血を継ぐんじゃない。想いをつなぎ、この地を護る。

主人公の藤崎は、前任店で目覚ましい活躍を見せました。
もちろん銀行員ですから目標金額を達成し、代々滞っていた業務を一気に解消したのです。

どうやってか。
……怪異を解消して。
(ちなみに本作、ホラーですが銀行モノでもあります。そこもとても面白い!
だって怪異が振り込みしたりするんですよ⁉ 入店していないのに、振り込みがある。さあ、どうやって解決します⁉)

その活躍ぶりと恐ろしいその地については、前作の『櫻岾奇譚』をご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/16818093073043113886

その前任店での功績を見込み、栄転だと言われて次なる赴任地を命じられる。
それは北海道の果てにある猫魔岬。

「栄転⁉ これが⁉」
と言いたくなるほど過疎が進み、かつ店舗は妙な巻貝型。

無数の鳥居が連なるいわくありげな神社に、お化け屋敷然とした民宿。海にはなにやらおかしな影まで見えて……。

赴任地がまた忌み地。
もう、作者様がつけられているこのキャッチコピーどおりの展開がこの先に待っています。

この作品。
土地にまつわる怪異です。

日本は災害が多いものの住むことのできる土地も狭いので、どうしても「災害が来ちゃった。じゃあここを離れて安全なほかの場所に」というわけにはいきません。

人知を超えたなにかが起こったとしても、それをなだめ、奉り、供物を捧げて「もう二度とこのようなことがないようにお願いします」と祈るしかなかった時代がありました。

その思いはいまでも各地にさまざまな形で残っていると思います。
それを連綿と伝えてきたのは、「血族」ではなく、「人の想い」。

先祖が子孫へ。
先住の人間が、のちにここに住む人たちのことを思って続けてきたのではないでしょうか。

今作、後半からのたたみかける展開が秀逸。目が離せません。
ホラー好きな方は、ぜひこの方の作品をご一読ください。


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