第8話新たな気付き

意識が鮮明な分、自分が成長していく過程は面白かった。

あんなに上手く動かなかった体が思い通りに動くようになっていき、


もっと多くの言葉を覚える為、家にあった本で基礎的な語学を勉強したりしていたら、いつの間にか両親がなにを言っているかさえ充分理解出来るようになり、呂律も良く回り喋れるようにもなった。


それだけじゃなく、家の中にあった鏡を見つけた時、私ははしゃいでしまったわ。

どんな容姿をしているか期待と不安が入り混じる中、鏡を覗き込むとそこに映ったのは…

流石はあの容姿端麗な二人の子だけのことはある。


前世の私にも引けを取らない。っと言うか、何故か前世の私に似ている気がする。

まだ幼いから将来どうなるかわからないけど、コレは一体どうゆうことなのだろう?


とにかくエセルとアヴェント、あの二人には感謝の気持ちしかない。


これで私…勝てる。


ただ、それらとは別に最近納得出来ないことが一つだけある。


それは、私が未熟ながらも喋れるようになってから、両親が私の歌を聞くたび体調を崩すようになったこと…


崩すっと言ってもそんな酷い状態じゃなくって、ただ…ちょっと具合が悪いって感じで…


何故、原因が私の歌なのかと気づいたのかと言うと、終始、私が歌っている最中に体調を崩すからだ…


それに、歌声を聴かせなくすると徐々に体調が回復してゆく様が見てとれたから、原因は私以外に考えられない…


これには動揺を隠しきれなかった。


なにせ、前世ではこんなこと一度もなかったから…あっても家族から五月蝿いと注意されたくらいだ。


この不思議な世界に来たことによる、呪いだったらどうしようかと不安が過ぎる。


だからか、私はいつの間にか家の中では歌の練習はしなくなっていた。

場所を替え、家の裏庭の奥でひっそりと歌の練習に励んだ。

そこは自然豊かでひと気も少なく、これ以上好条件な場所もないし、外で練習した方が気持ちも良いしね。


替わりに、家の中ではダンスの練習をよくするようになった。


前世で覚えた色々なアイドルの先輩方のダンス。

こちらは歌とは違い、二人共よく喜んでくれて可愛いいとか、見たコトのない踊りだとかよく褒めてくれた。


これだけ喜んでくれるから私も踊り甲斐があったし、なによりも楽しく、そんな日々が続いたある日。

いつも通りにダンスを練習していたら、今ではよく感じるようになっていた、体の中で突如生まれる、あの温かいナニカが踊っている時にも体の隅々へと行き渡るのを感じるようになった。


この感覚が来てからは以前に比べても体が軽くなったと言うか、疲れにくくなったと言うか体の質が変わったかのような?


なんにせよ、これは練習による自身の成長を実感させ、私はこの温かいナニカが体中に浸透する感覚が徐々に好きになっていった。


きっとなにかが大きく変わった気がする。


その考えが正しいと証明するかのように、最近の私のダンスを見た両親が以前にも増して元気になってるようで、特に夜な夜な…


いや…やっぱり止めておこう。


アイドルの卵がこんな話…ただ、弟か妹ができる日はそう遠くないかも知れない。

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