第12話

「まず最初に聞いておく。我々管理者のやることはスカウトの連中たちから軽く聞いたな?」


 その言葉に全員が頷く。不老不死になり、世界の為に尽くす。それは間違いなく聞いた。そしてその使命を果たす為、ここにいる。


「よし。では改めて説明と行こう」


 グディは黒板に向かい、白いチョークを持った。

そして黒板に『仕事とは』と書かれる。


「まず我々がやらねばならない事。世界の相手をすると言っても想像がつかないものも多いだろう。例えば……そうだな」


『仕事とは』の下に文字が書かれる。


「現地住民が倒せず、尚且つそのままだと世界の環境そのものに多大な悪影響を及ぼすエネミーの討伐。これが新入りには一番多い仕事となるな。

この時点で既に普通の魔王や邪神とは段違いの強さとなる。……まぁ実際に相手するのは俺と模擬戦をして勝った時からだろうがな」


 自身が戦った魔王よりも強い相手。それを聞いて背中に何かが這い上る感覚を覚える。それが驚きか恐怖か、はたまた強敵を前にした興奮か、ジコウには分からなかった。


「そして……次!これが最も大切、尚且つ一番数が多い仕事だ」


 チョークを白から赤に持ち替えて、強調するように書き出す。


「世界そのものを手に入れて自分の思い通りの箱庭にしようとする、または世界を破壊しようとする『敵』!他に呼び名も上がらなかったので我々は『敵』と呼んでいる。形もさまざまだぞ、触手の群れだったり一見可憐な女神だったり目玉が大量にある悍ましい怪物の姿だったり……女神のように一見無害そうに見えても中身は言葉に出来ないぐらい邪悪だからな。基本『敵』は自分の事しか考えていない」

「また、我々は知りうる限りの神と契約関係を結んでいる。つまり世界が危機に陥って、尚且つそれを解決するための策を自分では用意できない時に此方を頼りにくるというわけだ」


 そこで一息付き、改めてチョークを握る。


「さて、ここまでは普通のヒーローのような感じだったな?だが我々は……あくまで『世界』を守るのが仕事だ。つまり場合によっては……」


 深呼吸をし、静かな声で告げる。


「魔族や人外、そして人間を殺してまわって減らす必要も出てくる」


 朝食以来の二度目のショック。そしてその言葉に、レレの言っていた事が脳裏に浮かんだ。


『平和って言うのはね、善の心だけで手に入れられる物じゃないんだ』

「っ……」


 本当にそうなのか?疑問が生じる。何か、皆が手を取り合って仲良く暮らせる方法はないのか?そんな考えがぐるぐる頭を回る。そんな事はない、みんなが手を取り合える世界を作れるはずだ、と脳内で言い返そうとしてもその言葉に怯んでしまう。


「罪もない者たちを虐殺するのは無理、という者も多いだろう。だがな、そうしなければもっと大きな被害が出るのだ。それこそ神に選ばれたという建前で大臣の傀儡になる王が出てきたり、全てを殺して回る魔王が現れたりなどな。

大をとって小を捨てる。これが俺たちのやり方だ。

……まぁ、お前たちの言いたいこともわかる。そんな事非情すぎると。それでも世界の安寧のためには、それしかないんだ」


 そこでチョークを起き、グディは此方側に向き直った。


「さて、仕事の方については粗方説明したな?次は我々の魔法についてだ」

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