第41話 いつものダメなコト


 灘さんと無事仲直り出来た一日目が終わって、それからあっという間に二日目も半分終えて、すっかり夕方になった。


 今は二日目の野外授業の班行動を終えて、自分達の部屋で体験レポートを書いているところだ。


「よし! 終わった! いやぁ、今日は沢登り楽しかったなぁ〜〜。マコくんは書き終わった??」


「僕まだ書き終えてない……あとちょっと」


「そっか、じゃあ書き終わるまで待つ! 終わったらご飯炊くやつのとこ行こうぜ!」


「う、うん」


 なんて会話をしながら、僕も今日あったことを思い出しながら書く。


 湯川くんが言った通り、沢登りは楽しかったなぁ。

 川の中にカニとか魚とかたくさん居て、それ獲る体験も楽しかった。

 あと、暑い中川に入るのがすごく気持ちよかった。

 今からは確か飯盒炊飯? っていうご飯炊くやつとカレー作るやつだったよね?

 今日もう疲れたからお腹空いたし、早く食べたいなぁ。

 あと外でご飯作るの結構楽しみだ。


 そうして僕も書き終えると、湯川くんの肩をタップして、僕達は外の広場に向かった。


 ーーーーー


 広場に来ると、既にキャンプファイヤーで使う木が真ん中に組まれていて、そこから少し離れたところにあるレンガのかまどの上で、みんな料理をしていた。


 班ごとにレンガのかまどが4つぐらいあって、そこに火をつけて、ご飯とカレーを作っていて、良い匂いが外に充満している。


 そして、よく見ると既に灘さんと相田さんが来ていて、食材を切っていた。

 灘さんも僕達を見つけて、手を振ってくる。


「あ、マコトくん達こっち! 先生が食材をみんな切り終わったら料理の説明するから呼んでって言ってた!」


「そう、だからとりあえず、ここにあるじゃがいもとかにんじんとかを切り終わったら私に教えて! 班長が先生かガイドさんを呼びに行くから!」


「う、うん。わかった!」


「お、おう!」


 こうして僕と湯川くんも、野菜の皮を剥いて切り始めた。

 

 普段から家で、お母さん達帰ってくる遅い日は自分で料理することも多いからか、手慣れた手つきで食材を切っていると、横から視線を感じた。


「マコくんめっちゃ切るの早いじゃん!! 料理出来るん!?」


「え、ホントだ!! しかも全部切り方綺麗!!」


「そ、そうかな? いつも家でやってるだけだけど……」


 湯川くんと相田さんが、僕の切った食材を見て驚いていると、灘さんもこっちにやってくる。


「なになに? うわ、ホントだ、めちゃくちゃ綺麗! あたしと同じぐらい上手!!」


「あ、ありがとう……って、え! 灘さんのやつにんじん星とかハートになってる! すごい!」


「えへへ、ちょっと凝りたくて」


「なこちゃんはこういうところまで優等生だからずるいよね〜〜。私料理教室通ってても上手く切れないのに……」


 なんてやりとりをしてると、僕の肩が叩かれる。


「マコくんその、俺も上手く切りたいから切り方教えてほしい!! あと、時間なさそうだから手伝ってほしい!!」


「あ、うん。僕もお腹空いたし、パパッと作ろ!」


「お、おう! まかしとけ!! よ、よろしく」


 そうして、僕達の班もささっと食材の準備を整えて、ご飯を研いで、先生を呼びに行った。


 そして、ご飯を炊きながらカレーを作って、あっという間に夕食の時間になった。


「じゃあ開けるよ? みんないい?」


「「「うん」」」


 相田さんが合図して、レンガのかまどで炊いた飯盒の蓋を開ける。

 すると、そこにはツヤツヤとしたふっくらと炊き上がったお米が湯気を出している。


「うわぁ、美味しそう」


「早く食べよ! 早く!」


「うんうん! 雄太! そこのお皿取って! 私よそうから!」


「お、おう! はい! めちゃくちゃ美味しそう……」


 皆それぞれにテンションが高くなりつつ、お皿にご飯を乗せて、カレーをたっぷりとかける。

 焚き火の光に当てられてるからか、普段食べるカレーよりもすごく美味しそうに見える。


 みんなにカレーが行き届くと、そのままレンガのかまど横のテーブルに座って、手を合わせる。


「はい、じゃあみんないっせーの、いただきます〜! うわぁ、美味しそう!! んまぁ!!」


 相田さんの挨拶に合わせて、みんな挨拶をしたあと、カレーを食べ出す。


 僕も一口すくって食べてみる。

 すると、口の中いっぱいに、甘さとスパイシーな味が広がってく。


「美味ぁ!!」


「うん、美味しい……」


 湯川くんの声が隣から響いてきて、僕も思わず声に出してしまう。

 前を見ると、灘さんもニコニコしながらものすごい速さで食べてる。


「うまぁ、るみちゃんこれホントに美味しいねぇ! まだ残ってる??」


「まだルーもご飯もあると思うよ! って、なこちゃんもう食べ終わってる!?」


「えへへ、美味しくてつい」


 なんてやりとりをして、僕達は楽しい夕食の時間を過ごした。


 食べ終わると、ちょうどキャンプファイヤーの時間になって、組まれてた木に火がブワッと着いた。


 メラメラ燃える火が幻想的で、綺麗だった。


 そしてその炎に見惚れていると、急に灘さんが立ち上がって、相田さんも連れてどこかに行ってしまった。

 

 不思議に思いながら、湯川くんと話していると、灘さんがフラッといつの間にか居て、相田さんも戻ってて、なんだったんだろうと思った。

 

 ーーーーー


 こうして二日目の予定も無事終わり、お風呂に入り、消灯の時間になり、僕も布団に入った。

 廊下の方が凄く静かな気がする。


「マコくん今日は楽しかったよな!」


「う、うん。カレーも美味しかった」


「だよな! まさかマコくんがあんなに料理出来るなんて思ってなかった」


「僕はその、夜一人でご飯作って食べることも多いから、それで慣れてるだけだよ」


「そっかぁ。なんかすごいなぁ。俺は母ちゃんに作ってもらってるから、今日も全然できなかったし」


 なんて会話をしながら、天井を見て話す。

 暗い中、友達? とこうやって話すの憧れてたからなんだか嬉しい。


 そう思って寝返りを打った瞬間に、ドアの方からガチャッという音がする。


(え、なになに? 怖い。先生かな? 怒られるようなことしたかな……)


 横の湯川くんも、ガサガサっと音を立てて、布団に潜り込むのが見える。


 そしてドアから廊下の光が部屋に差し込むと、そこから影が入ってきて、ドアが閉まる。


 そこから段々と足音が迫ってきて、僕の枕元まで来て、バッと布団を捲られる。


「二人ともシーー。ふふっ、マコトくん、今からダメなコトをするよ!」


 そう灘さんがいつもの悪戯顔で言うのが見える。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る