第17話で、映えって何?
「さて、どうしようか。何かいいアイデアはないかな?」
一通り開店準備を終え、開店まであと20分というとことで、大地さんが2階からノートと筆記用具を持って降りてきた。
「そうはいっても、すぐには、、、というか、開店まであと20分しかないですけど時間足りなくないですか?」
「それはそうだけど、どんなものが良いか、アイデアを出すくらいはできると思ってね。どうだろうか」
「まあ、営業中にはできないですもんね。でも、新メニューか、、、」
「たしかさくらさん、『映えな新メニューを作ってうちの店に興味を持ってもらう』とおっしゃっていましたよね、、、」
常陽さんはそう言って、自分の胸ポケットからメモ帳を取り出し、何かを書き始めた。
「というか、結局、『映え』って何なんでしょうね」
この話、結局「映え」が何かわからないと先に進まない気がする。
「派手とか、インパクトがあるとかなのかな?今までそういうメニューは出してこなかったから、言われてみると、案外難しいね」
そうして、俺と大地さんが二人で悩んでいると、常陽さんが口を開いた。
「特に映えとは何かとか、気にしなくていいと思いますよ。要はSNSで目立てばなんでもいいんですよ。多分」
「そういうものかなあ、、、」
確かに、常陽さんの言う通りな気がする。
結局、そもそも映えという言葉自体、何か深い意味が込められているわけではないだろうし。
「何か流行ったるものとか、そういうのでいいんじゃないですか?」
常陽さんが言った。
「ううん、、、」
そうは言っても、100年前から来た俺は、この時代に流行ってるものとか、よく知らない。
俺が頭を悩ませていると、大地さんが言った。
「確か、、、アサイーなんとかみたいなやつ無かったっけ?あれって、映えとは違うの?」
「?なんですかそれ」
聞いたことない。と言うかそもそも俺からして100年前の時代の流行とか知らない。
「果物でしたっけ?あれ」
常陽さんは知っているふうだった。
「料理名じゃないの?」
「多分大地さんが言ってるのは料理名だと思いますけどね。アサイーボウルっていう。アサイーは果物の名前ですよ」
「ああそうそう。それだよ」
「美容にいいとかで女性受けはしそうですけど、映えですかね?あれ」
大地さんと常陽さんの間で話が進んでいるが、俺は未だに見た目の想像さえつかない。
「まあ、もうすぐ店を開ける時間だし、いったんさくらに聞いてみよう。桜木くんはそれでどうかな?」
「い、いいんじゃないですかね」
こうして、映えな新メニュー開発(案)会議は一旦幕を下ろした、、、
● ● ● ●
「だめです」
「ええー、、、」
その日の夕方。学校から帰ってきたさくらさんに新メニュー案の話をすると、すぐに拒否された。
「だって新しくないよそれ。もう17年くらい売ってるよ日本でも」
新しくないと駄目とは言われてなかったと思うんだけど、、、
「ちなみにさくらさん的には何かあるの?」
俺が聞くと、さくらさんは堂々と言った。
「ない!」
それは即答だった。
とにかく、また考え直さないといけないようだ。
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