ブサイクの時間

 夏美ちゃんは元々は田舎の娘です。子供の頃はそんなに可愛くありませんでした。でも町に出て、大きなお屋敷で働くようになり、お給金で髪やお化粧にお金を使うようになると見違えたようにきれいになりました。魔法の使えない普通の女の子ではありますが、巷では美少女疑惑が浮上しています。


 美少女研究に詳しいまにまにのマニ美教授も夏海ちゃんは美少女かもしれないと認めているほどです。でもわたしに言わせれば夏海ちゃんはやっぱり普通の女の子ですよ。


 その証拠に寝起きの夏海ちゃんはとてもブサイクです。髪はぼさっとしてるし、開いてるんだか閉じてるんだかわからないような目をしています。ちなみに眠ってるときもブサイクで、口をぽかんと半開きにして、とても見れた顔じゃありません。


 対して、家柄のよいモモちゃんはブサイクな瞬間なんてありません。その寝顔は子供のようにあどけなく、寝起きの微睡んだ顔なんて最高に可愛いんですから。


 夏海ちゃんはだいたい7時間から8時間は眠ります。つまり、1日の3分の1は眠っているわけです。寝てるときの夏海ちゃんはブサイクなのですから、夏海ちゃんは1日の3分の1はブサイクな顔をしている計算になります。これだけの時間ブサイクな女の子を美少女とは言えないでしょう。

 精々普通の女の子ですよ。


 ところで、ぼっちゃんはまたまた夏海ちゃんのベットで一緒に眠ってました。先に目を覚ましたぼっちゃんはひょいと夏海ちゃんの顔を覗きました。口をぽかんと開け、さしずめバカの極致のような顔をしてましたよ。でもぼっちゃんはそれを気にした様子もなく、夏海ちゃんにぎゅっと抱きつきました。

 小さなぼっちゃんはたとえブサイクであろうと夏海ちゃんのことが大好きなんですね。

 

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