その2(未完成)
亜人族の少女(2)
亜人族。それは他のどの種族とも違う異様な存在である。亜人族の生まれは他の種族から突然生まれてくると言われている。人族や耳長族などから突如として生まれ、時には龍や動物などからも生まれ、人型を成すという。
亜人族の最大の特徴は穢れを持って生まれる事である。身体には赤黒いアザや角を持っており、穢れにより精霊が見えず、魔法を扱えない。しかし莫大な魔力量を持つという。
牙獣族は獣の亜人族の末裔といわれており、魔法も使えない。
ーーーー亜人族の文献より。
*
山岳地帯の方までやってきました。
ここら辺では鉱龍という宝石のような龍がいると通りすがりの旅人から聞きました。私は宝石龍とか鉱龍なんておとぎ話の架空の生き物だと思っていたので、少し衝撃です。
鉱龍というのは、火山のマグマから生まれる龍だと本で読んだことがあります。鱗の一枚一枚が色鮮やかな宝石で出来ていて、心臓には強力な魔力が宿っている、そんな夢のような生物であると。
私は少し、いやとても楽しみにしていました。実際会うのは危険なのですが、一度でもお目にかかりたい。山道は少し辛いですが、私は元気に歩きました。
「シルヴィア、大丈夫か?」
「ううん、大丈夫!早く次の街に行こうよ」
「無理だけはするなよ。なんなら私がおんぶしてもいい」
「そんなに子供じゃないもん」
「す、すまない」
*
その街は随分と熱い街でした。汗と男と土の匂いが蔓延としてただでさえ暑いのに気が狂いそうになります。
通行人のほとんどがツルハシや加工用のハンマーを持ち歩いていて、みな技術者の様です。石造りの家を作っていたり、鍛冶場で剣を叩いていたりしています。ある意味一番では活発な街と言ってもかもしれません。
市場には魔石や魔力のこもった武器など、普通の街ではなかなかお目にかかれない物が見られました。こっそりハイドにサプライズプレゼントとして買ってみようかとも思いましたが、値札を見て財布を閉じました。
すると市場のおばさんが私を笑います。
「お嬢さん旅のもんだろう?」
「む、わかるんです?」
「まぁね。ここに来る奴なんざ出稼ぎに来た貧乏人ばかりだからね。そういう奴は大体ムキムキの筋肉ダルマばかりさ」
「男の人が多いですもんね」
「女も筋肉ダルマさ」
「あはは......」
「こんなこの世の終わりみたいな所に何しに来たのかい?金稼ぎじゃあないんだろう?」
「言うなれば観光です。鉱龍を一眼みたいので来たのですが、ご存じありませんか?」
「鉱龍目当てにこんな所に来たのかい?珍しい旅人もいるもんだ。ま、鉱龍なんぞ炭鉱夫でもしてれば見慣れるもんさ。ま、頑張りなさいな」
「はい、ありがとうございます」
「でも、嬢ちゃんもできれば鍛えた方がいいよ。筋肉は裏切らないからね」
「えへへ、遠慮しておきます」
そのまま私たちは宿も取らず、一日中街を見て回っていました。気付けば汗だらけで服もベトベトしてきます。
そんな私は素晴らしい物を見つけました。
「ハイド、温泉だって!」
「すまないが、温泉に行くなら私は外で待っている」
「あ、そっか」
ハイドは人前で甲冑を脱げないのを思い出します。私は彼の甲冑を取った素顔をよく見るので忘れがちです。
「じゃあ、私だけで入ってくるね」
*
銭湯なんていつぶりでしょうか。冷たい川で水浴びを思えば温泉なんて天国そのものでしょう。私は最高にワクワクしています。
脱衣所にベトベトする衣服を置いて、私はお風呂に入ります。随分と広い風呂場だというのに人影ひとつ見えません。広い風呂場を独り占め。なんだか自由になった気分です。
「・・・。」
誰もいないというのは子供心をくすぐられると言いますか、とある衝動に駆られるものです。ハイドに私は子供じゃないなんて言っておきながら、やはり私はその稚拙な考えに抗えませんでした。
私はすいーと水面を泳ぎました。
ええ、恥ずかしいですとも。けれど誰もいないならしたくなるというでしょう。それに誰もみないなら恥ずかしい事にはなりません。
「・・・誰か来る前にやめとこ」
このスリルも楽しいものです。
そう、いつ誰が入ってくるか分からないドキドキ感。これもまた醍醐味だと思います。
「何言っとるんじゃおぬし」
「ッ!?」
誰もいないと思っていた浴槽、湯気に隠れて人がいました。
「顔真っ赤にしおって。ま、その気持ち分からんでもないけどな!」
ガハハと大笑いする少女は、少しだけ異質でした。まず彼女の皮膚には岩のような鱗のような物が節々に生えています。そして瞳は本物の翠色の宝石で出来ていました。
「も、あんまり体ジロジロ見られるとワシも恥ずかしいんじゃが」
「ご、ごめんなさい!」
「ま!ワシも珍しいからの。見知らぬ者からの視線を向けられるもんじゃからの。よいよい」
「は、はぁ」
少女は立ち上がり、仁王立ちで腕を組みながら言い放つ。
「ワシの名前は“セラフィ”!!鉱龍の亜人族じゃ!!」
「亜人族!?」
「珍しいか!」
「は、初めて見ました」
セラフィはそうかそうかとまた大笑いをしました。私は彼女にすごく惹かれました。ただでさえ鉱龍を目当てにこの街に来たというのに、その亜人族というのはこの世界を探しても片手で数えられるほどでしょう。
何という嬉しい誤算。
「あの、亜人族というのは本当にその体の宝石も本物なんでしょうか」
「むむむ。そ、そうじゃが・・・何じゃ?」
セラフィは胸を抱いて怪訝な顔をしました。
「そ、その触ってみても?」
「まぁ、いいんじゃが。どうしてじゃ」
「好奇心です!」
そういうと彼女はおずおず私に腕を差し出しました。ゴツゴツとした岩の鱗に浮き出る綺麗な翡翠石。
「くれぐれも鱗を剥がすでないぞ」
「そ、そんな事しませんよ」
こんな珍しいものをむしり取るなんてもったいない。私は結局腕だけに止まらず、亜人族の少女の全身をしゃぶる勢いで触り弄り尽くした。
「お主、本当に好奇心なのか?」
「うん?」
「いや、何でもないじゃ」
「別にただの好奇心ですよ?他に他意はありませんから!」
そんないやらしい考えなんて私は持っていません!
「そ、そうか。でもそろそろ風呂も混む頃じゃからの。私は御先にお暇させてもらおうかの」
「じゃあ・・・私も」
風呂上がり。
私は牛乳瓶を2本買いました。一本をセラフィにプレゼントします。今日のお礼、いやもしかしたら謝罪の品かも知れません。
「これ、今日はありがとうございました」
「おう。お主が満足ならワシも満足じゃ」
2人で乾杯をして頂きます。
やはり風呂上がりの一杯は格別です。
「お主、とても珍しい旅人じゃの」
「そ、そうでしょうか?」
「ワシを見てそんな目をする人は早々いないものじゃが」
「?」
「まぁ、いいんじゃ。お主には関係のない話じゃからの」
彼女は上機嫌でした。少しだけ悪い事をしてしまったかなとも思っていましたが、そうでもないようです。
「旅人さん、これから行くあてはあるのか?」
「いえ、これから宿を探す予定ですけど」
「そうか!ならウチに泊まっていくと良い!部屋は開いとるからの!」
「い、良いんですか?」
「よいよい!お主とは仲良くできそうだしの!」
ガハハと大笑いをしたセラフィは牛乳を一気飲みしていました。
*
セラフィに案内されて街を歩く。
先程彼女をハイドに紹介したら、彼はとても驚いた。
「・・・また、随分と奇怪な出会いをしたものだな」
「やっぱりハイドでも亜人族は珍しいものなの?」
「もちろんだ。俺の生涯でも亜人族の人間なんて片指で数えられる程だ」
不老不死で数百年生きている彼がいう。本当に彼女は特別な存在らしい。
「おい!そんなにグダグダ歩いておるとおいていくぞ」
「ご、ごめんなさい!」
飽きた!w
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