第14話 史上最大の決戦(後篇)

 大方の予想通りに、国連は不服従を選択した。


 時間一杯までの協議が行われた結果だと、ニュースキャスターは言っていた。僕は、個人的にはそれが嘘であって欲しいと思う。戦いの場に臨んでいる、たった一人の地球人として。


 我が母星は、ためらうことなく彼女たちを信じたと……そう思いたいんだ。


 そうでないと、地球のために命を賭ける彼女たちに、申し訳ない。




 「艦隊右翼が引っ張られているぞ、釣られるな、距離を保て!」

 「ラジャ。右翼艦艇は巡洋艦メリドレルを中心に位置補正して下さい」


 ビームとミサイルが飛び交う。もう何隻もの艦が爆沈している。


 「敵の連動があまりにも見事です。これはひょっとすると」

 「そうか、人的不利を挽回するために」


 ササメユキさんとナミシマさんには何か、思い当たる節があるようだ。


 「司令、全方位での通信ジャミングを上申します」

 「ジャミングだと?この状況でか!?」

 「恐らく敵艦のほとんどは人工知能による操縦です。連携に、高密度の圧縮通信を利用していると推測されます。連中の使っているシステムが流出したものであるなら」


 身内に離反を望む者がいる。それは可能性として理解はしていても、現実にそうであると知ってしまうのは、つらい。

 前線で、実際に砲火の下で命のやりとりをしている身からすれば、味方後方のそんな動きは絶望でしかない。だから、どこから流出したものかまでは、言わない。


 「よし、以降五分間全周波でのジャミングを行う。各艦は現状を維持、アサルトアーマー隊は一旦帰還し補給をさせろ。敵の連携行動に変化がないか、行動パターンの採取も忘れるな!」


 ジャミング開始後、動きが乱れたように見えた敵艦隊だったが、すぐに持ち直す。被弾した艦をうまくカバーして延焼を防ぎ戦線を維持する。迎撃艦隊βの連動にも負けない、いい動きだ。


 「ジャミング効果、なかったかしら?」

 「……いや違う。不可視波長でのレーザー通信に切り替えている!司令!」


 手元の空中モニターを操作しながら、ササメユキさんが叫ぶ。


 「敵の使う操艦システムが流出したものであるとすれば、戦況は不利です!こちらの回避パターン、防御パターンは解析されている可能性が!」

 「恐らく後方の敵旗艦からコントロールが発信されていると思われます」

 「不可視波長のレーザー通信と言ったか」

 「はっ、ディジー・チェーンを基本とした、仮想モードによる通信網を形成しているものと」



 セフィアはにやりと笑う。とても綺麗で、とても邪悪な笑み。



 「ディジー・チェーンは網とは呼ばない。ジャミングは最大出力で継続、以降味方各艦への指示は光信号に固定する」

 「ラジャ。ジャミング最大出力にて継続します」

 「ラジャ。光信号による通信開始、各艦に伝達します」


 ディジー・チェーン。数珠繋ぎ。


 「敵艦の外観データから、レーザー通信機の場所を特定せよ」

 「データロード、特定完了」


 ぴっ、とメインスクリーンに敵大型艦の側面ワイヤー・フレーム図が表示される。変な形のブリッジ後方、四角いでっぱりに赤く着色が為される。


 「外観データによる直進レーザーの送受信優位性から、九十七パーセントの確率でこの部分にレーザー通信設備があると思われます」

 「現状の観測データからも、その部分かと」

 「ではそこが目標だ。全艦前進、まずは敵艦ブリッジ裏の目標を破壊せよ。補給が終わったものからアサルトアーマーも出せ!」

 「ラジャ」


 セフィアがその可愛い唇を舐めた。


 「いや、大丈夫ですよ」


 近寄って来たササメユキさんに僕は声をかける。


 「つまり敵はAIの指令で連携行動をしてる。そして通信の方法をこちらに変えさせられた。で、その通信の特性を利用するんでしょう?」

 「お判りになりますか」

 「そりゃあね」


 僕にだってそれくらい判る。


 昔の携帯型ゲーム機は、ゲーム機同士の通信に赤外線を使っていた。

 赤外線通信では基本的に一対一の通信しか出来なかったけれど、携帯機で対戦ゲームができるなんてとても驚いたし、面白かった。


 今の携帯型ゲーム機は赤外線ではなく、無線ネットワークのプロトコルを利用して通信をする。それは一対一を遥かに超えて一対多数、多数対多数のネットワークを構成する。


 本来一対一の高速通信をするために開発されたレーザー通信で、疑似的に送受信の相手を切り替えて通信網を作ろうとしても、そこにはやはりラグが生じてしまう。システムに余計な負担もかかる。ネットワークとしての柔軟性にも欠ける。それを解決するには同様のレーザー通信を複数チャンネル用意して、物理的に網を形成するのが手っ取り早いのだけれど。


 「ディジー・チェーンってことなら、つまりチャンネルを一つしか持っていない疑似網なら」


 そう、出来る限り短い時間にて接続相手を切り替え続けることで、疑似的なブロードキャスト環境を作る。それが単チャンネルでの疑似網だ。かつての三十二ビットプロセッサによる疑似マルチタスクと概念的には似ている。

 本来一つの仕事しかできないチップ上で、複数の命令を高速で切り替えてあたかも並列処理をしているかのように見せる技術。



 だがそんなものが、あらゆる局面で通用するとは限らない。



 「大容量レーザー通信網は、惑星間などの移動を想定しない局面でこそ有益です。でも戦艦は違う。絶え間なく移動を強いられ、臨機応変な行動が求められる場。見て下さい、あれを。敵艦同士が一定距離を保とうとしています」


 ササメユキさんの指し示す先では、確かに敵艦隊が整然と隊列を組み直し、格子状に整列を始めていた。


 「送受信の品質を上げようとしています。人間の操艦なら、あんなことはしません。戦の場であんな無様を晒すなどとは」


 そうだ。無線を使った指示なら、それほど送受信環境は考える必要がないけれど、不可視波長とは言っても直進性の高いレーザー通信は、どうしても場所を選ぶ。


 だから実戦経験の足りない人工知能は、確実なネットワークの確立を目指して、あのように不用意な操艦をしてしまう。ネットワークに繋がらない事にはどうにもならない、無人艦の弱点が露呈しているんだ。


 「……悲しい整列です。しかし、まさか味方の中に」

 「スパイが潜り込んだだけですよ。きっと」


 僕は答える。


 「根拠はないですけど。だって、信じたくないじゃないですか、そんなの。信じたくないことなら、まだ証拠もないのなら、とれあえず否定しておきまょうよ」

 「旦那さま……」

 「こらこら、なにちょっといい感じになってるのよ」


 にゅっ、と二人の間にセフィアが顔を出した。


 「うわっ!?」

 「たっ、大佐!?」


 セフィアは意地の悪い顔をして、右肘でササメユキさんの脇腹をぐりぐりする。


 「ふふん、どうよ。これが私の想い人。悪いけど、あげないんだから」

 「ふふ。大佐殿には敵いませんね」


 ササメユキさんは笑って自席に戻る。えっ、笑った?


 「敵艦の目標部分、破壊率三十パーセント。目標部を破壊された敵艦の行動が緩慢になっています」

 「通信を遮断された敵艦は、オートの防衛行動しか取れないはずだ。まずはレーザー通信設備の破壊を優先、次に砲塔だ。人間の操艦でないのなら、ブリッジ部分への攻撃は無意味だ」

 「ラジャ。光通信にて各艦に通告します」


 僕の隣で座布団に座り、指示を出すセフィア。ミサイルの爆発とビームの照り返しで、その横顔が美しく光る。


 「敵艦隊左翼の目標部分破壊完了、敵の反撃八十パーセント減!」

 「よし、左翼から切り込め。後方の敵艦隊は恐らく人間の操艦だ、手を出すな。まずはAI操艦と思われる艦艇から確実に沈めろ!」

 「ラジャ」



 戦力比三対一の、絶望的だった戦場図が徐々に塗り替えられていく。決して諦めない強さ。これが人の意思、人の想い……



 「被弾した艦は下がらせろ、航行不能になってからでは遅い。軽巡は無理に前へ出るな、陣形を維持しろ!」

 「ラジャ」

 「アサルトアーマーは一度戻せ、中央に向けてメルクリウス・レーザーを使う。補給艦を旗艦に」

 「ラジャ。前部ハッチ展開、メルクリウス・レーザー充填開始。射線上の艦艇及びアサルトアーマーは退避して下さい」

 「ラジャ。補給艦テライダは旗艦へ接舷の上、エネルギーの補給を開始して下さい」

 「右翼の破壊が遅いぞ、何をしている?」

 「はっ、右翼敵艦隊の一部は手動操艦の模様です。区別に手間取っています」

 「動きの違いくらい見てすぐに判断しろ!右前方三十度に援護射撃、一度距離を取らせろ!」

 「ラジャ、右前方三十度に主砲で援護射撃。艦隊右翼は敵艦と距離を置いて再攻撃して下さい」


 あちこちを良く見ているな、と感心する。エリシエさんも昔はこうして前線に立っていたのだろうか?


 「メルクリウス・レーザー、エネルギー充填完了しました」

 「よし、目標は前方、仰角三度で発射せよ」

 「ラジャ。仰角三度修正、メルクリウス・レーザー発射」


 旗艦の前方ハッチ内に設置されているメルクリウス・レーザー砲から白い光が迸る。レーザーそのものはさほど太くはないが、その圧縮された熱量で周囲の空間を一気に加熱融解し、破壊していく。たったの一射で、前方に布陣していた敵艦の陣に穴が開いた。。


 「敵艦二十三隻の撃沈を確認」

 「メルクリウス・レーザーの砲身融解。再射撃には砲身の交換が必要です」

 「砲身の交換はしておけ、前部ハッチは閉じろ。全艦前進、これより攻勢に移る。敵AI艦の撃滅急げ!」

 「ラジャ。前部ハッチ閉じます。砲身交換作業始めて下さい」

 「ラジャ。全艦微速前進、敵艦への攻撃を継続して下さい」


 敵艦隊は確実に崩れている。距離を詰める迎撃艦隊β。敵の反撃は散漫で、確かにオートの反撃行動でしかないように見えた。


 「彼我の戦力状況を知らせい」

 「敵艦隊損耗率五十パーセントを超えました。当方の残存兵力八十二パーセント」

 「それでもまだ敵が多数ですわね」


 ナミシマ参謀がため息をつく。


 「司令、艦隊を三分の一づつ補給させてはいかがでしょう。せめてエネルギー・ブレットだけでも」

 「いや、四分の一づつだ。まだ敵の数が十分に減ったとは言い難い。交代で順次エネルギーの補給を受けさせろ、敵AI艦撃滅までジャミングは継続だ」

 「了解です、ではそのように」

 「ラジャ。艦隊各艦は指示に従って順次補給を受けて下さい」

 「ミサイルも混ぜて援護射撃を続けろ。旗艦で戦線を支えるつもりでやれ!」

 「ラジャ。第一、第二の主砲はそれぞれ補給のために空いた空域に支援の射撃をして下さい」

 「ラジャ。前面ミサイルは主砲発射の十秒後に援護射撃願います」


 長期戦だ。ここまで敵の数が多いと、どうしても息切れが気になってくる。それでも敵からの攻撃がどんどん減っていく。レーザー通信の遮断が効果を上げているのだろう。


 「第一班の補給完了、戦線に復帰します。第二班は指定の位置まで後退して下さい」

 「敵艦隊、左翼が崩壊します」

 「左翼の部隊を中央に、中央の部隊の半数を右翼の援護に回せ!」

 「ラジャ。艦隊左翼担当は敵陣中央の攻撃に回って下さい。中央攻撃部隊から右翼への支援艦を選定しますので、指示があった艦艇は右翼の援護に入って下さい」


 戦況はまるで生き物のように目まぐるしくその姿を変える。ぎりっ、とセフィアが歯噛みする。


 「……補給は第二班完了で一時ストップだ。全艦微速後退、集中砲火にて敵残存艦を撃破する!」

 「司令?それは」

 「少し時間をかけ過ぎた。ここで仕掛けないと敵の反撃が始まる!敵艦弾薬庫と動力を狙え!メルクリウス・レーザーの砲身交換は進んでいるか!?」

 「砲身交換は終了しています。エネルギー充填完了まであとゼロゴ」

 「でかした!敵艦隊右翼に向けてメルクリウス・レーザー発射用意」

 「ラジャ。前面ハッチ解放、メルクリウス・レーザー発射準備に入れ。目標は敵艦隊右翼」


 でかした、と言っているということは、エネルギーの充填は命令に入っていなかったのだろう。わざわざ戦闘中にも関わらずダメになった砲身を交換したのだから、次を撃つことは確定事項だったのだ。


 「メルクリウス・レーザー撃て!」

 「ラジャ。メルクリウス・レーザー発射、目標は敵艦隊右翼」

 「第二班の補給完了、戦線に復帰します」

 「第二班を戦闘に敵陣へ突っ込め!全艦全速、一気に蹴散らせ!!」






 序盤の優勢は許したものの、中盤からの鮮やかな逆転で約三百隻の敵艦隊をことごとく打ち破り、そして月面に残る敵艦隊は約五十。


 「恐らくはあれがダグラモナスの残存艦隊、元々彼らに残されていた戦力ではないかと思われます」

 「だろうな。この戦いで連中は月面から動いていない。AI艦隊のデータ取りに徹したのか、徹さなければならない理由があったのか」


 ササメユキさんの言葉にセフィアが応える。

 と、庶務オペレータのクミリスタ軍曹が困惑の表情で偉い人シートのセフィアを見上げた。


 「司令、敵艦から通信が入っていますが、お出になりますか?」


 セフィアは悠然と答える。


 「メインスクリーンに出せ」


 みにょん、とホログラフのスクリーンが正面にでかでかと表示される。そこに映るのは、例の珍妙な顔面をした敵の元帥。


 「迎撃艦隊βの諸君……劣勢を跳ね除ける見事な戦いであった。敬意を表する」

 「それはどうもギブリール元帥。降伏の申し入れですか?」

 「ふふ、気の早いお嬢さんだ。確かに我が艦隊は被害甚大だ。だがまだ負けてはいない」

 「負けていないからこその降伏勧告です。ダグラモナスの名による不幸の連鎖は、もうここで断ち切りなさい」


 モニターに映る元帥は余裕の笑みを浮かべながらかぶりを振った。


 「こちらが不利な状況で頭を下げるのは、悪手だ。我々はまだ戦いの意思を失ってはおらん」

 「投降者の生命は保証します。武装解除を」

 「……貴官と戦えたことを誇りに思う。我はダグラモナス星雲軍元帥、地球攻略艦隊司令のギブリール・ガストラルである。貴官の名を教えられたし」

 「……宇宙連合軍、ミスティクス銀河方面軍迎撃艦隊β司令官セフィアリシス・メルテリアラウス・コムスククレス・マハリマ・デ・長戸大佐である」

 「……生ける伝説の上を行く、天才が相手だったとはな」


 感慨深げに言う敵元帥が、モニターの向こうですっと敬礼をする。セフィアも無言で敬礼を返す。


 「……だがここで牙を折るわけには行かない。我々は地球侵攻を一旦断念、この宙域より一時撤退する。願わくば、何処かの星の海の戦場で再び相まみえんことを」


 通信が切れ、月面上にいた敵艦隊が次々にワープで消えていく。


 「敵艦隊、ワープで離脱していきます。ワープ先の予測及び追跡は不可能です」

 「放っておけ」


 セフィアは偉い人シートの背もたれに深く体を預けながら、右手を顔の前でひらひらさせ【やれやれ】といった顔をする。



 「戦闘終了だ。生存者の捜索急げ、撃沈された艦の乗組員と、その他行方不明者をリストアップしろ」

 「ラジャ。戦後処理開始します」

 「リストが完成したら転送しろ、再生復活の依頼をかける。手早くな」

 「ラジャ」


 言ってセフィアは僕に手招きをする。慌ただしく動き始めたブリッジクルーたちを横目に、僕はひょいひょいと偉い人シートへ近寄った。


 「なんとか、守れたみたい」

 「すごかったよ。さすがだ」

 「えへへ、でもほんとくたびれた。こんな規模の戦いなんて久しぶりだったから」

 「三倍の敵に勝ったんだもの、疲れて当然だよ」


 くいっ、と頭を差し出すので、僕はセフィアの輝く銀髪をゆっくりと撫でた。


 「本当は今日で終わりにしたかったけど、そうもいかないみたい」

 「だな。あの敵もそうだし、見えない敵のほうも未解決だ」

 「再び相まみえんことを、とか言ってたけどもう出来れば会いたくないわ」

 「同感だ」


 撫でられるセフィアの耳がぴくぴく動く。ご機嫌の証拠だ。


 「早く帰ってご飯食べたい。カレー作ってよ、カレー」

 「勝利を祝ってカツカレーにでもしようか」

 「普通それって事前に食べない?」

 「そう言われればそうか」


 他愛もない会話で、張りつめていた緊張の糸が一つ一つ解れていく。

 だから僕は、ひとつ気がかりなことを訊いてみることにした。


 「……これから、どうするの?」

 「ん?」

 「だって、あいつら撤退しちゃったろ?……これから、この艦隊って、どうなるのかなって」


 僕の声は沈む。考えたくはないけれど、可能性としては……


 「なあに?帰って欲しいわけ?」

 「いや、そんなこと言ってないよ」

 「ほんとに?」

 「も、もちろん」


 出会った時は、こんな気持ちを抱くだなんて思ってもみなかった。こんな事を言うだなんて、想像もしていなかった。


 「……大丈夫だよ、レイジ」


 セフィアは僕の目を見て微笑む。


 「すべてが終わるまで、ずっといるよ。明けの明星になったりしない」

 「何の話だ」

 「……宇宙連合軍に迎撃艦隊がいくつもあるのはね、最後までちゃーんと務めを果たすためなんだ」

 「えっ、そんなに一杯あるの?」

 「連合政府に参画してる惑星政府ごとに三艦隊あって、参画してる惑星政府が百以上あるからざっと三百はあるよ。全部が全部前線に出てるわけじゃないけど。防衛対象にずっと駐留し続けてる艦隊も三十くらいはあったはず」


 想像を絶する数だった。宇宙ってすごいな……


 「そんなに……てかダグラモナスって節操なさ過ぎ?そんなにあちこち齧ってるのか」

 「二千年くらい前だと、撤退確認でこっちも兵を下げてたって話なんだけどね。予告なしの再アタックが常套手段になったから、用がなくなるまでは駐留することになったんだって」

 「用がなくなるって?」

 「つまり、その星が自分の力で身を守れるようになるか、その星の文明が滅ぶか。防衛対象としての資格を失ったら、いる理由もなくなる」


 そうか、木星の時もそんなことを言っていたな、と僕は今さら思い出す。


 「じゃあ、まだいるんだね」

 「もちろん!……それに、あたしはレイジの幼なじみでフィアンセで、義理の妹なんだから!ずーっとずーっと、一緒にいるんだよっ」

 「幼なじみは違うだろ」


 僕はあきれ顔で突っ込む。その設定は捨てたんじゃなかったのか。


 「んもー、ここはシヴい顔でそっと抱き寄せて。キスする流れじゃないの?」

 「そういうのは、ほら」


 僕は、こちらに向いているセフィアの頭を掴んでぐぐぐいっと正面やや下方に向ける。

 そこには、ブリッジクルー各員の期待と好奇心に満ち溢れた視線、視線、視線……


 一拍の間を空けて、セフィアの照れ混じりな怒声がブリッジに響いた。



 「モニターから目を離すなと何度も言っているだろう!」




 この先も、二人と地球には数々の苦難と試練が待ち受けています。

 それでもきっと、力を合わせて切り抜けていく事でしょう。


 といったところで、どっとはらい。






-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


 あとがき


 どっとはらいとか、とっぴんぱらりのぷうとか、好きなんですよ。これでおしまい、みんな幸せになりました。


 はい、というわけでハッピーエンドっぽく終われました。ダグラモナス星雲の艦隊は一旦、地球圏からいなくなりましたから平和です。

 さらなる黒幕とか謎事情とかを匂わせというかチラ見せしてるんですが、実は先の展開について全く考えておりません!いろいろ含みを入れて書くと、書いてる自分が面白いというだけの理由です。いいのかそれで……


 本当は気晴らしに一話だけぱぱっと書いて、それでおしまいにするつもりだったんですけれど。キャラクターがわりと勝手に動いてお話を作ってくれて、あまり悩まずにさくさく続きも書けました。書いている当人は実に楽しくやれてたのですが、楽しく読んでいただけたでしょうか?そこだけが気がかりです。


 セフィアはフィアンセのもじりです。最初はセフィアンにとようかと思ったのですが、バレバレ過ぎるのでンを外しました。あんまり変わってないですね。


 セフィアのお姉ちゃんは出したので、お父ちゃんかお母ちゃんが来る番外編も書きたいなと思っています。何にしてもセフィアの親なのでへっぽこのはずです。勘のいい方はもうお気づきかと思いますが、お父ちゃんとお母ちゃんの名前は某有名宇宙戦艦のお二人から頂いております。どうでもいい話ですね。



 これを書いている時点で、なんと120もPVを頂いております。有り難い事です。エンターテイメントが溢れているこの世界で、わざわざ読んで頂けることはなんと幸せなんでしょう。キャラクター一同に代わりまして、御礼申し上げます。


 また何かを思いついたら、続きなりおまけなりを書き足していきたいと思っています。作品時間内ではまだ高2の秋なので、色々イベントあるな、なんて。ご要望があれば、コメントなんか頂けると嬉しいです。



それでは!


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