第19話  マークと僕の浪漫飛行

 マーク・エロイーズが強く望むので、僕たちは風の精霊のセネガルドの作った風の絨毯に乗って、リリエンハイムの『ランス村』跡地に行ってみることになった。


<ここは、魔王を倒したマークが、山を開拓して作った村だった>


 今では、新しい街ができて沢山の人が暮らしていた。千年も前の事ならもう大昔だ。当たり前だ。


「確か魔族に襲われた村は、魔法使いが出向いて浄化の儀式をするんでしたね」


 と、僕は、光の神殿で知り得たことを言ってしまう。


「今は、魔法使いはいねぇのか?」


 マークが俺の顔を見て言った。


「君ほど、精霊を簡単に従わせてる人は見たことがありません。今は、魔法使いも地位が高くないので……」


 マークは複雑そうに鼻を掻いている。嬉しい時とか照れてる時の癖みたいだ。


<次は何処へ行くんだ? マーク>


 大将が、マークへと声をかける。


「カザーラ公国に頼む。もう一度、生まれた所を見ておきたい」


「もう、帰れないような言い方をしますね?」


「帰れないじゃなくて、帰らないのさ」


 マーク・エロイーズは僕にウインクをしてきた。


「思い出したよ!! 俺は、最期に平和な時代に生まれてぇって言ったんだ!! は、叶えてくれたんだな」


 あいつってのことだよねぇ……この場合……


 どうやらマーク・エロイーズは、清楚なエロイーズの方がなりを潜めることで一致してるみたいだ。

 マークってやつが、前世で魔王もやっつける程の勇者で、癖の強い人格だったためか、清楚なエロイーズは、完全に出て来ない。


 魔王をやっつけて、自分も闇落ちして魔王になったというマーク。

 光の神殿に帰ったら、彼女を知るためにも少し調べておこうと思った。



 やがてカザーラ公国北方、ミズーリ地方に到着した。


 見渡す限りの麦畑だった。

 大きな貯水池が、あちこちに点在して、この地方は水の心配はない訳だ。

 あるとすれば、水害? 後で視て見るか……。


「ここの領地は親父の祖先が銀の森を立ち退く時に貰ったんだと」


「マーク、エロイーズの記憶もあるのですか?」


「お嬢は、眠ってる。ただお嬢の生きてきた15年間は俺にも共有されてら」


 お嬢って、マークは本当にエロイーズの名前が嫌いみたいだな。

 可愛いのに。

 と、僕がニヤニヤしながら、マークの話を聞いてたら、思い切り頬をつねられた。


「痛いよ~~」


「変なところで、気持ち悪い笑い方をしてるからだ!!」


「誤解だ!! マーク。君はとても可愛い!! 聖女様かもしれないくらいだ!!」


「聖女!?」


 マーク・エロイーズの顔色が変わった。 

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