第16話ページ31.32 梅ロール新発売

ルは健三の予想以上に好評だった。土曜の午前中に八本のロールケーキを作ったが、お昼過ぎに完売。午後からも六本を作ったが夕方までに完売した。最初は物珍しさもあって、購入してくれる方が多いのが、洋菓子業界の

常で、最初に良く売れて自然消滅が新商品には良くある。新商品でその後も好調に販売を続け今も人気なのはパイシュークリームと和栗をたっぷり使った和栗のモンブラン。タルト台に刻みマロン入りのクリームを乗せ、和栗を使ったクリームをタルト台が隠れるほど絞った人気の定番商品だ。最初は秋限定で売り出したが、お客様からの問い合わせが多いので定番レギュラー商品になった。紀州梅ロールも定番になって欲しいと願いながらロールケーキを巻いた。

 前日の仕込みでロール生地を前日の二倍仕込んで、日曜日の午前に十六本の紀州梅ロールを作った。これで午後二時に健三が抜けても、則子とアルバイトの海老名さんは嫌な顔をしないだろうと考えた健三の思惑は甘かった。午前中から紀州梅ロールの売れ行きが良すぎて、お昼前までに十本売れた。売り切れを避けたい健三は、一本千五百円のロールを四分割し、一切れ四百円にした。これで六本を4分割の二十四カットの紀州梅ロールが出来た。時間は二時過ぎ、急いで健三は着替えてうららを出た。

「誠君、美里ちゃんお待たせ。仕事が重なっちゃって遅くなってごめん」

「こちらこそ忙しいのに来ていただいてありがとうございます。美里も僕も、権田さんが居るので安心してます」

「権田さん、今日はお仕事の時間に来ていただいてありがとうございます。これが文房具のセットです。森山さんが千円で買ってくれました」

 新品のように見えるペンケース、ボールペン、エンピツ等が詰めあわされていた。健三には千円が高いのか安いのか判別しかねた。

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