第2話

三田村・藤田探偵事務所に、陽射しが差し込む午後の静かな時間だった。香織はデスクに向かい、書類の整理をしていた。涼介は窓辺でコーヒーを飲みながら、外の景色を眺めていた。突然、ドアが控えめにノックされた。


「どうぞ」と香織が応えると、役所の職員が緊張した面持ちで入ってきた。彼は中年の男性で、疲れた表情を浮かべていた。


「こんにちは、三田村さん、藤田さん。突然お邪魔して申し訳ありません」

と職員は言い、深々と頭を下げた。


「こんにちは。どうぞおかけください」

と香織が椅子を勧めた。


職員は椅子に腰を下ろし、資料を取り出しながら話し始めた。

「実は、田中直也さんとその母親、美代子さんが行方不明になっているのです。田中さんは母親の介護をしていたのですが、最近姿を見かけなくなりました。ご近所の方々も心配しています。」


涼介が眉をひそめ、

「どのくらい前から行方不明なのですか?」

と尋ねた。


「およそ一週間前からです。近隣の住民が異変に気付き、役所に連絡を寄せました。私たちも訪問しましたが、応答がなく、中の様子も荒れているようです。」


香織は資料を一瞥し、

「何か手がかりになるようなものはありますか?」と尋ねた。


職員は困惑した表情を浮かべながら、

「実は、これを見つけました」

と言って、一枚の手紙を差し出した。それは美代子が残したもので、手紙の内容には深い後悔と愛情が込められていた。


手紙を受け取った香織は、その内容を読み上げた。「…里美への懺悔… 経済的な理由から娘の里美を養子に出したこと… そのことに対する深い後悔と愛情が記されている。」


涼介は手紙に見入った。

「これは直也さんの行動の手がかりになるかもしれませんね。」


職員は深く息をつき、

「お願いです。この親子を見つけてください。私たちにはもう手がかりがありません。」


香織と涼介は顔を見合わせ、同時に頷いた。

「私たちに任せてください。田中親子を必ず見つけ出します」

と香織が力強く言った。


職員は安堵の表情を浮かべ、

「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」

と頭を下げて事務所を後にした。


職員が去った後、香織は手紙を手に取り、

「この手紙の内容から直也さんの行動の手がかりを探し出しましょう。まずは彼らの自宅を訪ねてみましょう」と提案した。


涼介は同意し、「早速、行ってみよう」と立ち上がった。


こうして、三田村香織と藤田涼介は田中親子の捜索を開始することとなった。彼らは手紙の内容を手がかりに、田中親子の行方を追うための新たな一歩を踏み出した。

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