処遇



 とりあえず今回の襲撃も終わったということで俺は早速捕虜機能について見ることにした。


「【捕虜機能】

 これは眷属とは違い相手を自身の支配下に置くことはできません。

 出来ることは、捉えた相手の自害を防ぐことと、ダンジョンマスターに対して嘘をつけなくなるということの二つのみです。


 自害できなくなるというのはそのままの意味であり、下を噛んだり、頭をうちつけたり毒を飲んだりしても即座に回復を行う事で自害を防ぐことが出来ます。ただし、ダンジョン側による暴力などでは回復されません。


 そして、嘘をつけなくなるという効果はダンジョンマスターのみに対してしか機能しないため、眷属では意味が無いので気をつけてください。


 捕虜の条件は、こちらに降伏をした者に対してのみ有効です。そして、捕虜にした者は牢屋にいる限りいかなる能力も使うことが出来ないようになります。」


 なるほどな。まさに捕虜に特化した機能というわけだ。

 特に嘘をつけないというのはいいな。嘘が付けないと予めわかっていれば変に深読みとかもしなくていい訳だし色々と動きやすくなるだろうしね。


 さて、捕虜機能もある程度わかったことだし早速捕虜に会いに行くか。

 ヘラの親は…後ででいいか。






 そうして俺は早速10人ほどがいる牢屋の前へと着いた。ヘラは同行させてはいない。


「初めまして。俺がこのダンジョンのマスターだ。一応確認だが、お前らは俺を倒しに来たということであっているんだよな。」


 そう聞くと奴らのひとりが


「それは違う!俺らはおま…貴方を奴隷のように使うためにここへ来たんだ。ダンジョンマスターを自由に動かせるようになれば村には冒険者で人は溢れかえるだろうし一躍有名になれる。そう村長は考えてたんだ。」


 なるほど。奴隷にするとかいうふざけたことは一旦置いておいて、少なくとも俺を殺しに来た訳では無いことは確かなようだ。


 それならさすがに殺すというのはやりすぎなのかもしれない。

 あ、あともうひとつ聞いておかないといけないことがあるな。


「わかった。それともうひとつ。村にいる戦える人達はあとどれくらいいる?」


「あと三十人くらいはいるはずだが…とても貴方の魔物たちには勝てるとは思えない。俺たちがいたなら話は別だとは思うけどな。」


 良かった。これでさらに数百人とかいますとか言われたらもう逆に俺たちが降伏するところだったな。あとはこいつらが村でも強い方だということはわかった。


「わかった。少し待ってろ。」


 そう言って俺は牢屋を後にする。


 ヘラに聞いてみないとできるかは分からないがアイツらがいた村を利用できないかと考えている。


 俺たちにとってはダンジョンに人が来なければ生きていくことすらままならないわけで、ましてやこのダンジョンがあるのは辺境の森の中だ。そんなところに普通の冒険者はまず来ないだろう。


 そこでだ。俺があの村を支配することで、ここのダンジョンが強さの割にお得なダンジョンだという噂を流させる。そうすれば強すぎる冒険者は来ずにそこそこの冒険者が宝を得るために来るはずだ。

 そうすれば村も賑わい俺達も楽に過ごせる。まさにwin-winの関係ではなかろうか。


 ただ、逆らわれるのは嫌だから俺たちが支配する側ということは絶対にしないといけない。そのためには捕虜を連れてヘラとファウストが力を見せつけて逆らわないようにしたい。


 ただ、ヘラにとっては辛い思い出の残る場所だ。そんなところに無理やり行かせたくはない。だからヘラがいいよと言わなければまた別の案を考えなければだ。


 ――コンコン


 俺はヘラのいる部屋の扉を叩いた。ヘラは直ぐに部屋から出てきた。


「ヘラにお願いがあるんだ。嫌だったらもちろん断ってくれて構わないからね。」


 そう俺は前置きをして先程考えたことをヘラに伝えた。するとヘラは


「ボクは大丈夫ですよ!そりゃあの村はいたくもないですけど村の人間全てがボクに酷いことをしたわけじゃないし…何より一番やってきたやつはもうここにいるから。

 その役目はボクに任せて欲しい!」


 そうヘラは言ってくれた。


「ありがとう。ヘラも鍛えて強くなってるとはいえそれでも危険なことには変わりないからファウストも一緒に行ってもらうからそこは安心して欲しい。

 それならあいつを除く他の人達にはこのことを伝えるから準備ができるまで待ってて!」


「わかった!」


 そういいヘラは部屋へと戻った。




 俺は早速牢屋へと戻り先程の内容を村のヤツらへと伝えた。もちろんダンジョンの細かな事情については話すつもりは無い。


 すると牢屋の奴らは思ったのとは違う反応をした。


「本当か!攻めてきた俺らを解放してくれるだけじゃなくて村の発展まで考えてくれてるなんて。貴方はなんて器がでかいんだ。村に戻ったらなんとしてでも村長を説得するぜ!なぁお前ら!」


「「「当たり前だ。」」」


「感謝こそすれ恨無なんてする訳ない!」


 と何故か評価が上がっている。


 村にしてみればどちらにせよ村の活気が良くなればいいわけであって、攻めた相手からこうな好条件が出されたということなら受け入れて当たり前ということなのだろう。


 とにかく捕虜からも好印象なのはいいことなのは間違いない。

 この状態が続いているうちに村に行ってもらいたいためヘラとファウストに早めに出るように伝えないとな。


 ――――――――――――――――――――


 少し話を調整していたため、あと数話ほど一章が続きます。最後まで楽しんでいただけるよう頑張っているのでどうか星一でも評価をしてくれるとモチベにも繋がりますのでお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る