第4章 頂きます
私の名前は 鳥沢 好雄(28)都内で務めるサラリーマンだ。
焼き鳥と、都市伝説が大好物である。
仕事帰りは決まって新橋の馴染みの焼き鳥やで一杯やるのがルーティンだった。
いつもの様に焼き鳥屋へ
店主『いらっしゃい!好しちゃん!いつもの?』
好雄『あ、は、はい!お願いします。』
店主『好しちゃん、面白い話しがあるんだよ。』
と、ワクワクした眼差しで好雄に話しかける。都市伝説好きの彼にもってこいの話しだった。
好雄『え?どんな話し?聞かせて聞かせて!』
好雄もすぐに食いついた。何でも小さいオジサンを捕獲したと言う人の話しだった。
好雄『本当⁉️すげ〜な。俺も詳しく本人から話が聞きたい!その人、今度いつ来るの?』
店主『好しちゃんの後ろの席にいるよ!』
店主に紹介してもらい早速話を聴く事になった。
その人は熊井と名乗った。何でも、突然風呂場から小さいオジサンが現れて、急いでスーパーの袋で被せ捕まえたのだと言う。
にわかには信じられない話しだ。
が、熊井さんの態度や喋りに詰まるところがない事から事実のように感じたが、実際この目で見るまではやはり、信じられない。
好雄『で、今も居るんですか?見せてもらう事って出来ますか?』
彼は二つ返事で勿論と言った。
今は大きな鳥かごに小さなベッドと食べ物と水を与えて飼育しているのだとか…
そして、遅い時間に起きるので見に来るなら夜中12時過ぎてから来てほしいと。
本当だろうか?
住所と、連絡先を交換し明日は仕事があるので週末に約束した。
かなり興奮する話しだった。
そして約束の日がやって来た。
住所の場所に着くと目の前には古めかしい団地が現れた。
好雄『Kの210号室か…あっ、あった。』
好雄は少し躊躇った。初対面だったし、しかも真夜中….
が、好奇心には勝てず思い切ってチャイムを押した。
少し間が空いてゆっくりとドアか空いた。
熊井『良く来てくれたね。さ、中に入って』
と中に案内された。室内は物が少なくガランとしている様子。
玄関入って右側にダイニングキッチンがあり、テーブルの上に大きな鳥かごが置かれていた。
胸が高まる。
好雄『あの鳥かごですか?』
熊井『そうだよ。もう起きるころだな。近くに行って見てみな』
鳥かごの側による。オモチャのベッドに、小さいオモチャの食器類には食べ物が入っている。
が、小さいオジサンなど、どこにも居ない。あーやっぱり嘘だったか…
この人もしかしたら、異常者かもしれない。そう思うと背筋が冷たくなった。
熊井『ほら、さっき起きたから目を擦ってるだろ?』
好雄『……… あ、あのー、何処ですか?私には見えないんですが…』
熊井『き、君!大丈夫?目の前にいるでしよ?ほら、私達に手をふっているじゃない。』
彼にうそを付いている素振りはないが、実際何もいないのである。それが余計に怖くなる。
隅々まで確認したがやはりいない。
熊井は、私がおかしいと言う。そして自分の奥さんを呼ぶと言った。
熊井『ゆり〜、ゆり〜ごめんよこんな遅くに。友人が小さいオジサン見に来たんだけど彼は見えないって言うんだ。おかしな話しだよな。
なぁ〜ゆり、ゆりにも見えてるよな。』
そう言うと、
熊井『ほら、うちの嫁も見えるって言っているじゃない!』
熊井『君は多分疲れているんだよ。まぁ、うちの嫁の手料理ご馳走するから食べてゆっくり休みなさい』
と言うと、私に箸を渡した。
熊井『ゆりの料理は世界一だな。さ、君も食べて!ゆり、頂きます』
私には小さいオジサンどころか、奥さんも、そして目の前にあるはずの料理さえ見えなかった… 完
頂きます 天野 みろく @miroku-amano2025
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