第15話 誕生日プレゼント
「おめでとう」
「ありがとう」
今日は俺の誕生日。みんなからお祝いの言葉を受けた。賑やかだった屋敷も、ドワーフさんたちが帰ってから静かになった。忙しい中無理してきてくれたらしい。
師匠の依頼で。
リフォーム代、どうしたんだろう。修理代が出せないから放っとかれた離れなんだけど。
ちょっと気になるなあ。
「ルオ、おいで」
父が俺を呼んで抱きあげる。もう結構重いのに、よろけもしない。父の腕も胸板も硬くて筋肉でパンパンだった。抱き上げられたまま全員で移動。
出来上がったばかりの工房へやってきた。
「えええ??」
白く輝く素材の分からない真新しい外壁に排気管なのか煙突がある。建物の大きさや形状は変わってないが窓が新しくなっていて、小さくなっている。光っているので、金属製なのだろうか? オーニング窓風になっている!
「凄い!」
「まだまだだ。ルオ、ここに手を置け」
「手?」
言われるままに手を伸ばすと置いた板が光った。何か、模様が浮かんで消えた。
ま、魔法陣? え?
「これで、この工房には私とルオしか入れない」
にやっと不敵に笑う師匠。
「これはみんなからの誕生日プレゼントだ」
父が俺を揺さぶり、額にキスをしてから地面に降ろした。
「あ、あ、ありがとう! みんな大好き!」
俺はみんなに駆け寄って抱き着いた。
「ありゃーまだ扉も開けてないんだけどなあ」
大号泣大会になった工房前。落ち着くまで三十分は待たないといけなかった。
落ち着いた後、父とローワンは執務室に、母とイオとネリアはイオの部屋に向かった。
「師匠、ありがとう。なんかすごいの貰った」
「弟子が師匠の工房継ぐのは当たり前なんだが、俺の工房は王都にあるからな。難しいだろう? ああ、学校に行く間は俺の工房から通うといい」
師匠が扉のドアのレバーの側の四角い板に手を当てるとかちゃりと音がした。師匠が手をかけてレバーを下げてドアを開けた。
ええ!? 認証キー!? すっごい!
「驚いてるな? 魔力認証のカギだ。俺の稼ぎ頭だな。皆がこの技術を使う度に俺の口座にお金が入る。ルオもこういうの発明しろ。じゃないと研究費にかつかつになるぞ」
「はい!」
できるかー! ええ、師匠ってほんとにすごい人っぽいな!?
入ったところはエントランスホールになっているのか、ただの空間だった。目の前の一メートルほど先に扉が二つ。正面が応接室、右が二階と地階に向かう階段があった。
地階は耐火煉瓦が使われていて、空の棚が並んでいる。ちゃんと排気口があって、澱んだ空気にならないようになっていた。倉庫として使うらしい。
二階にはこれぞ、錬金術工房という道具が並んだ部屋が三つ。一つには錬金鍋が竈の上に設置されていて魔女の鍋に見えた。
一つに、長テーブルが壁際にあり、部屋の角に蒸気機関車の炉に似た暖炉が設置されている。真ん中に、銅製の蒸留器。
最後の部屋は薬草などを調合する器具が並べられていた。ポーション瓶があった。陶器のような、ガラスのような、何とも言えない瓶だった。
「三階は一応住居スペースがあるが入り浸ったら駄目だからな」
「はい」
「明日から、ポーションの調合をしよう。魔力を使わなくても初級は作れるからな」
「はい!!」
離れはそれなりに部屋数があって、二階の大きな部屋が空っぽだった。
「ここはルオの好きにすればいい。この工房はルオの工房だからな。だんだんルオの色に染めて行け」
「おー!」
俺はこぶしを突き上げた。さすがの師匠も吹きだした。顔を背けて肩を揺らしてる。もう、失礼だなあ。俺は好奇心の赴くまま、 あっちうろうろこっちうろうろした。二階に書庫もあった。
午後はいい天気だったので、薬草の採取をして、調合室に吊るして干した。
「うわードライフラワーみたい」
「ドライフラワー?」
「花束を干すと長持ち」
「なるほど。まあ、似たようなものだ。ああ、そろそろ生活魔法を教えることにした」
「魔法!?」
「クリエイトウォーターの魔法ができないと、中級以上のポーションができないからな。必要に迫られてだ」
「魔法、僕でも使える?」
「程度の差こそあれ、魔力があれば使える。ルオの魔力量は相当量あるはずだし、練習には問題がない」
「よかった~」
「ただし、危険行為は禁ずるからな。魔力はちゃんと制御する。気持ち悪くなったらすぐに申告だ。いいね?」
「はい!」
わくわくして眠れないと思っていたら、ラヴァにより強制的に寝落ちた。
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