Episode7 - C2&S
「よし、ある程度完成。インベントリの中でひとまとめに出来るのはありがたいなぁ」
大体20本程作り終わり、インベントリ内でスタックしたのを確認した後、試しに取り出してみると。
何やら割れたガラスの描かれた箱が出現した。
箱自体は小さく、片手ですっぽりと収まる程度の長方形。
まるでリアルで見る煙草の箱のようだ。
「まるで、っていうか煙草の箱なんだろうけど。どれ、1本試しに吸ってみようかな」
箱を開け、中に入っている『硝子の煙草』を1本取り出し口に咥える。
この時点では特に匂いは感じない。
しかしながら、これまで吸っていた物よりも物理的に重くなっているように感じた。
これも素材がガラスだった事に関係しているのだろうか?
そんなことを考えつつ、火を点け、一服。
すると、だ。
「うぇえ、くっさ!っていうか喉にガツンとくるなぁこれ!これが煙草でいう重いって奴?」
紫煙にしては黒く、それでいて何処か身体に悪そうな匂いが周囲に漂い始める。
元々ガラス自体が燃えないものであり、そもそも煙草の素材として適していない物だからだろうか。それとも、単純に私の【煙草製作】技術が低い故だろうか。
それに煙が酷く喉を刺激するような感覚がある。
イガイガとする、とでも言えばいいのだろうか。少なくとも心地のいい感覚ではないのは確かだろう。
考えられる原因は幾つかあるものの、とりあえず1本吸い切ると。
私の身体は淡い白色の光を一瞬放った。
それと共に視界の隅、STゲージの下に人の身体のようなアイコンが点滅しながら出現するのが目に見えた。
「あー、バフか。そういえば書いてあったね……それに、最初吸ってた煙草よりもSTの回復量は多い」
1割ほど回復したゲージを確認しつつ、私はそっと煙草の箱をインベントリ内へと戻した。
これからはこれを吸う事になるだろうが……早めに匂いの良い煙草を作りたいものだ。
「うん、作るといえば、だ。スキルの確認とかもやっとかないと」
煙草を作る上で使ったと思われる【煙草製作】のスキル。
そして私の行動によってラーニングした【投擲】のスキル。
この2つはちゃんと確認しておかねばならない。
それに加え、ガンマが言っていたスキルの取得なんかもしっかり確認しないといけない事柄だろう。
メニューを開き、自身の持っているスキルの一覧を表示させる。
すると、すぐに私の目の前に半透明なウィンドウが出現した。
「えぇっと?これが修得済みのスキル一覧。ちゃんと【煙草製作】と【投擲】が載ってるねぇ。……じゃあ次は、と」
それと共に、私はメニュー内で『ラーニング』と書かれている項目をタッチする。
「おぉ、すごい。こっちはキャラクリの時と同じメニュー表が出てくるんだ」
手の中に出現したメニュー表を開くと。
そこにはずらっと数多くのスキルの名前が並んでいた。
ここまではキャラクリ時のスキルラーニングと同じだ。しかしながら、今回は名称が白く選択可能となっているスキルと、灰色となって選択不可能となっているスキルの2種類が存在している。
試しに、選択不可能なスキルの中から強そうな名前の【疾風迅雷】をタッチしてみると。
【ラーニング不可能なスキルです】
【前提スキルが足りていません:【縮地】、【影渡り】、【神速】、【木葉走り】】
【必要素材が足りていません:????×50、????×50、????×1】
【紫煙外装の等級が足りていません:肆(現在等級:壱)】
「条件もある感じね。好きな時に修得できる代わりに、って所かな」
素材などを使わずにスキルを得られる分、いつ修得出来るか、何が修得出来るかは運。
狙ってほしいスキルを得る事が出来る分、条件が設定され素材等を消費する。
どちらも一長一短ではあるものの、最終的に自分の好きなプレイスタイルに沿ったスキル構成には出来るのだろう。
「ま、ここら辺は兼ね合いだよねぇ」
私は表示したままにしていた修得済みスキルの一覧を再び目の前へと持ってくる。
先程確認した通り、【煙草製作】と【投擲】の2つが載っている状態だ。
――――――――――
【煙草製作】
種別:生産
熟練度:20/100
効果:あらゆる煙草の製作が可能となる
製作成功率上昇(小)
――――――――――
――――――――――
【投擲】
種別:戦闘
熟練度:17/100
効果:投擲の精度上昇(小)
投擲時与ダメージ増加(小)
――――――――――
種別、及び熟練度という見慣れないものがあるものの、凡そは予想通りのスキル効果だ。
……種別はそのまま種別かな。生産系、戦闘系のスキルって事だろうし。
しかしながら、熟練度というものはガンマは何も言っていなかった。
一体どういったものなのだろうか、とオンラインヘルプを確認してみると。
「あぁ、成程。効果量の上昇とかがあるわけだ」
そこに書かれていた内容は、そのままの意味。
そのスキルの熟練度が上がれば上がる程に、そのスキル効果が強力なものになっていく、というものだ。
そして熟練度が上限まで上がると、追加の効果を取得し再度熟練度が0へと戻る。
それを計5回繰り返せばスキルの効果が完全体となるわけだ。
「一種のやり込み要素でもあるのかな。全スキル熟練度MAX!みたいな感じで」
繰り返していけばラーニングによってスキルも増えるし、強くもなれる。
やりがいがあるというものだ。
「よし、確認終わりっと。……1個くらい別のダンジョンに潜ってから修得するかは考えるか」
まだプレイスタイルの確立は出来ているとは言い難い状態だ。
メニュー表の中には【気配察知】などの、名前だけで分かる便利そうなスキルもあったわけだが……それでも、一旦は置いておこう。
何かの拍子に手に入る可能性はあるわけだし、次に挑むダンジョンで他のスキルをラーニング出来る可能性もある。
初めっからスキルを大量にこさえて攻略も良いが、少ない状態で熟練度を上げつつ進んでいくのも面白いはずだ。
「何をするにも一旦、ログアウトしてからかな。店長に休みの調整してもらわなきゃ」
やることを決め、私は一度ログアウトする事にした。
次は、また冒険へ。
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