第10話 ランクBカルエVSランクAAAマルガレーテ

「このあたしを殴れるつもりか──!!?」


 マルガレーテはおそらく、以下のギアをつけている。原作通りならば。

『炎の槍』。先ほどの火炎放射器で炎を撒き散らしたときに使ったものだ。

『心の目』。全体的な視力が跳ね上がり、設定すれば相手を強調表示できる。

 そして、『煙火回避』。これは煙そのものになることで、相手の攻撃を交わすものだ。


 つまり、『煙火回避』があったから、マルガレーテは殴られるとも思っていなかった。もし殴られるとしたら、それはなんの改造も施されていない左腕だと考えていたのだろう。


 だが、カルエの手にした『無効化』は、改造してある右手でも効果がある。本来、身体の改造とギアは相容れないものだが、これは別枠だ。オルタナがラスボス候補だったのも納得してしまう。


「殴れると思ってるから距離詰めたんだろうが」


 カルエはヘルメットを投げ捨てる。返り血で染まった右手。壁にぶつかり、血反吐を吐き散らすマルガレーテ。誰がどう見ても、カルエが優勢だ。


「おお……、可愛い顔してるじゃねえか。それなのに、あんな凶悪な攻撃してくるんだもんな。この街はどうかしてるぜ」

「どうかしてるのは、アンタの硬すぎる皮膚だよ。全身改造してあるんだろ?」

「それを教えると思うか?」

「教えなくてって良いさ。どのみち、勝つのはおれだからな」


 カルエは息を大きく吐き、マルガレーテのギアや身体しんたい改造を加味した上での攻撃を仕掛ける。


(追撃しても、マルガレーテの硬すぎる身体改造の前じゃ意味がない。でも、マルガレーテは最後まで改造してない部位がある。そこを刺せば、必ず勝てる!!)


 ランク『AAA』である以上、ギアや身体改造は事実上し放題だ。だが、マルガレーテはこだわりで一部分だけ改造していない。であれば、そこを攻撃すれば良い。

 もちろん、四方八方から飛んでくる炎の渦をすべて無効化、あるいは避けなければならないが。


「さあ、炎のロックン・ロールだ! 馬鹿騒ぎはみんなでやらなきゃなぁ!!」


 カルエは地面を蹴り上げ、空に逃げ場をつくる。とはいえ現段階での改造では、脚に小型ブースターしかついていないので、ずっと高いところにいるのは不可能だ。

 なので、カルエは落ちられそうな地面を探す。


(あたり一面大火事だ……。車も誘発されてギアで起きた炎なのか分からない。これじゃ、無効化は使えないな)


 あくまでもギアで起きた現象を無効化できるのであって、副産的な現象は無効にできない。マルガレーテがそれをどこまで理解しているか。

 しかし、そんなことより、着地地点を探す必要がある。


(そういえば、ルキアはどこに逃げたんだ?)


 カルエは最前ルキアがいた場所を一瞥する。彼女は、ウィング・シティ特注の消火器を担ぎ、あたりに詰め寄ってくる炎を消火していた。


「そうか……、ここは消防署の近くなのか」


 ならば話は早い。カルエはルキアに大声で、「ルキア!! スプリンクラーで炎を消して!!」と指示する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る