第16話
奇妙な部屋を出て、辿り着いたのは何の変哲もない焦茶色のドア。ADGP-0235と掘り込まれている部分が唯一の特徴だろうか。
「この先、何があるか分からないからな。あと何が起こるかも分からない。気合いを入れていけ」
そう言ってドアを開け、全員で中に入っていった。
中は暗闇だった。いや、黒い空間しか見えないと言った方が正しいだろう。最初は戸惑ったが、ここに立っていても邪魔になるだけだと思い、勇気を出して踏み込んだ。
そうして最後の一人が入った直後────パッと、周りが明るくなった。
「驚いたか?」
その問いには賛同せざるを得ず、こくこくと頷いた。
アンティーク調の壁で包まれた空間はとても広く、今の倍の人数が入っても余裕があるだろう。中にはソファーがあり、その前には横になった短い棚に黒い板が載っている。
他にも談笑用の机と椅子や、食堂で見たジュースの出る機械と使い捨ての紙コップとゴミ箱がが置いてあったり、他にも色々と充実していていっそここに住めそうではないかと考えてしまう程だった。
だがそんな中に異質な存在があった。ここから見た真正面に、金属で形作られた洞窟のような入り口があり、水色の空気でできた渦(空気に色などあるはずがないがそうとしか言いようがない)が渦巻いている。
それをじっと見ていると、グディの豪快な笑い声が聞こえた。
「わっはっは、驚くのも無理はない。
あれは『常時発動型ポータル』。あそこから他の世界へ行くわけだ。
ちなみに今いるここは『ホーム』と呼ばれているぞ。」
言い終えたあと、おもむろに自身の右腕に装着してある装置を確認した。
「さて、そろそろ来るはずなんだが……」
その瞬間、ドアが蹴破る勢いで開け放たれた。
「す、すまない!朝食のあと刀の手入れをしていたらつい夢中になって……時間は大丈夫か?誰も勝手にポータルに入ったりしてないよな?」
「慌てすぎだっつの。まだ集合時間から五分しか経ってないんだぜ?先生も待ってるって」
「本当だよ、慌てすぎ。あとその何かに集中したら周りが見えなくなる癖、一旦直さない?」
「ちょ……ま……三人とも……足早すぎ……」
やってきたのは男四人組。一見顔は整っているが普通の人に見える黒髪の少年、一番乗りでドアを開け放った天然パーマの少年、背が低い上に顔立ちも幼く、一見十三ぐらいにしか見えない少年、一人だけぜえぜえ言っている煌びやかな服を着た青年だった。
「おお、ついたか。それでは自己紹介をしてくれ。ついでにこの世界の状態についても頼む」
「ついでって……まぁいいや」
ゴホン、と咳払いをし、普通っぽそうな少年が前に出る。
「俺はアッド。この四人のリーダーみたいなものをしている。得意武器は剣だ。できるだけ参考になるような戦い方が出来るように努力する」
「ソード・ポメルガードだ。普段は滝行をやったり瞑想をしている。俺のやり方はあんまり参考にならないと思うが……まぁよろしく頼む」
「アオイだよー。得意なのは水の魔法!堕落した神だろうが『敵』だろうが全員溺れ死なせるからよろしくね!
……えーと、リュカ、喋れる?」
「しゃ、喋れるよ……何とか息も整ってきたし……」
煌びやかな服を着た青年が深呼吸をし、姿勢を正して此方を見る。
「リュカ・マニュメントだよぉ。あんまり戦いは得意じゃないんだけど、先輩として頑張るからよろしくねぇ」
猫撫で声でにっこり笑うリュカ。その笑みは友好的なものではなく、どこか距離を感じさせるようなものだった、
「それとえーと……この世界の状態だっけ?今この世界は四つの『敵』によって脅かされている。どうも魔法文化が他より進んでるのが気に入ったらしいな。そこで神として君臨し、信者を通して自分のやりたいようにやるのが目的らしい。今は冷戦状態だがな。俺たちはそれを止める戦闘部隊だ」
そうアッドは言い終え、少しだけ後ろに下がった。
「うむ、ありがとう。それでは班分けを始める。三十二人いるから……八人のグループにすれば問題ないな」
そして、グディの指導の元班分けが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます