第18話 4つの「軸」
4月後半。この時期になったとき、環境論文を読んでまとめる。と2人1組みになってプランターで野菜を育てるということが始まった。そしてそれらのことについても例にもれずプレゼン資料の作成と発表をすることになる。
環境論文について正確なことを言えば「書く為に必要な本などをまとめる」という感じになるのだけれど、そもそも「何のために書くか」という理由も知らない。しかもその発表内容は見たことも聞いたことも無い内容だった。
私はそこであるものと初めて出会うことになった。
それが「シュタイナー教育」というものである。
内容を聞いていていると「なるほど、そういうのがあるんだ」という感想が出てくるのと同時に、そこで「気質」について知ることになる。
気質とは古代ギリシアから始まったひとつの〝概念〟のようなもの。「人の傾向、性質、資質、性格」は胆汁質、多血質、粘液質、憂鬱質の4つのうちどれかに該当するという物である。
最も重要なのは「人はこれらの気質を4つ全て持っている」ということで、例えば自分が多血質の傾向があるとしても、時期や年齢、今日起きたことによって粘液質が出ることもあるし、憂鬱質が出ることもある。
簡潔に言うのであれば、気質という概念は自分を含めた〝人〟を見るための歴史的根拠のある1つの物差しである。と言える。
そしてこれら4つある気質はそれぞれ「色」に当てはめることもできる。
ということを聞いた時、あることに気が付く。
「塾の最初にやってるやつじゃないか?これ」
そう、今日の気分の色を4つの色から選んで名前を書き、その理由も発表するというやつ。疲れている時は有る色を選び、楽しい時は違う色を選んでいた。
これ以外にもこの発表で「行動の科学」「カール・ロジャーズ」「デール・カーネギー」という言葉と存在をこの時に初めて知ることになるが、そこまで興味は示さなかった。
しかし、この発表を見て私は特にシュタイナー教育とか気質の方にやや興味が沸いた。それはなぜかと言われれば多分、今まで塾をやってきた中で一番疑問だった部分にしっくりくる内容だったから。「今日の気分で色を選び、その色で名前を書いてみよう」とか、やっていたアンケートの設問とか。
塾でやっていた良く分からない物がこの発表を聞いて「あーなんか、そうか」という気持ちになった感じ。
きっと塾には私の知らない何かあるのだろう。と思うか、そんなの言われても大学の研究とか自分の卒業とかの方が大事だからそっちだけやりたい。と思うかの2つがあって、当然この時点で同期もうっすらと2つに分かれていた。行かない人も出つつある中、私がそれでも「何かあるかも」という風に思った理由は先にも言った「塾でやっていることと、4つの軸のことが繋がるのかも」ということと、それ以上に院生の姿が大きかった。
院生は修士課程だと2年間。私の代の時は2年生が4人、1年生が3人居た。すなわち森田研的に言えば9期生と10期生の院生が居ることになる。
そこで思ったことがあって「この院生の人たちもこれやったんでしょ?」というシンプルな事。けれどこれが私にとって非常に大事だった。要するに本当に森田塾に何もないなら院生がわざわざ塾なんかやらないし、それに研究室に残ろうともしないだろう。という考えである。
・・・という所まで何となくわかったのだけれど、それ以上に分からないことが増えたのも確かではある。けれど、4つの軸があるということだけは分かった。それでこれをどうすればいいのか、ということに関してはまだ私は何も出来ることが無かった。
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