第17話
「よし、班分けは決まったな」
四つのグループに分かれたのを見て、グディは頷いた。
ジコウはこれから何があるんだろう、というワクワク感とどんな強敵が待ち伏せているのかという若干の恐怖心が混ざりあった複雑な心境を抱いていた。
下級モンスターのゴブリンはもちろん、見上げるほど大きなドラゴンや強大な力を持つ魔王とも戦ってきた。しかしそれよりも強い存在となると、想像も出来ない。
興奮するのを押さえつけ、グディの言葉に耳を澄ます。
「つぎ、Cグループだが……ソード・ポメルガードが担当してくれ」
「ああ、分かった」
ソードが自分たちの前に歩み出た。マントがひらり、と舞う。左腰に下げている奇妙な形の剣がソードの武器なのだろう。
「先ほども言ったが、俺の戦い方はあまり参考にはならない。『敵』がどのような強さなのか、自分はどれぐらい強くならなければならないのか、その指針として見て欲しい」
そこまで言って、ジコウの後ろ側で手が上がった。
「はい!」
「何だ?質問か?答えられるものなら答えよう」
「はい、ソード……先輩は、何度も『自分の戦いは参考にならない』と発言していました。その理由はなんですか?」
「あー……それはだな……」
困ったようにくるくると癖毛になった栗毛の短髪を
掻く。
「俺の戦い方は魔法を使わない剣一本なんだ。だがそのやり方がな。ちょっと地面割ったり強固なシールドを破壊したり物の内部だけを斬りつけたり幽霊などの実体のないものを斬ったり……そんな感じなんだ。取り敢えず俺が斬れると思ったら何でも斬れる。
アッドからは『お前のやり方は誰も真似できないから人に教えようとか変な考えはやめてくれ』とも釘を刺されている。これが参考にならないと言った理由だ。
……試しにやったら出来たんだし他の人も出来ると思うんだがなぁ」
いや出来ないだろ、と皆の感情が一つになった。
物の内部だけを斬る?実体のないものさえも斬ってしまう?そんな非常識があり得るのだろうか、とまで考えて今この場にいること自体が非常識だと思い至った。ならばそんなことがあっても不思議ではないのだろう、と無理矢理納得した。
と、そこでくいくい、と腕を引っ張られる。
振り向くと、先程話しかけてきた少女がこちらを見ていた。
「なんだ?」
「あたしよ。ネール・ビガンテ。……ネールでいいわ。ねぇ、今の話本当なの?何でも斬って見せるって……ホラ話じゃないの?」
「そうか?俺はそうとは思わない」
「どうしてよ」
またもや伏せた上目遣いでじっとりと見てくるのを、半笑いで受け流しながらつづけた。
「だって最初に出会った人が世界そのものの時間停止やポータルを開くなどの非常識をやってのけたんだ。幽霊を斬るぐらい、あり得ない事もないだろう」
「あんた本当に馬鹿なくらい人を信じるのね。それで前の世界で痛い目見たんでしょうに」
「はは、それは確かにな。けど、それでも俺は人を信じず、ましてや裏切るような真似はしたくない。この信念だけは手放したくないんだ。
……ネールも少しは人を信用した方がいいと思うぞ」
「あんた人の過去も知らないでよくぬけぬけとそんなことが言えるわね……本当に馬鹿だわ」
そう言って服の裾から手を離し、後ろに下がっていくネール。どうも人と話すことは苦手らしいな、とジコウは思う。あの暗くて皮肉屋な性格も何かがあってなったものなのだろう。
いずれにせよ、今は自分にはどうする事も出来ない。そのまま前を向いて、自分達の順番を待った。
数分ぐらいして、まだか、という焦燥感が現れ始めた頃。
「ソード・ポメルガード組!入っていいぞ!」
「分かった」
ソードがポータルへ進むのと同時に、ぞろぞろとついていくグループのメンバー。不安や期待でざわざわとしながら歩く。
ポータルの前へ着くとソードはそこで止まり、此方を振り向いた。
「言われたかもしれないがここからは危険な領域だ。いくら見学用のバリアが貼ってあるとはいえ、油断はしないように」
そう言い、ソードはポータルの中へ入っていった。ジコウやネールなどの新入りも入っていく。
最後の一人が入った後、ホームにはグディ一人しか残らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます