第18話 ポ-ションを作ってみよう

 調合室に入って俺は何気なしにポーション瓶の並ぶ棚を見る。

「師匠、この瓶はどうやって作ってるの?」

「ん? こうだな。ポーション瓶、錬成」

 師匠が呟くと手の上に光が集まって、ぽんという音とともに、棚にある瓶と同じのが出てきた。

「はああ!?」

 思わず、師匠の手の上と、棚を何度も見比べた。

「調合のスキルを習得して、完全にポーションを錬成できるようになると生えるスキルだな」

 ファンタジーだよ!!

「材料とかいらないんだ」

 師匠は頷き、指でポーション瓶を摘まんで揺らす。

「ポーションを詰めて、保存する瓶だな。封をしているうちは中のポーションは劣化せず、中にあるポーションを使い果たすと消える、謎な瓶だ」

「えええ?」

「錬金術も神のギフトだからな。神業って奴さ」


 師匠、神業気に入ってるんだろうか。ますますファンタジーな世界だ。技術とかはスキルに置き換えられて、正解は神が教えてくれるんだろうか。

 それとも、努力した先のご褒美なのだろうか? よくわからないな。

 前世では才能は暗中模索で、努力も報われないことも多かったけど、この世界は才能が目に見えるから、迷わないのかも。でも好きなことと、できることは違うから、どうなのかな?

 俺はこうして、好きなことをやらせてもらっているけど、大きくなったらそうもいかないだろうな。


「この瓶で保存しないと劣化するから、この瓶は錬金術師のお小遣い稼ぎの一つさ。ポーションの値段の半分はこれの経費だ」

「そうなんだー」

 よくわからないなあ。ポーションていくらするんだろう。風邪薬くらいかな?

「そのうちわかるだろう。さ、薬草の処理を教えるぞ。一回で覚えるように」

「待って、待って、待って~!」

 俺はメモを用意した。


 ゴリゴリゴリ。

 乳鉢で、乾燥した薬草をすりつぶす。粉になるまで頑張れって言った。

 ちなみに錬金術師になると『粉砕』というスキルでいっぺんにできるそう。薬師にも発現するけど、出ない人もいるからスキルが発現するまで手作業で頑張るんだそうだ。

 がんばっても発現しない人もいるらしいけど。

 水車小屋でするのダメって聞いたら、繊細な薬草で、おおざっぱな磨り潰しはダメだって言われた。

 手が疲れてきた~集中力も低下中。

「もう少しだ。頑張れ」

 筋力を鍛える感じになるのかな? これ毎日やっていたら。


「よし、これくらいでいい。次はこれだ。この中をクリエイトウォーターで満たすんだ」

 土瓶にクリエイトウォーターで水を入れる。八分目くらいで止めた。

「この中にさっきの薬草を入れる。沸騰したら火を弱める」

 土瓶に粉になった薬草を入れると五徳のような台にそれを載せ、下にあるアルコールランプに火をともした。銅製で摘まみがついていて摘みで火を調整するみたい。

「これで半分まで煮詰めたら、終わりだ。だが、煮詰め方で、等級の差が出る。煮詰めすぎても、煮詰めが足りなくてもダメだ。火を落としたら劣化が始まるからすぐにポーション瓶に詰めろ」

 えええ?

「これは経験でわかるようになるし、わかるようになったらスキルが生える。頑張れ」

 じっと見てなきゃいけないってことだね。しかも、師匠は教えてくれないんだ。

 すうっとした香りが辺りに漂ってくる。

 ああ、まんまミントだ。

 香りが強まった頃、大体半分になっていた。そこで俺はカバーをかぶせて火を消した。


 用意されていたポーション瓶に注いでいく。不思議と粉は出なかった。

 最後の一滴を注ぐとポーション瓶が光って封がされた。光が収まるとポーション瓶の中が透けて液体が見えるようになった。何これ!?

「おお、ちゃんと緑だ。おめでとう。初級ポーションノーマルランクだ。初めてで失敗しないのは凄いな。才能あるぞ」

「ええ??」

 なんだ、この現象!?

「ポーション瓶の正規品は瓶にポーションを入れると等級によって液体の色が変わるんだ。透けて見える。鑑定もいらない。飲んで消えるしな。消えなかったら偽物なんだ。覚えておけよ」

「凄いなあ」

 ほんとファンタジーだよ!!


 ちなみに低ランクは黄緑、緑がノーマル、青緑が上級、青が最上級だって。怪我の治る程度が違うとか。青はハイポーションとほぼ同じだって。

 治験とか、ないんだろうなあ。神様によって品質保証されている感じがするもの。

 ガラス、前世と同じ方法で作れるのかな? 材料だって、似て非なるものなのかもしれないな。


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