赤ちゃん転生したら2人の英知な魔女に拾われました ~落ち込むと両側からサンドしてくれて乳のパワーまじ凄い、この膨らみに感謝してぼくは最強の魔道師をめざします!~
第9話 ねえ、スタンピードってなに!?
第9話 ねえ、スタンピードってなに!?
ギザギザのサメ歯から
やばい、やばい、声もいいっ。
「遠き日の慈母なる海より、死霊どもの声が聞こえる。
今宵辺り、スタンピードがあるかもしれぬ」
「すたん、ぷらりー?」
「スタンピードじゃ。
ラリーってどこから出た?
しっかりと覚えいっ」
ぽんっ
呆れた声と共に、ぼくはポンと背中を押された。
すると次の瞬間、ぼくは明るい外へ飛び出し石畳でたたらを踏む。
「おっとっとーっ!?」
振り返ればそこには、ぼくが初めに入った玄関があり、ぱっくりと暗い口を開けていた。
どうやら闇に包まれた結界から、解放してくれたらしい。
ぼくの見ている前でライムグリーンの扉がゆっくりと閉じていく。
ぱたん
ぼくはもう、その扉を開ける気にはなれない。
触りたくもない。
玄関先で待っていた、近隣の人たちがぼくに群がる。
「おい、どうしたナナオさんっ」
「顔が真っ青じゃぞ、大丈夫か!?」
ぼくはうつむき
「……駄目でした。家の方はもう死んでいます。
中には絶対に入らないで下さい。危険です。
このまま、教会の方々が来るのを待っていて下さい」
ぼくはそれだけ言うと、買い物カゴを預かってくれた男の人に礼を言って、その場を猛ダッシュで後にする。
下り坂の細い路地を、飛ぶように駆け下りていった。
買い物は途中だったけれど、もうそれは後回しっ。
「……スタンピードだとっ。
くそっ、スタンピードって何だ!?
でもすっごいヤバイ感じがするっ。
これは早く、お師さまに知らさねばっ」
*
「何て、言ったの?」
作業場で
辺りには怪しい紫煙が立ち込めていた。
「ごほげほっ、スタ、げへっ」
「ナナオ、何を言っているか全然分からないわ。
ここは喉に悪いから、外で話しましょ」
「がほげほっ、はいっ」
お師さまとフーリーさん、そしてぼくの3人は中庭のベンチに腰掛けた。
フーリーさんが持ってきた水を一気に飲み干すと、ぼくは先ほどの出来事を2人へ詳しく話して聞かせる。
一通り聞き終わって、お師さまが腕を組んだ。
「ナナオ、あなたが妖狐であり、元神使であることは知っているわ。
その実力も認めている。
けれど此処は、ナナオにとっては未知の世界。
ナナオの常識は通じない。
一人で入ったのは軽率な行為だわ」
「……ごめんなさい」
ぼくが素直にしょぼくれていると、お師さまが深いため息をつく。
「まあいいわ、無事でよかった。
それにしても、スタンピードねえ……」
「はい、スタンピードと言っていました。
お師さま、スタンピードって何ですか?」
「ナナオは知らないのね……じゃあ、フーリー」
お師さまは説明をフーリーに丸投げすると、ポケットから飴玉を取り出しカラコロと舐めだす。
フーリーさんが後を引き受けて、ぼくに話してくれた。
「真夜中に大きな音がすると、牛や馬などは驚いて、訳も分からず何処までも集団で走り続ける事がある。
これをスタンピードと言う。
これが転じて、魔獣や魔物などが集団で人里を襲うことも、そう呼ばれるようになった」
「魔物が集団で襲ってくるんですか!?」
お師さまは大いに
「しかしねえ……」カラコロ
「しかし何でしょうか?」
「いえ……いいの。
スタンピードの件は、私から教会に話すわ。
これでも修道院長ですからね。
教会から僧兵や
「それよりも、ナナオの会った女なのだけれど……
その女は本当に、
「え? はい、そう言ってましたけど」
「その言い回し、多分“リムマーメイドの魔女”だと思う」
「リムマーメイド?」
「陸に囚われた海の魔族。
自分たちの境遇を嘆き、呪いに呪ってガチガチに恨みで凝り固まった、神話級の種族なの。
ナナオはよくそんな魔女に会って生きて帰れたわね。
気に入られたのかしら?」
「は……はは」
ぼくはギザギザのサメ歯を思い出し、再び背筋が凍った。
尻尾が露骨に内側へ丸まってしまい、もう笑うしかない。きゅ~ん
「私は旧市街区の教会へ行ってくる。
フーリーとナナオは、色々と準備をしておいて。
スタンピードが本当なら、街はただではすまないから」
そう言ってお師さまは、
そしてこれがこの地へ転生し、ののほんと生きてきたぼくの初陣となるなんて――
ぜんぜん思わなかったよ、きゅ~ん。
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