第13話 ページ25.26 梅ロール完成!ネーミングは・・・

ね。ヨーグルト風味を感じさせて、奥底に梅の存在感が見え隠れするのが気に入った」

 健三の試作品を滅多に褒める事がない則子が、試作一回目で高評価をくれたことに健三は喜んだ。

「あとは名前なんだよね。梅ロールって聞いても食欲と購買意欲を掻き立てる名前じゃないよな。良い名前を母さんが考えてよ」

夕食後に新商品のネーミング会議が始まった。健三も則子もネーミングの大事さは心得ている。数年前にもフルーツをたっぷり乗せたタルトを、七夕前だったので小さい星型チョコを乗せ⦅きらきらフルーツタルト⦆で販売したが、いまいち売れなかった。七月七日を過ぎ⦅フツーツたっぷりタルト⦆に名前を変更するだけで人気商品になった。

「梅なのでプラムロールはどう?」

 健三が言うと、

「プラモデルみたいでダメ」

 即座に却下。スマホで梅を調べると梅には別名春告草(はるつげぐさ)、匂草(においぐさ)と書かれている。春告ロールも何を使ったロールケーキなのかピンと来ない。

「梅ってバラ科なんだって。知ってた?」

 スマホを見ながら則子に伝えると

「そうなんだ。だからってバラロールでもないよね。そのまま梅をどこかに入れた名前が良いんじゃない?」

 梅ペーストのパッケージを見ながら健三は和歌山の梅使用と書いている文言が目に留まった。梅の生産は和歌山県がダントツで全国一位。

「和歌山、和歌山梅、和歌山、梅、和歌山」

 念仏のように独り言を言いながら

「紀州だ。和歌山は紀州だ。紀州梅ロールでどう?」

「響きは悪くないね。紀州は何となく和歌山と結びつくね。そこに梅の文字を入れる事で分かりやすい。和歌山の人には悪いけど少し田舎臭い名前でもあるけど」

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