第4話 1965年(昭和40年)4月2日 買い物デート
「彩花、今日は外に出掛けたいんだ。準備をお願いできるかな?」
「かしこまりました、お坊ちゃま。どちらに行かれるご予定ですか?」
「大学生になるし色々買い物をしたくてね」
「蔵井か四菱あたりから外商をお呼びしましょうか?」
「いや、大学生になるし外部生もいるだろう?せっかくだし店頭で買い物をしたいんだけど」
「承知いたしました。車を前に用意しましょう」
爺やの運転で彩花と一緒に古き良き街を巡ると、過去の記憶が鮮明に蘇ってくる。空を見上げると高層ビルがないせいか空が広く感じ、窓を開けると排ガスとドブの匂いが強烈に感じられた。道という道には旧車ばかりが走り、なんだか不思議な気分に包まれる。
「この頃は路面電車がまだ東京でも走っていて、なんだかおかしく感じるな。まあ、これも数年で撤去されるのだけど。」
「そうでしょうか?平年通りかと思いますが」
そうだった。昔はもっと寒かったんだ。地球寒冷化なんていうのも叫ばれていた時代だった。
「そんなもんか…彩花は何か欲しいものとかないかい?」
「お坊ちゃまが健やかに過ごされていれば十分です」
「それは困ったな(苦笑)」
書店での買い物
この当時最大の書店である潮善日本橋店に到着すると、響はすぐに夢中になった。経営資料の山を前にして、必要な本を次々に選んでいった。
「この本も、その本も全部頼むよ」
彩花は困惑した表情で、「こんなに買われてどうされたんですか?」と尋ねた。
「まあ、それもそうか」と響は微笑んで答え、購入した本を車に運び込んだ。彼らはその後、古い喫茶店で一息つくことにした。
喫茶店での一息
喫茶店の中は、古風なインテリアとレコードの音が流れる落ち着いた空間だった。響は席に座り、窓の外を見ながら昔の記憶を辿った。彩花はそっとコーヒーを持ってきて、響の前に置いた。
「坊ちゃま、ここはお気に入りの場所でしたね。よくお母様と一緒にいらっしゃっていました。」
「そうだね。あの頃のことをよく覚えているよ。懐かしいな。」響は微笑みながら答えた。
新たな決意
二人はしばらく昔話を楽しんだ後、再び車に乗り込み、次の目的地に向かった。響はこの新たな人生でどのように未来を変えるべきか、頭の中で計画を練り始めていた。彼は今度こそ、家族と松殿家の名誉を守り、国と社会に貢献する決意を新たにしたのだった。
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