:「ドクター!」


Bさん:「ピンチヒッター、アヴァンギャルド一世」


Cさん:「死んだよ! アヴァンギャルド一世、死んだよ!」


◇ ◇ ◇


 すると鬼がやって来ました。鬼は村を荒らしました。なお、ゴルゴンゾーラチーズ一世、アーリオオーリオペペロンチーノ一世、あと村の人々はみんな死にました☆



Aさん:「残虐すぎない? というか呼吸する様に人が死ぬね……」


Bさん:「おじいさん3人同じ墓、よかったね」


Cさん:「感覚が麻痺してきた」


◇ ◇ ◇


 桃太郎は食う飯がないから鬼を退治することにしました。するとキジが寄ってきます。「桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけた……。黍団子がない!!」



Aさん:「仲間できん! ババアがいないせいで黍団子がねぇ!」


Bさん:「ババア=仲間引換券」


Cさん:「言い方ぁ……」


Bさん:「RTAでは13秒の短縮です」


◇ ◇ ◇


 桃太郎はキジ、いえ非常食を確保しました。そのなかで道なき道を行きます。



Aさん:「黍団子もないのにどうやって……?」


Bさん:「いっそ、その場で調理してあげればいつ殺されるか分からない恐怖心に怯えることもなく楽に逝けると思いますが……」


Cさん:「それは一理……、ないから!」


Bさん:「因みにここでキジを倒すと進行不能バグが発生するので間違っても食べてはいけません」


Aさん:「誰が間違うんだよ……旨いらしいけど」


◇ ◇ ◇


桃太郎は旅の途中、Macaca fuscataとCanis lupus familiarisを手に入れました。



Aさん:「あんだって?」


Bさん:「ちなみにマッカッカ・フスカータはニホンザル、カニス ルプス ファミリアーリスは飼い犬のこと」


Cさん:「何で知ってんだよ」


◇ ◇ ◇


 そして桃太郎御一行は鬼ヶ島に乗り込みました。海の上ではキジに運んでもらいます。



Aさん:「キジに全幅の信頼を置いてるの何?」


Bさん:「荷重量推定50キロ」


Cさん:「黍団子もなしにキジ、お前ってやつは……」


Bさん:「黍団子の重さを加味しなくていいのは素晴らしい」


Cさん:「さすがババア」


Aさん:「#気遣うところが絶対に違う」


◇ ◇ ◇


 鬼ヶ島に乗り込む1人と3匹。しかし、キジは疲弊して動けず、猿はキジの乱雑な運搬によって酔い、飼い犬はすやすや眠っています。


Aさん:「何で来たんこいつら」


Bさん:「黍団子与えてないからしょうがないね」


Cさん:「というか船で乗り込めよ……」


Aさん:「というか飼い犬起こせよ」


◇ ◇ ◇


 しかし、桃太郎は鬼に大苦戦! 鬼は桃太郎を対峙するや否や手に持つ棍棒を振り回す。その棍棒をひらりと交わして微笑を浮かべる華奢な少年。風のよどみを感じて後ろから迫ってきた攻撃を切り上げて相殺、刹那一太刀が鬼に撃ち込まれた……!



Aさん:「作風変わりすぎ」


Cさん:「苦戦とは……?」


Bさん:「この作品では即死が基本だったが、鬼は桃太郎の一太刀を耐えた……。こいつ、ただ物ではない」


◇ ◇ ◇


 ピンチの桃太郎。そこに駆け付けたのはおばあさんでした。「桃太郎、黍団子をお食べ!」黍団子を一つ口にするとどんどん力が湧いてきます。


Aさん:「ここでババア登場か!」


Bさん:「彼女はどうやって海上の鬼ヶ島に?」


Aさん:「たしかに」


Cさん:「この物語にまともな人間はいないのか?」


◇ ◇ ◇


 おばあさんの助けもあり、桃太郎は鬼を退治することができました。さて、村から奪われたものを持って帰りたいところ……ですが、運ぶにはあまりにも多すぎました。


Aさん:「なんでこいつら船を用意してないんだよ……!」


Bさん:「というかキジも疲弊しているから帰れなくない?」


Cさん:「あれ、こっからサバイバルゲーム始まる?」


◇ ◇ ◇


 なので桃太郎とおばあさんは鬼ヶ島に住み、物資調達は近隣の村を襲うことにしました。こうして桃太郎とおばあさんは平穏に暮らしましたとさ。


Aさん:「これはひどい」


Bさん:「いい話だったなぁ……」


Cさん:「頼むからおばあさん、自首してくれ」


 これでこの物語は終わり。めでたしめでたし。


◇ ◇ ◇


ep:ショートコント。魔改造桃太郎。(ed)


 ご愛読ありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショートコント:魔改造桃太郎 鈴イレ @incompetence

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ