第4話

直也は今田家を後にし、自宅に戻る途中、母の手帳を再度確認していた。

手帳の最後のページには、1994年の事件についての詳細な記述が記されていた。その内容は彼の心に重くのしかかり、母の過去と家族の秘密が明らかにされるようだった。


「母さん、こんなことを抱えていたんだな…」

直也は深く息を吐き、手帳を閉じた。彼は決意を新たにし、自宅に戻る足を速めた。


自宅に到着すると、玄関の前に見慣れない二人組が立っているのが見えた。香織と涼介だった。


「田中直也さんですね?」香織が声をかけた。


直也は一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。

「はい、そうです。何かご用でしょうか?」


涼介が一歩前に出て、

「三田村・藤田探偵事務所の者です。役所からあなたとお母さんの捜索依頼を受けていました」

と説明した。


「捜索依頼…?」直也は驚きの表情を浮かべた。


「はい、ここ数日間、あなたとお母さんの行方が分からないとのことで、依頼を受けたんです」

と香織が続けた。


直也は一瞬の沈黙の後、

「そうですか、ご心配おかけしてすみません。実は…」と言いかけて、母の殺害について話すのをためらった。

代わりに、「母は亡くなりました。でも、今はそのことについては話せません」とだけ言った。


香織と涼介は驚きの表情を浮かべたが、すぐに真剣な表情に変わった。

「お母様のこと、お悔やみ申し上げます」

と香織が静かに言った。


「ありがとうございます。でも、今は1994年の事件について調べています。それが母の手帳に記されていたんです」と直也は手帳を差し出した。


涼介が手帳を受け取り、ページをめくりながら内容を確認した。「これは…かなり重要な情報が書かれていますね」と彼は呟いた。


「はい、母が生前に抱えていた秘密です。それを明らかにするために、あなたたちの助けが必要です」と直也は真剣な眼差しで言った。


香織は直也の目を見つめ、

「もちろん協力します。これからどうするつもりですか?」と尋ねた。


「まずは手帳に書かれている内容を基に、1994年の事件の真相を明らかにしたいです。そのためには、さらに調査が必要です」と直也は答えた。


涼介は手帳を閉じて、

「私たちも全力でサポートします。手帳に書かれている内容を徹底的に調べてみましょう」と言った。


直也は感謝の意を込めて、

「ありがとうございます。皆さんの協力があれば、母の願いを叶えることができると思います」

と頭を下げた。


「では、早速調査を始めましょう。まずは手帳に書かれている人物や場所を洗い出して、次の手がかりを見つけましょう」と香織が提案した。


涼介も同意し、

「そうですね。一つ一つ手がかりを追っていけば、必ず真相に辿り着けるはずです」と力強く言った。


こうして、香織と涼介は直也と共に、1994年の事件の真相を追求するために動き出した。静かな住宅街に響く時計の音が、彼らの決意を一層強めるかのように感じられた。


---


直也が手帳を香織たちに見せ、再び今田家に向かうことを決意している頃、京子は今田家の地下室に戻っていた。彼女は直也が手帳に気づき、再び自宅に戻る前にもう一度訪ねてくることを予感していた。地下室には、彼女が長年隠してきた1994年の事件に関するさらなる証拠があった。


京子は焦りを感じながら、直也の動きを監視するための手配を進めた。彼女の心には、自分が関わった過去の秘密が暴かれる恐怖と、それを阻止するための決意が入り混じっていた。


「直也がもう一度戻ってきたら、すべて終わらせなければならない…」京子は自分に言い聞かせた。


彼女は過去の罪を隠し通すために、そして家族を守るために、再び冷酷な行動に出る準備を整え始めた。その一方で、香織と涼介は直也を守り、真実を明らかにするために全力で動き続ける。


次の訪問が、すべてを決定づける運命の日となることを誰もが予感していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る