相反する感情のお話

 小さなぼっちゃんは激しいカンシャクを起こすことがあります。要するに怒ってるんです。もしこの状態のぼっちゃんに近づこうものなら例え仲良しのメイドちゃんでも無事ではすみませんよ。引っ叩いたり、モノを投げられたり、髪の毛は引っ張ったりされます。特に髪を引っ張るのはメイドちゃんたちが本気で止めて欲しいと思っているぼっちゃんの悪癖のひとつです。


 でもなぜぼっちゃんはなぜ怒っているのでしょう。それは祭ちゃんに嘘をつかれてしまったからです。ほんとうは遊びに連れて行ってもらえるはずだったのに、急に仕事で行けなくなってしまったのです。ぼっちゃんは祭ちゃんのことが世界でいちばん大好きですから、怒ってしまうのは無理からぬことですよ。


 それもこれも全部戦の神が悪いんです。戦の神は祭ちゃんの予言枠外にいますからね。行動に予測がつかないんですよ。多くの魔法師が殺されているから放っておくわけにもゆかず、おかげで祭ちゃんはぼっちゃんとの約束を破る羽目になってしまったのです。

 そんなときです。ぼっちゃんの元にあの女が現れました。


「ぼっちゃああぁぁんっ」


 そう、夏海ちゃんです。夏海ちゃんはぼっちゃんといちばん仲良しなメイドちゃんでした。このときの夏海ちゃんはぼっちゃん成分が不足してたらしく、いきなり大好き攻撃をしかけました。当然ぼっちゃんは引っ叩いてきましたけど、夏海ちゃんはぼっちゃんの攻撃を見切り、ぎゅっと抱きつきてしまいました。


「なんか怒ってる。でも可愛いわ」


 夏海ちゃんは犬を可愛がるようにぼっちゃんの顔を両手ですりすりします。ぼっちゃんは興奮したように目を開いたまま硬直しています。怒ってるんですよ。ただ大好き攻撃をされてるものだから、どうすればよいのやらわからなくなっているのです。とりあえずぎゅっとしました。これがただの反射ですけどね。ぼっちゃんには大好きされるとぎゅっとする回路作られているのです。


「ぼっちゃん好き好き好き好大好きぃ」


 夏海ちゃんは何度もぼっちゃんに頬ずりし、キスをして、モチモチのほっぺたをチュウチュウ吸い始めました。もう、食べたくなっちゃう可愛さなのです。そうこうされているうちに、ぼっちゃんは夏海ちゃんのことが大好きであることを思い出したようです。きゃっきゃと笑い始めました。

 夏海ちゃんは1流のぼっちゃん使いですよ。

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魔法師の国〜小さなぼっちゃんと可愛いメイドちゃん〜 @4310002024

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